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震災10年目、菅内閣発足 新鮮味なく被災者不安、見えぬ出口

中学生に震災時の状況を説明する藤間さん。伝承活動の先行きを案じている=16日午前11時ごろ、石巻市の南浜つなぐ館

 自民党の菅義偉総裁が16日、第99代首相に就任した。出身地の秋田県湯沢市では高校の同級生らがテレビの前で指名の瞬間を見守り、安倍政権の路線継承を重視する新内閣が船出した。しかし東日本大震災の被災地は復興道半ば。新型コロナウイルスや経済対策といった課題も山積する。7年8カ月ぶりに誕生した新内閣を率いて菅首相は、難しいかじ取りを迫られそうだ。

 10年目に入った東日本大震災。復興のかじ取りを担う菅内閣が発足したが、新鮮味のない顔触れに、被災者からは「期待は薄い」との声が漏れる。伝承、暮らし、なりわい。被災地の声は届いているのか。現場は出口の見えない課題に直面する。
 福島県新地町の漁師小野春雄さん(68)は、菅政権誕生を伝えるテレビを険しい表情で見詰めた。
 東京電力福島第1原発事故から9年半がたつが、増え続ける汚染水の問題は未解決のまま。「もし水を海に放出して魚が売れなくなれば漁師は生きていけない。解除が進む諸外国の輸入規制も逆戻りだ」と危機感を募らせる。
 福島県内では避難解除の展望さえない地域がいまだに多く残る。「古里に帰れない人が大勢いて、復興はまだまだ道半ば。新復興相には現場の声を少しでも多く聴き、本気で復興に取り組んでもらいたい」
 三陸鉄道の震災学習列車が16日午後1時半、修学旅行で一関市から訪れた小学生33人を乗せて大船渡市の盛駅を出発した。
 ガイドを務めたのは、釜石市の一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の伊藤聡代表理事(40)。車窓から見える巨大な防潮堤を指さし「想定にとらわれないで避難してほしい。防潮堤を越える津波が来ないとは限らない」と語り掛けた。
 震災当時、釜石市内の旅館で働いていた伊藤さん。2012年4月に団体を立ち上げ、子どもの育成や若者の受け入れ、伝承活動などに奔走した。
 資金面でも人材面でも支援は先細る。「われわれのような組織を活用することで地域社会に厚みが出る。持続可能な活動を後押しする施策を新政権に期待する」と話す。
 石巻市の公益社団法人3.11みらいサポートの藤間千尋さん(42)も伝承活動の先行きに不安を隠せない。新型コロナウイルスの影響で伝承プログラムの予約キャンセルが相次ぎ、4〜8月の参加者は昨年同期比約5%の133人にとどまった。
 ハード中心の復興を進める国に対して、伝承事業への理解が乏しいと感じる。「伝承を担う人々を直接支援する仕組みや次世代の人材を育てる施策にかじを切ってほしい」と求める。
 被災者の暮らしもおぼつかない。仙台市宮城野区の災害公営住宅では4月と8月、ともに1人暮らしの40代と60代の男性が孤独死の状態で見つかった。
 異変に気付いたのは町内会長の川名清さん(71)。70歳以上の1人暮らしの住民を町内会で見守りしているが「役員の欠員が続き、他の年代の住民まで手が回らない」と嘆く。
 菅首相の演説では「自助・共助・公助」の「自助」を強調したように感じた。「社会的弱者に自助と言ってもつぶれてしまう。町内会の共助が成り立つ社会づくりを目指してほしい」と語った。


2020年09月17日木曜日


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