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漫画ファンの回遊期待 よみがえったトキワ荘

「ふるいち」店内のエデンで、小出さん(奥)に昔通ったエデンの思い出話を聞かせる山内さん
山内さんが撮影した1961年ごろのトキワ荘の玄関前。キャッチボールをしているのは石ノ森さんのアシスタント仲間の長田吉夫さん

 石ノ森章太郎さん(登米市出身)や手塚治虫さんら東京都豊島区のアパート「トキワ荘」に住んだ漫画家の作品を中心に約3000冊が並ぶ古書店が3月、同区南長崎(旧椎名町)の区立トキワ荘マンガミュージアムの向かいにオープンした。

 店名は「ふるいちトキワ荘通り店」。古書業大手「テイツー」(岡山市)が運営し、店内に漫画を読むことができる喫茶コーナー「エデン」を設けた。この名称は、トキワ荘の近くで2002年まで営業し、漫画家たちが通った純喫茶の店名に由来する。
 石ノ森さんの元アシスタントで、トキワ荘に1年半住んだ同郷の山内ジョージさん(79)=東京都江戸川区=は「仕事で徹夜明けの朝、エデンで石ノ森さんにトーストとコーヒーのモーニングサービスをごちそうしてもらうのが日課で、エデンは日常に欠かせない存在だった」と懐かしむ。

 古書店は、昨年12月に閉店した築30年の時計店を改装して開業した。時計店主だった時計修理業の小出幹雄さん(62)は「トキワ荘を核にした町おこしを考える上で、店を畳もうと決断した。来館者に、このエリア一帯に魅力を感じてもらう仕掛けを民間の視点で打ち出したい」と語る。
 小出さんは、豊島区と地元商店主らがトキワ荘文化を生かした地域活性化に取り組む「としま南長崎トキワ荘協働プロジェクト協議会」の広報担当を務める。
 「自分のおやじの代は、時計店があった商店街約500メートルの間に200もの店舗があった。今は40ほどに減ってしまった」と話す。バス路線の充実で客足をJR池袋駅周辺の大型商業施設に奪われたほか、店主の後継者不足が要因という。

 人口減少時代に多くの地域が抱える問題は、この古くからの住宅地にも共通する。同協議会幹事長の会社役員羽場宏祐さん(80)は「再現を契機に、シャッター通りににぎわいを取り戻す挑戦が始まる。国内外の漫画ファンに地域を回遊してもらう仕組みが重要で、『ふるいち』はその第一歩となる店だ」と期待する。
 協議会は今、トキワ荘に住んだ漫画家の出身地に熱い視線を送る。高野之夫豊島区長は「これまで続けてきた登米市や宮城県との連携事業をより強化したい」と意気込む。
 小出さんは「商店街の空き店舗に登米の特産品を扱う店を誘致したい。新型コロナウイルスが収束したら、宮城から修学旅行で中高生に訪れてもらい、交流を深めたい」と10年先の未来像を思い描く。

 日本を代表する漫画家が若手時代に共同生活を送り、技術を磨き合ったアパートとして世界的に知られるトキワ荘が、38年ぶりに復活した。山内さんの証言を基に、トキワ荘が漫画文化の発展に果たした役割や、再現を契機に漫画家の出身地と連携した地域活性化を模索する地元住民の期待と課題を紹介する。
(東京支社・橋本智子)


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2020年07月05日日曜日


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