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元の土地で祈り再び 全国の支援で再建 宮城・山元の徳泉寺で初法要

再建した本堂で営まれたお盆の先祖供養で読経する早坂住職(左)=7日、宮城県山元町の徳泉寺

 東日本大震災の被災地は10度目のお盆を迎えた。津波で流失した宮城県山元町の徳泉寺は全国からの支援で今年再建を果たし、震災後初めて元の地でお盆の法要を営んだ。「この日を待ち望んでいた」。新しい本堂に多くの檀家(だんか)が集い、亡くなった家族や先祖に手を合わせた。
(報道部・吉田尚史)

 読経の声と線香の匂いが真新しい本堂の隅々まで行き渡る。再建後、初の先祖供養が7日にあり、早坂文明住職(69)が「この本堂で檀家の皆さまのご供養が、本当の意味できょう初めてできる」と感慨深げに話した。
 海から300メートルの笠野地区にあった寺は津波で跡形もなく流され、檀家74人が犠牲となった。震災から1カ月近くたって、本尊の釈迦(しゃか)如来像が2キロ離れた場所で見つかった。「人々の支えになろうと、一心に踏みとどまってくれたに違いない」。早坂住職は「一心本尊」と命名し、現地での再建を誓った。
 被災した檀家に負担は強いられず、政教分離の原則もあって公的支援は期待できない。再建資金を確保するために早坂住職が考えたのが、漢字1文字をはがきに書いて納経料を納める「一文字写経」だった。
 震災翌年の2012年に始め、約2000枚(約3900万円)が寄せられた。総工費の半分近くを調達し、1月に完成にこぎ着けた。
 本堂の壁には「一心本尊」を取り囲むように写経の木札が掲示されている。「多くの方々の心が一つになり、復興の願いが結実した」と感謝は尽きない。
 震災後、初めてのお盆の法要は新型コロナウイルスの影響で参列者が少ないと見込んだが、予想を上回る80人近くが集まった。総代長の斎藤博雄さん(70)は「散り散りになったが、皆この日を待ち望んでいた」と檀家の思いを代弁した。
 津波で夫の直一郎さん=当時(72)=を亡くした斎藤栄汝子(えなこ)さん(77)は「元のお寺で供養してもらえて夫もほっとしているでしょう」と冥福を祈った。
 一帯は住まいの新築を制限する災害危険区域に指定され、津波の跡地に寺がぽつんとたたずむ。早坂住職は「復興できたのは全国から支援があったからこそ。檀家さんもそれ以外の人も写経会などで共に集える場にしたい」と未来を描く。

◎被災寺院 徐々に復興 岩手・宮城

 東日本大震災から10年目に入り、被災寺院の再建が徐々に進んでいる。資金難に直面していたが、檀家(だんか)や全国から寄せられた寄付などで一歩ずつ復興を目指す。ただ、福島では東京電力福島第1原発事故の影響で再建のめどが立たない寺もある。
 曹洞宗では、岩手、宮城両県合わせて39の寺が津波で本堂を失うなどの被害を受けた。宗務庁からの貸し付けなどを受け、今年8月までに8割近くの約30の寺が本堂を再建した。
 真言宗智山派は岩手、宮城、福島の被災3県の11カ所で本堂が全壊。所在地が災害危険区域に含まれたことで新たな用地確保に苦労した寺もあったが、大半は復興が進んだという。
 寺院関係者によると、全壊した本堂の建て替え費用は数億円のケースもある。被災した檀家の生活再建が進むにつれ、ようやく寄付の協力を依頼できるようになったほか、寺所有の不動産を売却し、時間をかけて資金を工面しているという。
 福島では原発事故の影響で、今も避難先で法要を営む寺院が少なくない。帰還困難区域が広がる双葉町内にある浄土真宗本願寺派の寺はいわき市に拠点を置く。東北教区の担当者は「将来的な帰還を目指しているが、めどが立たない」と説明する。


2020年08月14日金曜日


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