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女川原発再稼働・迫る地元同意(1) 恩恵とリスク、立地町の葛藤

議員が再稼働への賛否を討論する中、ペンを走らせる須田町長=7日、女川町議会

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の前提となる「地元同意」を巡り、立地自治体の手続きが本格化している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年目。首長や議員は原発と向き合っているのか。議論は尽くされたのか。民意は反映されるのか。地元とは何か−。村井嘉浩知事の最終判断が迫る中、課題を探った。
(原子力問題取材班)
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 事故の不安、脆弱(ぜいじゃく)な交通インフラ、国内のエネルギー事情…。
 女川町議会が女川2号機の再稼働への「同意」を示した7日。議員が次々と賛成、反対の討論に立つ中、須田善明町長はペンを走らせ、メモを取っていた。
 散会後、須田町長は硬い表情で報道陣に語った。「懸念や前向きに捉える部分など、論点が網羅されていた。意思判断する上で非常に重要だ」

 牡鹿半島の港町が原発誘致を決めたのは1967年だった。「国策」協力の対価である地域振興と、事故や風評被害の懸念。賛否に引き裂かれた時期を経て、84年に1号機、95年に2号機、2002年に3号機が稼働し、原発城下町としての歴史を重ねてきた。
 町は1980年度以降、電源3法交付金約270億円を公共施設の整備や維持管理に充てた。固定資産税は2010年度まで歳入の5割以上に上った。「原発マネー」は「平成の大合併」と距離を置き、単独町制を維持する源泉でもあった。
 人口は約6300とピーク(1965年)の3分の1程度に落ち込み、高齢化率は40%近い。町の商工関係者は「原発による財政や地域経済への影響は大きい。再稼働に同意したいのが町長の本心だろう」と推し量る。
 そうした恩恵が、リスクと隣り合わせにある現実を突き付けたのが、震災による女川原発の被災、そして福島第1原発事故だった。
 50代の無職女性が心境を明かす。「再稼働には反対だけど、口に出せない。知り合いには(東北)電力さん絡みの仕事で生計を立てている人もいる」。原発から10キロほどの町中心部に暮らす女性(83)は恐れる。「事故が起きたら無事に逃げられるの? 生きて家に帰れるの?」

 誘致を巡る分断から歳月を経て、国策が立地自治体に静かな葛藤を生む。
 「原発の『安全神話』を信じていたが、福島の事故で認識が変わった。ショックだった」と話すのは、2004年の合併で誕生した静岡県御前崎市の市長を3期12年務めた石原茂雄氏(72)。中部電力浜岡原発の立地自治体として、原発立地のメリットを享受した。
 だが、一般会計に占める原子力関連収入の割合は10年度の39%から17年度は28%に減少。薄れつつある恩恵に、南海トラフ巨大地震の想定震源域というリスクが浮かび上がる。石原氏は「原発だけに頼らず、近隣市町と再合併しなければ財政を立て直せない」と言う。
 明治大の勝田忠広教授(原子力政策)は指摘する。「首長には住民の命や経済を守る責任がある。原発に今後も頼るのか、長期間、安定的に雇用や経済を賄えるのは何か、立ち戻って考えるのが福島の教訓だ」
 国策はもはや、確かな未来を保証しない。重い決断だけが、立地自治体にのしかかる。


2020年09月28日月曜日


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