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証言集の朗読通し記憶伝承 秋田・土崎空襲の語り部に危機感

朗読会の練習に臨む伊藤さん(右)。戦争の記憶を次代につなぐ

 太平洋戦争の終戦前夜に秋田市土崎地区であった土崎空襲を語り継ぐ市民団体「土崎港被爆市民会議」が、証言集の朗読に力を入れている。14日で空襲から75年。「国内最後の空襲」の体験者の多くが亡くなり、当時を知る語り部は2人にとどまる。戦争を知らない世代を活動に巻き込み、悲惨な記憶を次代に引き継ぐ。
 「読むことに意識が行き過ぎる」「声に出さないと経験者の気持ちは分からないよね」
 市内の土崎みなと歴史伝承館で7日にあった朗読の練習会。同館で23日、市民向けに開く朗読会を前に、市民会議のメンバーと空襲を体験した親を持つ人ら男女6人が読み合わせをした。
 爆弾が落ちた時のむごたらしい様子、逃げた防空壕(ごう)で眠れぬ夜を過ごした記憶。朗読会は100人以上の証言者の声を集め、1992年に出版された「証言・土崎空襲」を使う。
 「感情をどう込めるのかが難しい」と話すのは同市泉の無職小野哲さん(66)。空襲を体験した父から話を聞いてきた。「自分自身は経験していないが、戦争が身近にあった。全体の流れを意識して朗読し、緊迫感を伝えたい」と意気込む。
 市民会議のメンバーで同市の主婦伊藤津紀子さん(79)が、朗読活動の中心的な存在となっている。空襲で同居していた家族9人は無事だったが、近所で22人が亡くなった。「近所にいた人の悲しい記憶が証言集の中にある。戦争の歴史をないがしろにすることなく、後世に伝えないといけない」と話す。
 語り部として市内の小中学校で講演するなどしてきた。現在活動している語り部は伊藤さんを含め市内で2人。年齢を重ねるにつれ「いつまで続けられるか」と、次世代への継承に危機感を募らせてきたという。
 朗読会は伊藤さんの発案で昨年夏に初めて開催した。昨冬に続き今回が3回目となる。証言集の取材、執筆に関わった秋田大名誉教授佐々木久春さん(86)は「たくさんの人が亡くなった過去があるからこそ平和な今がある」と伝承の意義を強調する。
 市民会議は14日、土崎地区のポートタワー・セリオンで犠牲者を追悼する式典を開く。

[土崎空襲]1945年8月14日夜から15日未明にかけて、米軍の爆撃機B29が秋田市土崎港の日本石油秋田製油所を攻撃した。132機から爆弾計約1万2000発が投下され、製油所の社員や家族、周辺の住民ら250人以上が犠牲になった。


関連ページ: 秋田 社会 戦後75年

2020年08月14日金曜日


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