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東北にいざなう文化財の宿 「大沢温泉湯治屋」(花巻)築210年レトロな風情

風景に溶け込む大沢温泉湯治屋の本館
本館3階の豊沢川沿いの廊下。手すりや天井の板に歴史を感じる

 東北には文化財に指定されるなどした歴史ある建造物を活用し、旅行者を受け入れる宿泊施設が各地にある。農村部の古民家や山間部の湯治場など、自然豊かな風景とともにくつろぎの時間を提供する趣深い宿を紹介する。

 豊沢川に向かって坂を下ると、深緑に包まれた風情ある建物が見えてくる。現役で使われる宿として、花巻温泉郷(岩手県花巻市)で最古とみられる大沢温泉の湯治屋本館だ。
 宿として始まったのは寛政年間(1789〜1801年)ごろで、本館はその当時から使われる。高田貞一社長(64)は「正確な記録はありませんが、築210年以上はたっていると思います」と話す。
 河岸を石垣で固め、その上に建てられた木造3階。1階は従業員休憩室などで、玄関のある2階は帳場と休憩室、売店、3階は客室が入っている。
 柱や梁(はり)という基本構造は建築当時のままで、内外装は時代ごとに改修。「みしっ、みしっ」と廊下を歩くと、レトロな手すりや板張りの天井、障子の引き戸に目を奪われる。
 盛岡市から湯治に訪れた主婦(71)は「子どもの頃の実家のようで懐かしく、落ち着く」と話した。
 屋根はトタン、窓はサッシ、外壁は防火性の木材を使いながら、雰囲気を壊さぬよう色調に配慮。「気持ちよく泊まってもらいたい」(高田社長)と水回りも最新の設備に更新する。
 歴史といまが調和した湯治屋は、若い人の人気も高い。新館、中館、上館、若葉荘と計5棟からなり、年間3万人が宿泊する。
 「お客さまが来てくださる限り、今の感じを崩さずに営業したい」と高田社長。宮沢賢治も訪れた宿は、これからも歴史を刻みながら、人々を見守る。

[メモ]花巻市湯口字大沢181。食事は付かず、基本宿泊料金は1室1人2357円(税別)から。寝具など貸し出しは別途料金が必要。食事は共同炊事場やお食事処「やはぎ」を利用できる。連絡先は0198(25)2315。


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2020年08月12日水曜日


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