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<東京検分録>災害時の氏名公表/知事会で指針練り上げを

 災害時の死者・行方不明者を巡る氏名の公表をどう判断するか。新型コロナウイルスの影響で、貴重な議論の機会が失われた。
 全国知事会は当初、滋賀県で4、5日に開催を予定した会合で意見交換するはずだった。4日のみのテレビ会議方式への変更に伴い、他の議題と併せて1〜2時間を割くスケジュールを確保できなくなった。
 「本来は(2日目の)セッションで掘り下げたかった」。知事会危機管理・防災特別委員長の黒岩祐治神奈川県知事は悔やんだ。
 災害時の氏名公表は国の基準がなく、都道府県で対応が分かれる。昨年10月の台風19号で岩手、宮城が死者名を公表する一方、福島は匿名だった。
 黒岩知事がこのテーマに積極的な姿勢をにじませるのには理由がある。
 神奈川は3月30日に見直した地域防災計画に、死者・行方不明者の氏名を原則公表する指針を盛り込んだ。年齢や性別、居住市町村と共に情報を明らかにする。遺族や家族の同意を条件としないのが特徴で、全国的にも珍しい。
 黒岩知事は民放キャスターとして報道に携わった経験を踏まえ、「どんな状態でも、速やかな公表が基本だと思っていた」と説明した。4月下旬に土砂崩れで死亡した男性が唯一の公表適用例だが、「現時点で支障はない」(県)という。
 神奈川のように明快な方針を打ち出す都道府県は少数派で、知事会の調査によると指針作りが未定なのは宮城を含む22。法的根拠や遺族同意、個人情報保護など論点は多く、策定状況にはばらつきがある。
 「知事が判断すればいい」(山口祥義佐賀県知事)との個別意見はあるものの、知事会は統一ルールの策定を国に要請した。
 不明者の氏名公表は、住民からの情報提供で早期救出につながることが期待される。死者名は家族らによる安否確認の手段になり得る上、災害を伝承する上で欠かせない。ともに社会全体で共有すべき情報だ。
 知事会は動きが重い国への働き掛けを続けながら、神奈川の事例などを参考に一定の指針を練り上げられないだろうか。
 実名報道を原則とする報道機関の一員として改めて責任を自覚しつつ、頻発する激甚災害に備え、知事会議で実現しなかった議論の深化を望む。
(東京支社・吉江圭介)


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2020年06月14日日曜日


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