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羽越水害の教訓むなしく 山形豪雨 最上川氾濫、各地に爪痕

長靴を履いて冠水した道路を渡る住民。奥は最上川堤防=29日午前11時40分ごろ、山形県大石田町大石田
泥が流れ込んだ民家=29日午前11時40分ごろ、山形県大江町左沢

 山形県内を襲った記録的な豪雨で氾濫した最上川は29日にかけて流域の家屋や田畑を水浸しにし、猛威を再び見せつけた。428の支流があり、日本海に注ぎ込む一級河川。浸水被害が目立つ中流域では、山形、新潟両県に戦後最悪の被害をもたらした羽越水害(1967年)の教訓もむなしく、爪痕が残った。

◎大石田 排水限界、浸水拡大

 最上川が3カ所で氾濫した山形県大石田町。29日も川沿いの複数の地区で道路が冠水し、多くの住宅の1階部分が水に漬かっていた。川に架かる大橋には大量の流木や発泡スチロールなどが引っ掛かり、濁流の勢いを物語っていた。
 「堤防ができて以来、ここまでの浸水は初めて」。同町今宿地区の無職荒井多喜子さん(75)が語る。地区では少なくとも19戸が床上浸水した。一夜明けても荒井さんの自宅は浸水状態が続く。「仕方がないけど片付けはあしたになるのかな」と肩を落とした。
 最上川に複数の支流が流れ込む町では羽越水害の後、川と集落の間に堤防を建設。頻繁に発生していた水害は少なくなっていた。
 「人命を優先し、撤退せざるを得なかった」。地区で28日夜、排水作業に当たった消防団の自営業富樫一也さん(56)は悔しさをにじませる。急激な水位の上昇で作業を中断するしかなかった。
 町によると28日午後から夜にかけ、最上川に流れ込む支流の樋(ひ)門の開閉で水位などを調整していた。支流から最上川への排水が限界に達し、行き場を失った水が低い地区に流れ込んだとみている。
 町内では排水作業が急ピッチで進む。住宅の片付けを始める姿も見られたが、浸水が続く地区の住民は排水の様子を祈るように見詰めるしかなかった。(山形総局・岩田裕貴)

◎大江 泥流入、建物内覆う

 道路に残った泥に足首まで埋もれそうだ。橋の下に船の一部のようなものが引っ掛かっている。最上川を茶色く濁った水が渦を巻いて流れ続ける。ごうごうという音が響く。
 最上川に面した山形県大江町左沢の百目木(どめき)地区。約50年前にも水害に見舞われた一帯を再び泥が覆い尽くした。水が引いた29日、水を吸った畳を運び出したり、自宅内にたまった泥を雪用スコップでかき出したりする住民らの姿が見られた。
 町の危機管理係によると、町内で最上川があふれたのは28日午後2時ごろ。百目木地区では14世帯で床上・床下浸水が発生した。
 住民によると、地区は羽越水害の経験から自宅1階を車庫にし、2、3階を居住スペースとする造りが主流となった。電柱には一帯が1.2メートルの浸水被害に遭ったことを示すプレート看板が残る。
 地区に住む無職菊地久美さん(52)は28日午後4時ごろ、夫と息子3人、娘1人、義理の母の計7人で町民ふれあい会館へ車で避難した。自宅に戻ったのは29日明け方。木造3階の1階が浸水し、冷蔵庫や車のタイヤが濁流に押し流されていた。
 今回の水害は地区住民の想定も経験も上回っていた。「子供の卒業証書を急いで3階へ持って行った。こんなに泥が入ってくるとは」。菊地さんが疲れた様子で振り返った。(山形総局・奥瀬真琴)


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2020年07月30日木曜日


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