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コロナ禍で求人悪化 氷河期世代の正規雇用難しく

正社員の求人を探す男性=白石市の大河原公共職業安定所白石出張所
雨宮処凛さん

 新型コロナウイルスの影響で雇用情勢が悪化し、正社員の求人数が急減している。今後、さらに厳しさが増すと予想され、正規雇用を望む人たちのハードルは上がる一方だ。就職氷河期世代の30、40代の非正規労働者からは「心が折れそう」と悲鳴が上がっている。
 「自助努力はもう限界に近い」。正社員を目指して求職活動を続ける宮城県白石市の男性(36)は、コロナ禍で夢が吹き消されたような感覚に陥っている。
 派遣の仕事を続けてきた。30代半ばを迎え、安定した生活を求めて正社員になろうと決意した。過去3年間は非常勤職員として、春は税務署で確定申告、夏は労働局で雇用保険の窓口業務に従事。残った時間を就職活動に充ててきた。
 これまで100社以上に履歴書を送ったが、大半は書類選考で落とされた。面接に進めた場合でも職歴の多さを指摘され「長く勤められるのか」と必ず聞かれる。
 男性は同県内の高校を卒業後、東京の私立大学に進学したが、体調を崩して退学。実家で農業を手伝いながら5年近く過ごした。今は健康を取り戻したが「一度挫折した人間は、正社員にはなれないのか」と絶望的な気持ちに襲われる。
 就職活動のために仕事量を抑えた影響で、雇用保険の加入期間が1カ月足りず失業手当はもらえない。社会保障の安全網から漏れ、「派遣の仕事を続けるべきだった」との後悔が時折頭をよぎる。
 苦境に追い打ちをかけたのが新型コロナの感染拡大だ。宮城労働局によると、3月以降、求人数は急速に減った。特に正社員は厳しく、5月の新規求人数は6845人と前年同期比20.9ポイント減。新型コロナの影響が本格的に表れるのは「これから」(宮城労働局)という。
 男性はぽつりとつぶやく。「目標は正社員になって年収300万円を稼ぐこと。ぜいたくな夢なんですかね…」
 貧困問題に詳しい関西国際大の道中隆教授(社会保障)は「企業が生き残りを優先して非正規雇用を導入した結果、労働者にしわ寄せが来ている」と指摘。「個人の自助努力では解決できない。トライアル雇用で未経験者を採用するなど、社会全体で取り組む必要がある」と強調する。

◎雨宮処凛さんに聞く

 コロナ禍の影響で30、40代の非正規雇用の人たちが困窮している。貧困問題に取り組む作家の雨宮処凛さんに、就職氷河期世代が直面している課題を聞いた。
(聞き手は報道部・宮崎伸一)

 生活困窮者を支援するネットワーク「新型コロナ災害緊急アクション」を3月に立ち上げた。ロストジェネレーションと呼ばれる就職氷河期世代の30、40代からの相談が非常に多い。20代からの相談も相次ぎ、若い世代が苦しんでいる現実に驚いている。
 相談者の大半は非正規雇用。寮やアパートを追い出され、所持金が1000円以下、中にはゼロの人もいる。一番先に困窮するのは、いつも非正規の人たちということが如実に表れている。
 とにかく仕事をしようと非正規で励んだつもりが、職歴だけが増えて次の就職活動が不利になるケースもある。頑張りがマイナスになる矛盾した構図だ。
 ロスジェネ世代は卒業時期と不景気が重なり、求人状況が非常に厳しかった。望んで非正規を選んだわけではなく、正規雇用で働けなかったのは本人の責任ではない。そうした背景を、経営者を含めて社会全体で理解すべきだ。
 失敗したらやり直しが利かない社会は、若者から活力や挑戦する意欲を奪う。正規雇用の立場を維持するために、劣悪な労働条件で働かざるを得ない人たちも出てくる。そうした社会が健全かどうか、経営者たちは考えてほしい。
 個人で取り組めることは少ないが、同じ境遇の人たちが共に声を上げ、社会に苦境を訴えて政策に反映させることはできる。


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2020年07月03日金曜日


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