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「聞き書き平成の黄門さま」渡部恒三さん(1) 73歳で国対委員長に/党の窮地 国民のため受諾

2017年08月23日河北新報朝刊

 元衆院副議長の渡部恒三さん(福島県南会津町生まれ)が23日、亡くなった。会津弁で歯に衣着せず政界を斬る姿は「平成の黄門さま」と称された。2017年に河北新報に掲載された記事から、渡部さんの政治家人生を振り返る=年齢、肩書は当時のまま=。

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 福島県出身で厚生相、通産相などを歴任した元衆院議員渡部恒三さん(85)が政界を引退して間もなく5年がたつ。衆院副議長を2期務めた後、民主党(当時)の国会対策委員長に就任。「平成の黄門さま」の愛称で存在感を示し、政権交代の立役者にもなった。波乱に満ちた政治家人生を振り返ってもらった。(聞き手は福島総局・大友庸一)=10回続き

 会津若松市の自宅近くの鶴ケ城を散歩していると、観光客や修学旅行生が「一緒に写真を撮ってくれ」って喜んで近寄ってくれてねえ。今も政治家として国民から評価されているようで、本当に幸せだなあ。

<旧民主党がライブドア事件に絡む「偽メール問題」で窮地に立った2006年3月、73歳で党国対委員長に就任する>

◎手をついて依頼
 衆院副議長を辞めて民主党に入ってね。最高顧問の肩書で、後は引退という感じだった。そんな時、幹事長だった鳩山由紀夫君が来て「国対委員長を引き受けてほしい」と。「代わりがいるだろう」と言うと「小沢(一郎)さんにも菅(直人)さんにも断られました」と正直に話すんだ。
 党代表は前原誠司君で国対委員長が野田佳彦君。70歳を超えたら公認しないなんて「定年制」を唱えていた。「俺はもう定年だ」と断ったんだが、みんなが手をついて頼みに来る。
 早稲田大の学生だったころから俺は二大政党制が必要だと考えた。自民党を飛び出したのもそのためだった。政権担当能力がある野党がなくなれば、国民の選択権を奪ってしまう。党のためではなく、国民のためを思って引き受けたんだ。

 <異例の人事は注目を集める。人気テレビドラマの主人公「水戸黄門」になぞらえ「平成の黄門さま」と呼ばれ、脚光を浴びた>

 引き受ける際、「若い人を(補佐役に)付けてくれ」と条件を出した。委員長室に入る時、委員長代理の川端達夫君と平野博文君が待っていてくれてね。「私たちが『格』と『助』になってお仕えします」と。
 それで思わず「なんだ、(くノ一役の女優)由美かおるがいねぇじゃねぇか」ってね。由美さんとは厚生相時代に付き合いがあったから、頭のどこかに残っていたんだろうね。どの大臣の時より、メディアが取り上げてくれた。それで平成の黄門さまの誕生さ。

 <就任直後の党役員会で会津地方の民芸品「起き上がり小法師(こぼし)」を配った際、「事件」が起きる>

◎起きない小法師
 みんなを励まそうと思ってね。今は党がぶっつぶれそうだけど、七転び八起きだ。自分の力で立ち上がれるぞと。みんな喜んでくれたが、なぜか前原君のだけは起き上がらなかった。
 (前原氏の代表辞任を促すために仕組んだと)マスコミが騒いだけど、全くの偶然だ。前原君には申し訳なかった。でも、起き上がり小法師が一躍、全国区になって地元からは感謝、感謝だったよ。



 偽メール問題 ライブドア社の粉飾決算事件を巡り、堀江貴文元社長が武部勤自民党幹事長(当時)の次男宛てに3000万円を送るよう指示したとする「社内メール」を、民主党衆院議員が2006年2月の予算委員会で示して追及した。メールは後に偽物と判明。前原誠司代表(当時)ら党執行部が引責退陣する事態に発展した。

 わたなべ・こうぞう 1932年福島県南会津町(旧田島町)生まれ。早大文学部卒。福島県議を経て69年の衆院選旧福島2区で初当選し連続14選。厚生、自治、通産各大臣などを歴任後、衆院副議長を2期務めた。2012年に政界引退。現在は民進党福島県連最高顧問。


【「聞き書き平成の黄門さま」渡部恒三さん】全10回

(2)26歳で福島県議に/逮捕と恩赦 国政への転機
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200824_61031.html
(3)角栄氏と出会う/スケールの大きさ 触れる
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200824_61032.html
(4)ロッキード事件/会津の精神で恩義を貫く
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200824_61033.html
(5)七奉行の一人として/竹下総理誕生目指し奔走
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200824_61034.html
(6)党の要職から閣僚に/懸案解決へ 相手の顔立て
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200825_61014.html
(7)非自民連立政権が発足/自民離党 二大政党目指す
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200825_61015.html
(8)歴代最長の副議長/支えてくれた 会津の女性
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200825_61016.html
(9)民主党政権誕生/念願達成も残念な結果に
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200825_61017.html
(10完)政治家は志を持て/歴史つくる気概 東北から
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200825_61021.html


関連ページ: 福島 政治・行政

2020年08月24日月曜日


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