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女川原発再稼働・迫る地元同意(4) 審査追認、安全性の議論なく

女川2号機の原子炉建屋内の視察で説明を受ける村井知事(右端)ら=8月6日

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の前提となる「地元同意」を巡り、立地自治体の手続きが本格化している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年目。首長や議員は原発と向き合っているのか。議論は尽くされたのか。民意は反映されるのか。地元とは何か−。村井嘉浩知事の最終判断が迫る中、課題を探った。
(原子力問題取材班)

 「福島の教訓は『想定外』。各種の調査結果を丸のみせず、われわれの視点で見ている」
 京大の中島健教授(原子力工学)は、新潟県の「技術委員会」座長として、東京電力福島第1原発事故の原因究明に取り組む。
 事故原因、健康と生活への影響、避難方法。同県は独自に掲げる「三つの検証」を終えない限り、事故機と同じ「沸騰水型炉」である東電柏崎刈羽原発の「再稼働の議論を始めることはできない」(花角英世知事)との立場だ。
 「これでいいと思った対策も、それを超える可能性を考え、対応する必要がある」と言い切る中島教授。新潟県の模索は続く。

 8月6日、宮城県の村井嘉浩知事は東北電力女川原発(女川町、石巻市)にいた。東日本大震災直後の2011年4月以来、9年4カ月ぶりの現地視察を、手放しの称賛で総括した。
 「あまりの変容に驚き、感動もした。新規制基準にのっとった対応を目の当たりにし、安心した」
 海抜約29メートルの防潮堤、原子炉格納容器の破損防止装置…。東北電が22年度まで進める安全対策工事に、須田善明女川町長、亀山紘石巻市長も好評価を口にした。案内役を務めた樋口康二郎社長は「安全対策に終わりはない」と応じた。
 女川2号機の再稼働を巡る議論で避けて通れないのが「被災原発」の安全性だ。福島第1と同じ沸騰水型炉でもある。早々に同意手続きが進むだけでなく、立地自治体トップ3人が現地で少なからぬ理解を示した行為は、再稼働を巡る新潟、宮城両県のハードルの高さの違いを際立たせた。
 検証を深めるチャンスはあった。県は14年11月、女川2号機の安全性を議論する有識者検討会を設けた。同意手続きの重要な判断材料とするためだが、実態は原子力規制委員会による審査の「追認」に終始。今年7月、再稼働の是非に踏み込むことなく5年8カ月の議論を終えた。
 座長を務めた若林利男東北大名誉教授(原子力システム安全工学)の言葉が、委員10人に用意された土俵の狭さを象徴していた。「安全性は規制委が結論を出している」。検討会の議論の俎上(そじょう)にさえ載らなかった広域避難計画は、8月の住民説明会で批判と疑問の集中砲火を浴びた。

 静岡県中央部の交通の要衝に位置する島田市。中部電力浜岡原発の約30キロ圏に入る11市町の一つだ。13年5月に就任した染谷絹代市長は、桜井勝延前南相馬市長から何度も原発事故の厳しい現実を聞き、思いを強くした。
 「事故時に的確な情報を入手するのは極めて難しい。浜岡原発の広域避難には不確実性がある」
 染谷市長は審査中の3、4号機、中部電が申請を目指す5号機が「合格」したとしても、住民の安全が確保されない限り、再稼働を認めるつもりはない。
 女川2号機の再稼働は早くても2年先。新潟、静岡とは対照的に、安全を巡る議論は早くも棚上げされようとしている。


2020年10月01日木曜日


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