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リスク高い特養、水害再来に危機感 山形豪雨1ヵ月 移転検討する施設も

豪雨のため入所者を別法人の施設に避難させる山形市の特別養護老人ホーム「みこころの園」=7月28日(みこころの園提供)
裏手に崖が迫る上山市の特別養護老人ホーム「蓬仙園」

 山形県内に大きな被害をもたらした豪雨から28日で1カ月。立地から浸水や土砂災害の危険がある県内の高齢者福祉施設が水害の再来に危機感を募らせている。想定を超える雨量が相次ぎ、避難確保計画は見直しが必至。移転や移転の前倒しを探る動きが出ており、安全確保に向け行政の支援を望む声も上がる。

 上山市の特別養護老人ホーム「蓬仙園(ほうせんえん)」は裏手に山が迫り、土砂災害警戒区域に指定されている。平屋建てのため上層階に垂直避難することはできない。
 雨が強まった7月28日は昼すぎから入所者らを近隣の福祉施設や医療機関に分散させる避難を開始。約90人の7割を4時間かけて計8カ所に移動させた。
 昨年秋の台風19号の教訓を踏まえ、今年3月に避難確保計画を策定し、他施設に受け入れてもらう連携体制を築いていた。残る3割は市指定避難所へ移った。
 「計画に基づいて避難は円滑に進んだ。ただ、裏山が崩れれば建物も危ないと認識を改めた」と猪狩良佳施設長(55)は振り返る。豪雨後、土砂崩れに備えて山側の3部屋の使用を中止。4人部屋に5人が入る対応でしのぐ。
 2年後には、災害リスクの低い市内の別な場所に2階建て施設を整備し、移転する予定だった。運営法人の島崎みつ子理事長(69)は「現在地への不安は大きく、移転は早いほど理想だ」と前倒しを模索する。
 最上川支流の須川に近く、浸水想定区域にある山形市西部の特養ホーム「みこころの園」もほぼ平屋建て。7月28日は車いす利用の入所者ら約100人が避難確保計画に沿い、近くにある別法人の施設に避難を始めた。
 しかし、約半数が移動した1時間後、施設前の排水路があふれて道路が冠水。車が動けず、避難を途中で諦めざるを得なかった。
 「水位上昇のペースは想定以上だった」と細谷健一施設長(52)。ゴムボートや津波シェルターの購入も検討する。地区内の安全な場所への移転も選択肢に入れ「財源など課題は多いが、高リスクの場所は避難に限界がある」と強調する。
 特養ホームなど235施設・事業所が加盟する県老人福祉施設協議会によると、移転や新築を検討する施設が増えている。峯田幸悦会長は「福祉施設は、以前は市街地で歓迎されず、地価が安いが災害リスクは高い場所に多い。安全対策を強化するには行政による物心両面の支援が欠かせない」と指摘する。

[避難確保計画]水防法と土砂災害防止法の2017年の改正で、水害や土砂災害の危険がある場所に立地する社会福祉施設や病院などが策定を義務付けられた。16年の台風10号で岩手県岩泉町のグループホーム入所者9人が犠牲になったのがきっかけ。利用者の避難経路や避難を始める判断基準、必要な人員、備蓄品などを明記し、市町村に提出。定期的に訓練を行う。山形県内では20年3月末現在、浸水の対象747施設のうち448カ所、土砂災害120施設のうち58カ所が策定した。


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2020年08月28日金曜日


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