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コロナ禍でも教訓伝える 女川で銀行員の長男亡くした田村さん夫妻、半年ぶり活動再開

伝承活動を再開した田村孝行さん、弘美さん夫妻。感染予防対策を講じながら大学生に語り掛けた=25日、宮城県女川町
ズームを使い、全国の塾講師に震災の教訓を語る田村さん夫妻=1日、宮城県大崎市

 東日本大震災の津波で犠牲になった七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の元行員田村健太さん=当時(25)=の両親が、新型コロナウイルスの影響で自粛していた女川町での伝承活動を半年ぶりに再開した。健太さんの遺体が見つかってから26日で丸9年。伝承の手法を模索しながら「わが子が生きた証しと災害から命を守るすべを伝えたい」と誓いを新たにする。

 父孝行さん(59)と母弘美さん(58)=ともに大崎市=は25日、町内で語り部を務めた。被災地について学ぶ大東文化大(東京)法学部の3年生と教員ら計10人に、あの日のことを話した。
 健太さんは支店長の指示で高さ約10メートルの支店屋上に避難し、他の行員らと津波にのまれた。遺体が発見されたのは約半年後。支店から走って1分ほどの場所に高台があり、数百人の町民が助かった。
 「健太は時間があるから高台へ行けると言っていた。企業管理下で指示や命令に反するのは難しいが、いざというときは命を守ることを最優先に行動してほしい」。孝行さんは就職を控える学生らに呼び掛けた。
 透明フィルムで口元を覆うマウスシールドや拡声器を使って説明し、学生らに2週間前から検温を求めるといった感染防止対策を取った。参加した山野井千夏さん(21)は「知識に縛られずに最善の選択をすることが大事だと知り、心を打たれた」と感想を述べた。
 田村さん夫妻は2013年から女川支店跡地や全国各地で震災について語り、命の大切さや、従業員の命を守る企業防災のあるべき姿を訴えてきた。
 コロナ禍で今春以降の活動を休止したが、全国展開の学習塾からの求めで防災の日の今月1日に講話をした。ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使い、各地の塾講師163人に震災の教訓を語った。
 講話は、活動当初から親交のある塾講師沖村政裕さん(41)=北海道北広島市=を通じて夫妻のことを知った経営者が、「災害時の危機意識を共有したい」と企画した。企業トップからの依頼は初めてで、弘美さんは「これまでの活動でまいた種が芽を出してくれた」と喜ぶ。
 孝行さんは「コロナ禍の中でもやり方を工夫しながら教訓を伝え残す。それが健太のために唯一できることだ」と力を込める。


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2020年09月27日日曜日


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