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東北にいざなう文化財の宿 「ホテルおとわ」(米沢)和洋折衷の外観ユニーク

東日本大震災で屋根の上のしゃちほこが落ちたものの、現在は元の姿に修復された本館
華美な装飾で宿泊客に人気の高い客室

 東北には文化財に指定されるなどした歴史ある建造物を活用し、旅行者を受け入れる宿泊施設が各地にある。農村部の古民家や山間部の湯治場など、自然豊かな風景とともにくつろぎの時間を提供する趣深い宿を紹介する。

 1階は西洋風のアーチ窓だが、3階は寺社に見られる火灯窓。米沢市のJR米沢駅近くに残る老舗旅館「ホテルおとわ」の本館は、大正時代に約6年かけて建てられた。日本の伝統建築に西洋文化を取り入れた外観は、1997年に国の登録有形文化財に選ばれている。
 創業は1898(明治31)年。当時、一帯の地主だった渡部味之吉が米沢駅の開業をいち早く聞き付け、駅の利用客を見込んで旅館を開業した。予想通り繁盛し、現在の本館が増築された。
 勝海舟の書や、歌川広重の「東海道五十三次」がデザインされたびょうぶといったお宝も眠る。専務の須藤久さん(70)は「かなり繁盛していたらしいが、ユニークな外観の着想をどこから得たのかだけは分からない」と苦笑する。
 客室の調度品も一級品。9部屋ある和室は、屋久杉の天井や螺鈿(らでん)の机、堆朱(ついしゅ)の扉が付いた洋服入れなどで彩られる。かつて歌手の山口百恵さんや八代亜紀さんが宿泊したとのエピソードも、ファンを引きつけてやまない。
 修繕費が高騰し、2004年ごろ取り壊しの話が持ち上がった。現在は米沢ドライビングスクール(米沢市)が買い取り、洋室中心の新館を新設。教習生やビジネス客に貸し出しながら、和室の維持に努める。
 今年は新型コロナウイルスの拡大防止のため、和室の予約再開は9月中旬の予定だ。須藤さんは「建物の保存の難しさを年々感じているが、価値を理解してくれる人がいる限りは残したい」と話す。

[メモ]米沢市駅前2丁目1の40。和室は1泊4500円から。ランチ(午前11時半〜午後1時半)のみの利用もでき、米沢牛鉄板焼きや天ざるそばがある。本館1階の座敷を宴会や句会の会場として貸し出している。連絡先は0238(22)0124。


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2020年08月15日土曜日


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