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安倍首相退陣表明 復興で割れる評価、被災者表情さまざま

東日本大震災の被災地を視察し、仮設住宅の集会所で住民と車座になって懇談する安倍首相=2013年1月12日、宮城県亘理町

 「1強政権」を築いた安倍晋三首相が28日、辞任の意向を表明した。連続在任期間が歴代最長となった直後、新型コロナ禍の渦中の唐突な幕に驚きが広がる。東日本大震災からの被災地再生や復興五輪に期待を寄せていた市民からはねぎらいの一方、復興施策が途切れないよう求める声も聞かれた。森友、加計学園問題などの疑惑に最後まで説明責任を果たさないままの辞任劇だった。
 「東北の復興なくして日本の再生なし」。東日本大震災の被災地を訪れるたび、繰り返し強調してきた安倍首相の突然の辞意表明に、被災者たちは「戸惑い」「諦め」「感謝」などさまざまな表情を見せた。
 「ぎりぎり合格の60点」と安倍首相に点数を付けるのは岩手県大槌町で日用品店を営む越田征男さん(75)。「復興の流れを断ち切らなかったことには感謝するが、アベノミクスで地域の景気が良くなった実感はない」と振り返った。
 津波で自宅が流失した岩手県陸前高田市のパート新沼光也さん(65)は「震災から10年たってもまだ終わりが見えない。被災地支援の動きは遅く、常に物足りなさを感じていた」と指摘した。
 福島県いわき市の漁師遠藤洋介さん(39)は「辞めて何かが変わるわけでもない」と冷ややか。震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に関して「水産業回復への気持ちは分からなくもないが、金の使い方が間違っていたのではないか。消費者、流通も含めて漁業を取り巻く環境が少しでも良くなってほしい」と願った。
 宮城県石巻市の災害公営住宅で暮らす団体職員大嶋三千代さんは、視察に訪れた安倍首相の姿を思い起こし「被災地に目を掛けてもらった」と感謝。「新型コロナウイルスの感染防止対策に追われ、強い精神的ダメージを受けたのではないか。治療に専念してほしい」と思いやった。
 宮城県気仙沼市の建設会社社長熊谷敬一郎さん(57)は「被災地への配慮や、復興を滞らせまいとする政治姿勢を感じていたので残念。次の首相には被災地のためによりきめ細かな施策を推進してほしい」と求めた。
 福島県大熊町の無職遠藤英雄さん(65)も「昨年4月の避難解除直後に町に来てくれるなど、原発被災地を気に掛けてくれた」と評価。一方、帰還困難区域内にある自宅は除染も解体もできず、手付かずのまま。「10年たっても将来の見通しが立たず、命が尽きる方が早そうだ」と諦めた様子で語った。

◎東日本大震災に関連した安倍首相の主な発言

2012年
 12月29日 首相就任3日後、東京電力福島第1原発を視察。「廃炉が成功して初めて福島、日本の復興につながる」
 
2013年
 1月12日 初めて宮城県入りし、石巻市や亘理町などの被災地を訪問。「被災地の復興なくして日本の再興はない」
 9月7日 20年東京五輪の開催が決定した国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、福島第1原発事故に伴う汚染水問題を説明。「状況はコントロールされている」

2014年
 3月10日 震災3年を前に首相官邸で記者会見。「これからは心の復興に力を入れる」

2015年
 3月14日 仙台市で開催された国連防災世界会議に合わせ、政府主催のレセプションに出席。20年東京五輪について「東北の復興を後押しする復興五輪にする」
 
2016年
 3月10日 政府の復興推進会議で16年度からの復興基本方針を決定。「新たな5カ年は風化と風評という『二つの風』との闘いだ」

2017年
 4月26日 今村雅弘復興相が失言の責任を取って辞任。「深くおわびする。復興は安倍内閣の最重要課題だ」

2019年
 4月10日 桜田義孝五輪相が失言の責任を取って辞任。「任命責任は首相たる私にある。今後も東北の復興に全力を傾ける」
 
2020年
 3月7日 福島県を視察し、14日に全線で運行が再開されるJR常磐線に試乗。「人や物の流れが福島の復興を支える力になる」
 3月9日 震災9年を前に河北新報社などのインタビューに応じた。政府主催の追悼式について「新型コロナウイルスの対策に手を尽くすべき時期であり、開催を断念した」


2020年08月29日土曜日


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