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東北にいざなう文化財の宿 「石場旅館」(弘前)時の流れ見守る柱時計

1879年に建てられた石場旅館
大正時代の柱時計。奥に見えるのが太鼓橋

 東北には文化財に指定されるなどした歴史ある建造物を活用し、旅行者を受け入れる宿泊施設が各地にある。農村部の古民家や山間部の湯治場など、自然豊かな風景とともにくつろぎの時間を提供する趣深い宿を紹介する。

 津軽藩士だった石場久蔵が1879(明治12)年、小間物屋の2階に開いた旅籠(はたご)屋から始まった。戦前は陸軍第8師団の軍用旅館となり、戦後は米軍に一時接収された。時代の波をくぐり抜け、2011年、国の有形文化財指定を受けた。
 館内には津軽藩から下賜されたひな人形や青銅鏡、燭台(しょくだい)などが飾られている。蔵にも多くの下賜品があるといい、「正直、管理は大変」と4代目館主石場創一郎さん(47)が苦笑する。
 廊下を進むと、存在感を放つ太鼓橋が現れる。明治中期に改築した際に造られたという。さぞ意味があるのかと思いきや「単なるデザインだったようです」と創一郎さん。
 高度経済成長期にはバストイレ付きの新館を増築。建物は昔の趣を残しながら、時代とともに変化を重ねてきた。敷地内には、父親の故正さんが営んでいた建築事務所の建物を利用した会員制バーもある。
 壁に掛けられた古びた歓迎看板が、名だたる人物の来訪を物語る。板垣退助は隣に建つ東北最古のプロテスタント教会での講演のために滞在。二・二六事件(1936年)の首謀者らが、陸軍軍人として弘前に赴任していた秩父宮を訪ねて宿泊した記録も残る。
 廊下の突き当たりにある柱時計は大正期から時を刻む。「ここでどんな会話が繰り広げられたのかを知るのは、この時計だけでしょう」。3日に一度、ぜんまいのねじを回しながら創一郎さんは思いをはせる。

[メモ]弘前市元寺町55。夕食は付かず、素泊まり4950円から。宿泊客は会員制バーでアップルワイン1杯が無料。連絡先は0172(32)9118。


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2020年08月13日木曜日


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