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「命絶つ人減らす」 仙台の看護師 聖職者による性的虐待被害者を支援

自らの体験を公にし「相談できずにいる人を減らしたい」と語る鈴木さん

 カトリック聖職者による性的虐待を巡り、国内外の被害相談に応じる女性が仙台市にいる。過去の虐待を告発した当事者の一人、看護師の鈴木ハルミさん(67)=青葉区=。自らの体験を進んで公にし「相談できずに、自ら命を絶つ人を減らしたい」と情報発信や被害者支援に当たる。
 鈴木さんは虐待被害者(サバイバー)の世界的なネットワーク「SNAP(スナップ)」で、国内のリーダー役を務める。
 会員制交流サイト(SNS)を使い、世界中の被害に関する情報を共有し、実態を発信している。被害相談にも応じ、立ち直りや被害申告に向けた支援や助言を手掛ける。
 自身も約40年前に被害に遭ったという鈴木さんがSNAPの存在を知ったのは4年前。聖職者の性的虐待をテーマにした実話に基づく米国映画を見たのがきっかけだった。「私だけじゃない」と劇中に登場した団体に連絡し、メンバーに加わった。
 「誰にも話せない被害者は死にかけのような状態だ」。後に続く被害者のため「何の非もない被害者が隠れて生きる必要はない」と氏名の公表に踏み切った。
 SNAPの国内拠点は今、仙台にしかない。「自ら命を絶つ人を減らすことが私の使命」との思いを胸に、東京をはじめ全国に拠点を設けようと、共助の輪を広げている。
 連絡先はメールjapan@snapnetwork.org

[カトリック聖職者による性的虐待]2002年に米カトリック教会の神父らによる未成年者虐待の実態を現地新聞が報じたのが契機となり、世界各地の教会で疑惑が指摘された。日本カトリック司教協議会(東京)は20年4月、未成年者虐待に関する国内調査で、1950〜2010年代に被害を受けたとされる16件の訴えがあったと発表した。


◎40年前自身も被害「一日中死にたかった」

 鈴木さん自身は長年、被害を胸の内に隠してきた。精神科医の助言を基に、教会側に申告したのは2016年。被害に遭い約40年がたっていた。
 宮城県内の教会に通っていた1977年に虐待を受けた。当時の夫の暴力を相談した男性司祭に抱きつかれ、教会の一室で乱暴されたという。
 以後は「教会を汚してしまった」と罪悪感にさいなまれた。別の聖職者数人に相談したが、相手にされなかった。
 「記憶が鮮明なうちは一日中、どんなときでも死にたかった」。酒やギャンブルに依存し、仕事に就いても続かなかった。精神障害を発症し、申告後はフラッシュバックに苦しんだ。
 申告を受け、県内の教会を管轄するカトリック仙台司教区に第三者調査委員会が設置され、16年10月に報告書をまとめた。
 報告書は申告行為が「存在した可能性が高い」としながらも、鈴木さんが承諾していたと司祭が誤信した可能性を「否定できない」と結論付けた。同教区によると、司祭も事実を否定したという。
 関係者によると、記憶を長年封印してきた被害者が声を上げたときには、かなりの年月が経過し、法的手段に訴えることが難しいケースが多いとされる。
 鈴木さんは今後も被害を訴え、司祭や教会の責任を追及し続ける覚悟だ。「私自身が真実を堂々と語れば、理不尽さを訴えられる」。本名と自らの被害を公にするのは、同じ痛みを味わった仲間のためでもある。


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2020年05月25日月曜日


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