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双葉の味「ペンギン」復活 10月から町交流センターで営業

開店に向けて準備を進める「ペンギン」のスタッフ
新しい店舗で開店の準備をする吉田さん(右)ら

 東京電力福島第1原発事故で住民避難が続く福島県双葉町で、地元に長年親しまれたファストフード店が復活する。JR双葉駅前にあった「ペンギン」が、10月1日に町内で開館する町産業交流センターで営業を始める。スタッフは「地元らしさを感じる場所にしたい」と思いを
 ペンギンを出店するのは、町内でガソリンスタンドを経営する伊達屋。センター1階のフードコートで、ハンバーガーやソフトクリームなどを提供する。29日には社長の吉田知成さん(44)やスタッフが集まり、開店に向け最終準備に追われた。
 伊達屋は明治創業の町内の老舗商店。原発事故前は駅前に店を構え、燃料やたばこ、塩といった日用品を扱っていた。店舗の一角を改造し、1981年ごろに営業を始めたのがペンギンだった。
 店は母の岑子(たかこ)さん(75)が切り盛りした。4人掛けのテーブルが4、5台の小さな店だったが、地元や町外の学校に通う高校生らでにぎわった。2003年ごろ、周囲に惜しまれながら店を閉じた。
 原発事故が起き、町全域に避難指示が出された。自宅兼店舗は昨年夏に取り壊された。
 東京で会社員だった吉田さんが家業を継ぎ、ガソリンスタンドを再開したのは17年6月。地元の友人らに知らせると「ペンギンは?」と何度も聞かれた。
 「毎日通って、食べて、しゃべって、帰る。当たり前だった日常が印象に残っているんだと感じた」と吉田さん。交流センターにフードコートができると知り、原発事故前の「双葉らしさのピースの一つ」を埋めようと手を挙げた。
 当時の味に近づけるためかつてと同じ仕入れ先の材料を使う。看板商品だったハンバーガーのほか、物足りないという高校生向けに食パンでハンバーガーの具を挟んだ「スペシャルサンド」などのメニューを継承。店を手伝っていた姉の敦子さん(48)が仕切る。
 今年3月に一部で避難指示が解除され、町はようやく動き始めた。新しい店の経営は決して簡単ではないが、吉田さんは「地元の、誰かが先頭を切らないと前に進めない」との思いを強くする。
 オープンに間に合わなかったメニューがある。18年2月、避難先の埼玉県で亡くなった祖母フミさんが朝早くから手作りで仕込んでいたドーナツだ。再現はなかなか難しいが、吉田さんは「どうにか工夫して、いつかペンギンのドーナツを出したい」と考えている。


2020年09月29日火曜日


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