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境界線ぎりぎりに集合住宅建設 合法でも「配慮感じられない」 仙台・若林

 「仙台市若林区の実家の西隣で集合住宅の建設が始まったが、境界線ぎりぎりに建てている。80代の両親が安心して暮らせない」。市内の40代女性から困惑の声が「読者とともに 特別報道室」に届いた。取材を進めると、トラブルの遠因になったかもしれない地域の土地事情が見えてきた。
 6月中旬に女性の実家を訪ねた。3階建ての一軒家の西側で、木造3階建ての集合住宅の建設が進んでいた。情報通り、建物の間隔は91〜126センチとかなり近接し、女性の実家に圧迫感を与えている印象だった。
 女性は「西日を生かせるように設計した家だった。壁のような集合住宅が建つと、冬の午後などは日が全く差さなくなる」と嘆く。
 女性によると、工事は4月に始まった。業者は「修繕のため」と塀を撤去し、境界をまたいで足場を組んだ。女性の指摘で翌日には撤去し、塀も再建されたが「足場が敷地内に収まらないほど、ぎりぎりに建てている」と不信感が募った。
 記者は若林区役所を訪れ、建築計画の概要書を閲覧した。民法は建物を境界から50センチ以上離すよう定めるが、この地区は準防火地域で外壁を耐火構造にすれば適用外となる。建ぺい率や容積率も定められた範囲内で、建築基準法上の問題点は見当たらなかった。
 女性の実家の西隣は以前は一軒家だった。家主は西側の壁面が隠れないよう、家屋を南側にずらして建ててくれていた。その後、土地は相続を経て売りに出され、今の所有者が不動産賃貸業を営むため購入した。
 所有者の代理者は「経営上、土地を有効活用したい。近隣と良好な関係を築くため、できる限りのことはする」と理解を求める。
 女性は「所有者の言い分も分からなくはないが、配慮が感じられない建て方だ。法律は市民が安心して暮らすためにあるのではないのか」と疑問を呈する。

◎東西線開業で地価上昇 高まる土地需要遠因?

 女性の実家は市地下鉄東西線の駅から徒歩圏内にある。市内の不動産関係者によると、2015年12月の東西線開業後、駅周辺は地価が上昇。相続で所有者が代わり、土地利用が変わることはよくあるが、地価動向もトラブルの遠因となった可能性は否めないという。
 東西線沿線で住宅需要が高まり、若林区内の住宅地の価格が急上昇したのが17年。連坊、薬師堂、卸町各駅周辺の計4地点が公示地価の上昇率で全国1〜4位を独占した。開業から4年が過ぎた今年1月1日時点でも地価は上昇していた。
 不動産業者は「地下鉄ができて土地の価値が高まり固定資産税が上がった。集合住宅を経営するには、境界ぎりぎりまで土地を使い、建物の容積を大きくしなければ、採算が合わなくなっている」と指摘する。
 若林区街並み形成課の担当者は「東西線沿線は住宅需要が増し、一戸建てが共同住宅に建て替わるケースが出ている。トラブルを避けるためにも、建て主は近隣の住民に丁寧に説明してもらいたい」と強調する。
(上村千春)


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2020年07月26日日曜日


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