広域のニュース

米地方紙苦境 行政監視機能の低下危ぶむ 地方メディア調査 クリステン・ハレ記者に聞く

クリステン・ハレ記者

 米国の地方紙が苦境に立たされている。新型コロナウイルス感染症の影響も出始め、廃刊が加速しつつある。ジャーナリズムの研究教育機関「ポインター研究所」(フロリダ州)で地方メディアを調査するクリステン・ハレ記者(42)がオンライン取材に応じ、行政監視機能の低下に危機感を示した。
(聞き手は東京支社・吉江圭介)

 −米国で主流の地方紙はどのような存在か。

 「地域社会にとって重要な情報源である。地方自治体の監視は最も重い役割だ」

 −新聞が厳しい状況に陥った背景は。

 「人々が新聞以外から情報を入手する選択肢を得た。新聞社がインターネットに取って代わられることを想像できず、多くの社が技術開発に時間と資源を割かなかった」
 「新型コロナの影響で、多くの新聞社が依存する広告収入もなくなった。会社の閉鎖や従業員の一時解雇が頻発している」

 −コロナ禍で地方紙の役割は。

 「地域社会で起きたことを知り、命が助かることも事実。フロリダの地元紙タンパベイ・タイムズはホームページ上で、郵便番号を入力するだけで地域ごとのコロナ感染率や死亡率を算出してくれる。地域社会の状況を明確に把握できる」

 −ノースカロライナ大の報告書によると、新型コロナの影響で数百紙が年内にも廃刊する可能性がある。

 「閉鎖の波が次から次へと押し寄せることも十分あり得る」

 −廃刊に伴う地域へのインパクトは。

 「コロナ禍でも、虐待や汚職の危険は現実的だ。ジャーナリズムが不在となった場合、地域社会に好ましくないことが起こり、報道されない恐れがある」
 「図書館やスーパーなどがない街に住みたくないように、地域のニュースも必要とされている。ニュースはコミュニティーの鼓動そのものだ。市民が報道機関を再建しようとする動きもある。人々が心臓の移植手術をしようとしていると考えたらどうか? とても心強く感じる」

 −11月の大統領選など政治への影響は。

 「米国はかつてないほど二極化し、分裂した。地域に根差した報道を失うと、近隣とのつながりや政治への違う感じ方もあり得ると気付く機会を逸する」

◎15年で4分の1廃刊

 米ノースカロライナ大の研究者がまとめた最新の報告書によると、米国の新聞は2004年からの約15年間で4分の1に当たる2155紙が廃刊した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な打撃を受け、新聞の発行停止が増加する恐れも指摘している。
 6月公表の報告書は、04年に8891紙あった新聞が20年に6736紙まで減少したとしている。4分の3は発行部数が1万5000部以下の規模だ。平日の総発行部数は1億2200万部(04年)から、6800万部(19年)に4割以上落ち込んだという。
 「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社の一角を成すグーグルやフェイスブックなどに読者と広告が流れ、経営基盤が揺らいだのが大きな要因。コスト削減を目的とする記者の解雇も深刻な問題に挙がった。
 「新型コロナに伴う不況がローカルニュースの喪失を大幅に加速させた」と指摘する報告書は、4、5月に少なくとも30紙が廃刊、統合し、数千人の記者が一時解雇や減給などにさらされたと言及。さらに数百の新聞社が年内に閉鎖する可能性があるとした。
 新聞が全くない、もしくは1紙しかない地域を指す「ニュース砂漠」は広範囲にわたる。3143郡のうち、200を超える郡は1紙もない。これらの地域では、「行政の透明性が低下するなどし、住民は高い税金を支払うことが多い」と警鐘を鳴らしている。

[メモ]スマートフォン向けニュースアプリを提供する「スマートニュース」のシンクタンクは今年、日本の地方紙と地方テレビ局の記者を米国に派遣するプログラムを計画。記者は新型コロナウイルスの収束状況を勘案しつつ、地方紙の実情を探る現地取材を予定している。現地記者へのインタビューは、その一環で試みた。


関連ページ: 広域 社会

2020年09月25日金曜日


先頭に戻る