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水害の備えに先人の知恵 山形・庄内地方に風化防ぐ遺構残る

川に面した裏門に板をはめる中山集落の阿曽さん=7月30日、山形県遊佐町
石積みの自営堤防と家々の石垣で守られている中山集落
溝を彫った門柱と石積みの塀を残す鶴岡市熊出集落の民家

 7月末の記録的豪雨により河川の越水が起きた山形県庄内地方に、先人の知恵を生かした自前の対策で水害に備えた川沿いの集落がある。家の門柱の間に板を落として家屋への浸水を食い止めるなどの工夫で、河川の改良が進んだ今もなお昔ながらの非常時の風習を伝える。水害の記憶の風化を防ぐ遺構としても機能している。
 山形、秋田両県境にそびえる鳥海山(2236メートル)の麓、山形県遊佐町高瀬地区の中山集落。2級河川、月光川の支流、洗沢川の右岸約500メートルに並ぶ約20世帯は、石積みの多段式の自営堤防に守られている。
 石堤建設の経緯を伝える記録はないが、少なくとも戦前には整備されていたといい、集落の先人が手を入れてきたとみられる。今なお現役で、河川行政の関係者は「水害対策の歴史を伝え、今も活用される貴重な構造物だ」と評価する。
 集落は石堤の上にあり、川に向かって各戸が石垣と門を隙間なく築いている。門柱や敷石に彫った幅5センチほどの溝に板を落とすと、石垣と門と板が面的に連続する防水壁となる。
 集落に住む会社員阿曽光幸さん(65)は今回の豪雨でも板をはめ、万が一の事態に備えた。川の水位は拡幅工事後、以前より下がったが「子どもの頃、川の水があふれた記憶がある。今年だけで板をもう5、6回は使った。鳥海山に降った雨が夜に鉄砲水となり下ってくるのが怖い」と話す。
 1級河川の赤川に支流の梵字川が合流する鶴岡市熊出集落にも自衛策が見える。赤川左岸の堤防直下には敷地の周囲に石積みの塀を設けたり、門柱の間に板をはめる仕掛けを施したりした家々がある。
 集落では過去に氾濫が繰り返し発生し、江戸時代の古文書「奥羽道程記」(酒田市立光丘文庫所蔵)にも現在の市中心部を守る上で治水の要所と記された。
 子どもの頃から住み、水音や匂いだけで川の状態が分かるという60代女性は「上流にさまざまな治水施設が整備され、板は使わなくなったが、溝を彫った門柱は残している。この集落では水に対する防災意識を失ってはいけない」と先人の教訓を後世に伝えていく考えだ。


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2020年08月13日木曜日


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