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「コロナをまき散らしやがって」 クラスター発生の施設、差別と偏見に苦しむ

取材に応じる男性経営者。従業員らの感染判明後、心ない非難を受け続けた
事業所に届いた感染者の解雇を求めるメール

 新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、クラスター(感染者集団)が発生した宮城県内の施設の関係者が河北新報社の取材に応じた。男性経営者は見知らぬ人からの差別的言動に心を傷つけられた体験を語った。ウイルスとの共存を迫られる「withコロナ」時代。差別や偏見という見えない暴力の撲滅が重い課題としてのしかかる。

 事業所の男性経営者がコロナ禍に見舞われたのは、感染対策を始めていた4月初旬。従業員が感染者の濃厚接触者に当たると保健所から連絡があった。PCR検査の結果、従業員と、従業員が接した顧客の陽性が複数判明。自治体の発表に至った。
 その後約1カ月間、攻撃的な内容の電話やメールが30件近く届き、男性は「精神的に打ちのめされた」。
 「コロナをまき散らしやがって」。電話口の男性にののしられた。「謝れ」「(従業員は)当然クビ」と強要され、顧客に危険が及ぶことを心配した。
 一連の感染の起点は繁華街の飲食店だったが、従業員は店を訪れたことがなく、酒も一切口にしない。濃厚接触の接点はそこではなかった。
 それでも「外出自粛をせず、飲み歩いている」と誤解された。電話口で説明しようとしても「開き直るな」と一方的に切られた。罵詈(ばり)雑言の主は皆、面識のない第三者とみられた。
 「未知の感染症に恐怖する中、自粛で抑圧されたストレスで心の余裕をなくし、排他的行動に移ったのだろう」。男性経営者はクレームの主に同情も覚えつつ「子どものいじめと一緒。今後はこんな不条理を許す社会であってはならない」と語気を強める。

 仙台市泉区の小規模保育事業所「いずみ保育園」では4月初旬、職員と園児の感染が発覚した。誠意を持って保護者に頭を下げた。
 「どこでうつるかなんて分からない。どうか気に病まないで」。子どもから自らも感染した母親に励まされ、加納由紀子園長(56)は涙が出る思いがした。利用する約40世帯のうち退園は1世帯だけだった。
 それでも園の将来像は大きく狂った。6歳まで預かれる認可保育所に来年度移行できるよう市に申請し、園舎の増築準備を進めていた。加納園長は市への申請をいったん取り下げた。
 「どうしても『コロナ感染があった場所』と見られる。そこに子どもを預けてくれるのか。この状況で借り入れしてやっていけるのか。自信がなくなった」
 「クラスター発生」という烙印(らくいん)は消えるのか。見えない圧力に体がこわばる気もする。園に戻った子どもたちの笑顔が救いだ。

[メモ]東北各県の法務局には宮城、福島を中心に、新型コロナ関連の人権相談が計約30件寄せられている。青森、山形では、県外ナンバーの車で外出時に施設利用を拒否されたり、「コロナを持ち込むな」などと罵倒されたりしたといった相談があった。2〜4月の全国の相談件数は約600件に及ぶ。


関連ページ: 宮城 社会 新型コロナ

2020年07月10日金曜日


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