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福島第1処理水放出、政府の説明会一巡 市町村議会の温度差鮮明

福島県広野町議会であった説明会。市町村議会向けでは初めての説明の場となった=3月10日

 東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水の問題で、政府による福島県内の市町村議会への説明会が一巡した。放射性物質トリチウムを含む処理水の放出には風評被害などへの懸念の声が根強く、海洋放出反対を決議する議会もあった。ただ多くの議会は賛否まで踏み込まず、温度差も目立った。

 説明会は政府小委員会が処理水の放出先を「海洋か大気が現実的」とする報告書を策定したことを受けて開催。3月10日の広野町議会を皮切りに、今月中旬までに政府の担当者が第1原発周辺など14議会(いわきは書面開催)で報告書を説明し、意見交換を行った。
 反対姿勢を鮮明にしたのは浪江町議会。「海に流せば風評被害が強まる」「住民帰還にも影響が出る」といった懸念が噴出した。
 町内の請戸漁港は原発事故を経て9年ぶりに競りを再開したばかりだ。佐々木恵寿議長は「浪江は水産で成り立っていた町。地元で放出されれば厳しい場面が想定される。反対は自然の流れ」と強調する。説明会の5日後に海洋放出に反対する決議も可決した。
 南相馬市議会も海洋放出反対が大勢だった。今村裕議長は処理水放出に「『もうたくさんだ』というのが本音。われわれにまだ負担を強いるのか」と憤りを隠さなかった。
 一方で多くの議会は説明会を「勉強会的」な位置付けにとどめ、賛否の集約までは行わなかった。
 第1原発が立地する大熊町議会は非公開で開催。会合後の取材に吉岡健太郎議長は「処理水への理解を深める場だ」と賛否を集約しない理由を説明した。新地町議会も風評被害を懸念する声があったが、遠藤満議長は賛否集約について「今後検討する」と述べるにとどめた。
 処理水は2022年夏に保管するタンクが満杯になると見込まれ、放出の準備期間の2年間を含めると今夏がリミットとなる。議論が低調な背景には放出期限が迫る中で、国がどんな風評被害対策を打ち出すかに議員の関心が移っていることがあるとみられる。
 政府は今後も関係者から意見を聞き、処分方法を決定する。資源エネルギー庁の木野正登参事官は「風評被害の不安が根強いのは原発事故を経験した県民の意見としては当然。国としてしっかり受け止め、被害を抑える処分方法を含めて検討したい」と語った。

<東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水>原発の汚染水に含まれる放射性物質は多核種除去設備「ALPS(アルプス)」によって大半が取り除かれるが、トリチウムは残る。第1原発構内にはトリチウムを含む処理水が119万トンあり、2022年夏に満杯の137万トンに達する。政府小委員会は2月に出した報告書で海洋放出と大気放出の2案を「現実的な選択肢」とした上で「海洋放出の方が確実に実施できる」と利点を強調した。


2020年05月25日月曜日


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