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女川原発再稼働・迫る地元同意(3) 30キロ圏市町に権限の差

女川原発のUPZに入る東松島市で開かれた住民説明会。原発30キロ圏の住民も詰め掛けた=8月18日

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の前提となる「地元同意」を巡り、立地自治体の手続きが本格化している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年目。首長や議員は原発と向き合っているのか。議論は尽くされたのか。民意は反映されるのか。地元とは何か−。村井嘉浩知事の最終判断が迫る中、課題を探った。
(原子力問題取材班)

 原発によって変わる「地元」の範囲が自治体を翻弄(ほんろう)する。
 宮城県が8月18日、東松島市で住民説明会を開いた。テーマは東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働。原発5〜30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)での開催に、圏内の美里町から相沢清一町長が駆け付けた。
 「UPZの住民は再稼働の行方を心配している。今後、関係する首長に地元同意の範囲拡大を求めるべきだと声を上げたい」
 原発30キロ圏には立地2市町のほか、東松島、美里と登米、涌谷、南三陸の5市町が入る。相沢町長は首長7人の中で唯一、再稼働反対を貫く。しかし、権限の壁があって訴えは届かない。

 自治体が東北電と結ぶ安全協定に基づく事前了解権。女川原発の場合は県と女川町、石巻市の三者だけが持ち、再稼働に「お墨付き」を与えられる。
 30キロ圏内の5市町は2015年4月、東北電と安全協定を結んだ。事前了解権はなく、県を通じた意見陳述しか認められない。相沢町長は「立地自治体並みの権限を持てる法整備が必要だ」と現状への不満を語る。
 東京電力福島第1原発事故後、国は事故に備えるエリアを半径10キロ圏から30キロ圏に広げた。だが、再稼働の可否を決める自治体の範囲は定めていない。原発の立地地域では「地元」の意味を問い直す動きが相次ぐ。
 再稼働に向けた同意の範囲が大幅に拡大した例もある。首都圏で唯一となる茨城県の日本原子力発電(原電)東海第2原発。立地する東海村と県に加え、18年3月、全国で初めて周辺5市に実質的な了解権が認められた。
 推進役となったのは原発事故当時、東海村長だった村上達也さん(77)。「福島の被害の大きさに寒けがした」と言う。
 東海第2は30キロ圏に全国最多の100万人近くが住む。「小さな村の村長が周辺住民の安全にまで責任を持てるはずがない」。県都の水戸を含む5市長に働き掛け、12年2月に首長懇談会を設立させた。13年9月の退任後も懇談会の取り組みは続き、原電に対する6回の文書での申し入れを経て範囲拡大にこぎ着けた。
 19年2月には5市に隣接する8市町も原電に直接意見を伝えられる協定を締結。原電は30キロ圏の全自治体の意向に縛られることになった。水戸市の高橋靖市長は「(村上さんら)東海村長が率先して尽力し、周辺自治体の連携も大きな力になった」と振り返る。
 再開が現実味を増す女川2号機。村上さんは「立地自治体だけで事故の責任を取れるのか」と警告する。

 女川原発30キロ圏の立地外5市町は「UPZ関係自治体首長会議」を設けている。13年7月に発足し、広域避難計画の調整などに当たってきたが、19年1月を最後に開かれていない。首長の一人は「女川と石巻だけの判断でいい」と明かし、地元同意を巡るスタンスは温度差が際立つ。
 重大事故時のリスクを背負い、住民の命と財産を守るべき地元とはどこなのか。女川2号機が再稼働へと歩を進める中、答えは見えてこない。


2020年09月22日火曜日


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