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「コロナ後」識者に聞く 学校再開 震災を教訓に/教育研究家 妹尾昌俊氏

(右上から時計回りに)オンライン授業をする高校教諭、休校措置中の中学校の授業計画、入学式後の小学生のコラージュ
[せのお・まさとし]京都大大学院法学研究科修了。野村総合研究所を経て2016年に独立。文部科学省委嘱の学校業務改善アドバイザー、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員を務める。近著に「教師崩壊」。徳島県出身。40歳。

 新型コロナウイルスの感染拡大による長期休校で、保護者の経済力や教育熱などを背景とした学力格差は以前にも増して広がり、中長期的に固定化する可能性が高い。学校再開後は学習進度の遅れがちな子どもへの対応が重要課題だ。
 休校期間を埋め合わせるために9月入学制の導入が議論されたが、それで格差がリセットされるわけではない。土日や夏休みを減らす動きもあるが、詰め込みが過ぎると学習意欲は下がる。
 休校が長引いたことで学習習慣が抜けてしまったり、宿題にうんざりして勉強嫌いになったりした子もいるだろう。問題解決は容易ではない。「学習者ファースト」の学びの場を早急に整えなければならない。
 家に閉じこもりがちで友達と会えず、ストレスや孤独感を抱く子もいる。まずは子どもたちの声を聞き、気持ちに向き合うことから始めてほしい。その点で東日本大震災後に被災地が学校を再開した際の教訓が生きるのではないか。カリキュラムの消化より心のケアを優先し、学びの気持ちを上向かせる方が遅れを取り戻せるはずだ。
 休校中は大量の宿題を出したまま放置に近い形になり、学習を家庭任せにした学校が目立った。特に小学生の子を持つ親の負担は大きく、子どもにきつく当たってしまった例もあった。保護者は教師の代わりになれない。学習機会の平等や公平性を重視するあまり学校が身動きできなくなり、結果的に格差が広がる状況は本末転倒だ。

 多くの公立校はオンライン授業やホームルームなどでの情報通信技術(ICT)の活用に、環境整備の遅れで踏み込めなかった。代わりに郵送で課題を添削したり学級通信や電話で励ましたりと、他の手だての余地はあったかもしれない。
 ICTの整備促進はもちろん必要だが、効果的に使いこなせなければ意味がない。子どもの好奇心と学びに向かう力を伸ばす仕掛けや働き掛けの在り方を、長期休校の反省を踏まえて見直した方がいい。
 現場の教員は新型コロナ以前から雑多な業務に振り回され、工夫を考える余裕を失っている。学校再開後は1日の授業のこま数が増える学校もあり、授業の準備はさらに手間と時間がかかる。休日も減るとなると、あまりに過酷だ。
 感染予防の消毒や清掃を外注したり、部活動指導は地域に協力を求めるなど、現場の負担軽減が求められる。学校の教育機関としての役割を問い直し、教員が良質な授業を追求する創造的な時間を増やすべきだ。それが教師の仕事の魅力の一つであるし、子どもたちの意欲にもつながる。
 現在の高校3年生は進学や就職に影響が及ぶ可能性がある。「本人の努力が足りない」で済まされる問題ではない。影響が現実化した場合、国や自治体は支援策を検討すべきだし、学校は長い目で見た進路指導をしてほしい。人生は長く、回り道や寄り道があってもいいのだと、改めて伝えたい。


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2020年06月02日火曜日


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