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空駆ける石巻の町工場(7) 三たびの試練、再浮上期す

受注減少による交代勤務の導入で、空席が目立つエヌエス機器の研磨加工課=6月

 役員・従業員45人の小さな会社ながら、航空機部品の研磨を主力事業に成長させた宮城県石巻市のエヌエス機器。バブル崩壊、東日本大震災、新型コロナウイルス禍と難局が続く中、技術を文字通り磨いてきた町工場の航跡をたどる。
(報道部・高橋一樹)

 想像もしていなかった「飛行機が飛ばない世界」が訪れた。
 2020年、世界に広がる新型コロナウイルス感染症は、エヌエス機器の主力事業に成長した航空機部品の研磨事業を直撃した。
 「4月まで稼働は絶好調だった」と阿部秀敏社長(61)。年明けから受注は伸び、航空機エンジンの重要部品「タービンブレード」の研磨を手掛ける第5工場は多忙を極めた。
 だがその後、新型コロナの感染拡大を受けて各国が出入国を制限。国際定期路線の運休が急速に広がるとともに、社内の高揚感は失われていった。
 まずは5月、売上高の約15%に当たる自動車部品研磨の受注がゼロになった。航空機部品も徐々に減り、6月は売上高の2割、7月は4割を失った。ブレード研磨の受注が内定していた米ボーイング社の新型機も、出荷が1年延期された。

 少なくとも年内は売り上げ減少が続くことは避けられない。「コロナが拡大する前は、秋ごろの工場拡充も考えていたが…」。阿部社長は嘆く。交代勤務を導入し、雇用調整助成金を申請。万一に備え、国の「セーフティネット保証制度」の融資も受けた。
 見えないウイルスは、現場の業務にも影を落とす。
 感染防止のため多くの企業が面会を制限し、営業ができない。「研磨は部品を見ながら細かな要望を聞いたり、出来栄えを見せたりすることが必要。直接会えないと話が進まない」(阿部社長)。
 自社で感染者を出さないことにも神経をすり減らす。昼食は時間を分け、正対しないよう、皆が同じ方向を向いて食べる。阿部社長もしばらくの間、会社近くの自宅との往復以外は外出を自粛した。
 石巻市は感染確認が少ないだけに、1人出れば目立ってしまう。「会社の信用、取引にも影響するかもしれない」。下請けの町工場に掛かるプレッシャーは相当なものだ。

 収束の気配はいまだ見えないが、立ち止まってはいられない。
 新たな手を打った。つながりのある埼玉県の金属商社に「代理営業」を初めて発注した。サンプルやカタログを送り、関東で研磨加工を売り込んでもらう作戦だ。
 足元も固める。収束後の受注拡大を見据え、品質管理の国際規格「ISO9001」の認証取得に乗り出した。業務の進め方や不具合への対処などをマニュアルにまとめ、現場で実践する。
 「各国間で移動できるようになって経済が動きだせば、いずれ飛行機は飛ぶ。それまで何とか耐えしのぎたい」
 バブル崩壊、東日本大震災、新型コロナ。三たびの危機にも阿部社長は悲観しない。空はいつか晴れる。


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2020年09月24日木曜日


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