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<せんだい進行形>屋敷林生かし複合拠点 グループホームやギャラリー、カフェ 地域の憩いの場目指す

屋敷林を中心にギャラリー(左)やカフェが並ぶ台の森=仙台市青葉区台原6丁目

 仙台市青葉区台原6丁目の住宅街に、知的障害者グループホーム(GH)や飲食店、ギャラリーが集まる複合拠点「台の森」がオープンした。積水ハウス(大阪市)が土地を所有する個人とともに遊休地の有効活用を目指し、企画した。緑豊かな中庭を中心に地域の憩いの場を目指す。(報道部・古賀佑美)

 7月下旬に全面開業した台の森は、敷地面積約2000平方メートルにGH、陶芸窯、ギャラリー、カフェ、イタリアンレストランが建つ。樹齢300年以上とみられるケヤキがそびえ、竹、桜、ツバキが「森」をつくる。レストランで使うイタリア野菜などを栽培する畑は新たに設けた。
 敷地は藩制時代からの由緒ある土地として一家が代々受け継いできた。自宅を守る屋敷林を整え、子どもが生まれる度に中庭に植樹したという。約20年前に空き家となり、所有者が緑を生かした土地活用策を模索していた。
 従来の遊休地活用策はアパート建築が主流だが、少子高齢化により今後の需要増は見込めない。積水ハウスは医療福祉の施設を置きながら、地域に開かれた拠点づくりを所有者に提案。周辺住民と意見交換を重ねて計画を練り、ボランティアと中庭を整備するなど、愛着が持てる拠点を5年かけて整備した。
 建物は土地所有者が持ち、各テナントに長期契約で貸す仕組み。テナントの要望に合わせて内装を発注し、カフェやレストランは自宅兼用として運営者が住む。土地所有者にとって長期的に安定収入が得られる利点がある。
 GHには現在、7人の女性が暮らす。運営する仙台市の社会福祉法人なのはな会の加賀谷尚さん(48)は「テナントや地域の皆さんと日常的に接点を持てるのがありがたい。利用者と積極的に外に出て、障害に対して理解を深めてもらいたい」と期待する。
 建物の中でも目を引くギャラリーは、敷地内の土を締め固めてつくる「版築」で仕上げた。梁(はり)や柱にも現地で伐採したマツやクリを使ったほか、既存の板倉造りの倉庫を解体して室内で組み直した。世代を超えて受け継ぐ大切さを表す。
 ギャラリーとカフェを運営する陶芸家田代里見さん(61)は「手仕事の力強さを発信する場にする。地元の若手の作品の販売会も企画したい」と意気込む。
 積水ハウスは2019年、宮城野区田子西1丁目にオープンしたGHやカフェ、保育園を併設する複合施設「ノキシタ」の企画設計、施工にも携わった。ノキシタは、コンサル大手国際航業の子会社アイネスト(仙台市)が整備、運営するが、台の森のように個人の所有地で取り組むのは前例がない。
 積水ハウスの医療介護福祉事業を担当する佐藤哲さん(50)は「地主、テナント、地域住民と共感の輪を広げることが大切だ。台の森をモデルに全国に同様のプロジェクトを拡大していきたい」と話した。

◎高まるGH需要 ニーズに合う住環境づくり必要

 国が障害者を施設から地域生活への移行を促す中、グループホーム(GH)の需要は高まる一方だ。少子高齢化で増える遊休地の活用策としても注目されるが、事業性を高めるには地域の理解と利用者のニーズに即した住環境づくりが欠かせない。
 仙台市内に住む療育手帳保持者は3月末現在9105人と、10年間で1.5倍に増えた。GHは今月1日現在で277カ所、定員は計1526人。ほとんどは家族と同居し、両親の高齢化に伴う自立支援が課題になっている。
 市によると、利用者のニーズが合わず、入居は思うように進んでいない。立地や築年数、家賃といった条件に加え、障害が重い場合、職員の人手不足で受け入れられないケースもある。
 運営を担う市内の社会福祉法人やNPO法人は資金力が乏しい。自前でGHを建設するより、多くは中古の一戸建てを借り上げるが、2階に居室が多く階段がネックになる。市は義務化された火災報知機やスプリンクラーの設置費を独自に補助するなど、GHを増やして利用者の選択の幅を広げたい考えだ。
 台の森は長期の貸借契約で運営法人側の初期投資を抑えた。家賃は安くないが、緑豊かな環境や地域住民との交流も期待でき、利用定員はすぐに埋まった。
 なのはな会の加賀谷さんは「利用者は生活の豊かさを求めている。台の森では余暇を楽しめる可能性がある」と話す。


2020年08月28日金曜日


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