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<せんだい進行形>「ゼリーの街仙台」再始動 震災で立ち消え、構想から10年

ゼライスが藤崎などと共同開発したゼリー「みやぎ杜の果実」
ゼライスが本社1階に整備したコミュニティーホール=多賀城市

 2010年7月、仙台を「ゼリーの街」として売り込む一大プロジェクトが始動した−。全国上位の消費額を背景にコンテストまで開催されたが、翌年の東日本大震災であえなく立ち消えに。旗振り役だったゼラチン製造のゼライス(宮城県多賀城市)は10年後の今、当時を思わせる試みに力を注いでいる。ゼリーの街構想、再び?
(報道部・高橋一樹)

■中元商戦で圧倒

 今年の中元商戦。定番の牛タンや笹かまを圧倒し、藤崎で3年連続となる最多の販売個数を記録したフルーツゼリーがある。
 「ゼリーの街仙台 みやぎ杜の果実」。ゼライスが藤崎、仙台白百合女子大と開発し、18年に発売した。宮城県産の果物を使い、滑らかな口溶けが特長だ。
 商品開発に携わったゼライスの森美和(よしかず)さん(46)によると、山元町産イチゴ「もういっこ」のゼリーは酸味と糖度、発色の絶妙なバランスを探った。ごろっと一切れが入る利府町産ナシ「長十郎」は食感を残すのに苦労した。
 国内北限のユズとされる柴田町産「雨乞(あまご)の柚子(ゆず)」、加美町産リンゴ「ふじ」を使ったゼリーも香り豊か。1箱12個3780円で、中元限定の1500箱は3年連続で完売した。
 「宮城にも福島や山形に負けず、こんなにも多くのフルーツがあると発信する一品。販売は大成功で、宮城県民はやはりゼリーが好きなのだと思った」と森さんは話す。
 ゼライスは昨年、山元町産イチゴを使ったグミを地元農家と開発。同町産イチジクでも検討中だ。ゼリーにこだわらず、一般消費者向けの商品づくりに本腰を入れている。
 「ゼリーの街」を冠するオリジナル商品の販売は、ゼライスの悲願だった。

■消費額全国1位

 07年の総務省家計調査で、仙台市は1人当たりのゼリー消費額が全国トップになった。07〜09年の世帯平均購入費も1位。「城下町で茶道とともに菓子文化が根付いた」「煮こごりを食べる文化がある」「夏が涼しい」など、さまざまな理由が取り沙汰された。
 「地元ゼラチンメーカーとして見逃せない」
 ゼライスの稲井謙一社長は仙台市や観光協会、ホテルなどに呼び掛け、10年に「ゼリーの街仙台推進協議会」を設立。目玉企画となったのが、業界団体が「ゼリーの日」と定める7月14日に実施したゼリーメニューコンテストだった。
 応募してきた65のレシピを勝ち抜いた5作品の最終審査は、市内のホテルで開催された。地元テレビ局のアナウンサーらが食べ比べて採点し、優勝した「きらきら七夕ゼリー」は同年、仙台七夕まつりで特別販売された。
 翌年以降、本格的に新商品を生み出していくはずだったが、震災でゼライスの本社工場が被災し、企画は全て止まってしまった。

■コンテスト再開

 今年は宮城産食材を生かした商品展開に加え、7月14日の「ゼリーの日」には、新たなコンテストの開催を発表した。9月末まで、ゼリーなどの写真とレシピの応募を受け付けている。
 構想から10年。稲井社長は「仙台藩主伊達政宗が治めた茨城県龍ケ崎市のトマト、滋賀県野洲市のお茶も使い、『伊達62万石シリーズ』と銘打ってゼリーを発信したい」と語る。「ゼリーの街」は今後、仙台という枠にとらわれない広がりを見せそうだ。

◎ゼラチンの全て紹介 課外授業や視察受け入れ 多賀城本社ホール完成

 多賀城市のゼライス本社1階に7月、会社やゼラチンについて発信する「ゼライスコミュニティーホール」が完成した。
 ホールは約150平方メートル。同社のゼラチンが使われている食品サンプルや写真フィルム、芳香剤などを展示して会社を紹介する。ゼラチンの種類や構造を解説する可動式の大型パネル3枚を用意した。
 地元の小中学校の課外授業や職場体験、企業の視察などの受け入れ態勢を強化しようと、事務室を改修した。テーブルや椅子があり、50人ほどが入れる。ホールと別にゼリー作り体験ができるスペースを設けることなども構想している。
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛により、家庭で親子がゼリーを作る需要があり、ゼラチンの売上高は大きく伸びた。10年以上、宮城県内の小学校で実施してきた出張授業は多くが中止を強いられる一方、課外授業に関する新規の問い合わせも来ているという。
 稲井謙一社長は「社員や地域の皆さまが会社のことを知るきっかけになってほしい」と話す。


2020年08月21日金曜日


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