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東北にいざなう文化財の宿 「飯坂温泉なかむらや」(福島)歴史引き継ぐ二つの家紋

白壁の土蔵造りに二つの家紋が並ぶ飯坂温泉なかむらやの江戸館
創業以来の大福帳や帳場格子など調度品が残る江戸館の玄関

 東北には文化財に指定されるなどした歴史ある建造物を活用し、旅行者を受け入れる宿泊施設が各地にある。農村部の古民家や山間部の湯治場など、自然豊かな風景とともにくつろぎの時間を提供する趣深い宿を紹介する。

 奥州三名湯に数えられる福島市の飯坂温泉の発祥地、湯沢地区に立つ。江戸末期に建てられた江戸館と明治中期に増築された明治館の2棟があり、近世から現代まで当時の面影をそのまま残す。
 両館とも木造3階。白壁土蔵造りの外壁に、鏝絵(こてえ)による「花菱」と「丸に違い鷹(たか)の羽」の家紋が並ぶ。
 同市の土湯温泉で旅籠(はたご)を営んでいた初代阿部与右衛門が1891年、飯坂温泉の現在地で1688年開業した旅館の花菱屋を買い取って創業。7代目の阿部寛さん(52)は「二つの家紋は旅館と家の歴史を引き継ぎ、守っていこうという先人の思いを象徴している」と説明する。
 館内に歩を進めると、創業当時から伝わる時計や大福帳などが出迎える。両館にそれぞれ客室が5室あるが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため当面は各館1日1組に限定する。
 「侍ルーム」と呼ばれる江戸館の一室は他の部屋より床がやや高く、天井も低い設計。身分の高い武士に刀を振り回させない狙いがあるという。明治館の書院造の床の間には紫檀など銘木を使い、随所に細やかな職人技が感じられる。
 国有形文化財指定は1998年。東日本大震災で梁(はり)が7本折れる大きな被害を受けたが、市内の同業者から蔵の扉を譲ってもらったり、常連客から支援を受けたりして再建を図った。
 湯沢地区はかつて松尾芭蕉が弟子の曽良と訪れ、旧堀切邸など近代和風建築が多く残る歴史地区。「風情を感じながらまち歩きも楽しんでほしい」と阿部さんは呼び掛ける。

[メモ]福島市飯坂町湯沢18。1泊2食付きで1万3000円(税抜き)。連絡先は0245(42)4050。


関連ページ: 福島 文化・暮らし

2020年08月16日日曜日


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