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女川原発再稼働・迫る地元同意(5)完 「県民の総意」問われる覚悟

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の前提となる「地元同意」を巡り、立地自治体の手続きが本格化している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年目。首長や議員は原発と向き合っているのか。議論は尽くされたのか。民意は反映されるのか。地元とは何か−。村井嘉浩知事の最終判断が迫る中、課題を探った。
(原子力問題取材班)

 宮城県女川町議会が東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働を容認した7日、定例記者会見で村井嘉浩知事は立ち位置を明確にした。
 「県民の総意を政府に伝えるのが私の役目だ」
 村井知事は、再稼働の前提となる「地元同意」の事実上の決定権を握る。ある与党県議は「自ら意見の集約に動く決意の表れだろう」と、その時が刻々と迫っていると読み解いた。
 県議会と県内全市町村長、原発5〜30キロ圏内5市町長の意見を聞いた上で、女川町長と石巻市長と合議して最終決定−。村井知事は再稼働を認めるかどうか判断する時期を「白紙」とけむに巻くが、立地自治体の議会が初めてゴーサインを出したのを機に、同意手続きはまた一段加速する。
 県民の意見を聞く機会として、県が主催した住民説明会も8月、30キロ圏内の7カ所で矢継ぎ早に行った。「新型コロナウイルスが再流行したら、いつできるか分からない」(県幹部)と強行の結果、総参加者は募集定員の4割を下回った。
 30キロ圏を含む美里町の町長を務め、再稼働に反対する佐々木功悦県議は「説明会は開催の実績を積み重ねただけだ。スケジュールありきだ」と批判する。
 「原発事故で地域が一変した福島の現状を知っているのに、女川原発を再稼働させようとするのは理解に苦しむ」。9年半前の東京電力福島第1原発事故当時、南相馬市で陣頭指揮を執った桜井勝延前市長は疑問と違和感を拭えない。
 同市では事故後、人口約7万の7割超がいったん地元を離れ、今も約6000人が市外で暮らす。桜井氏は「女川原発周辺の自治体は、自分たちの住むまちがなくなる想定をしているのか。住民の命を守る覚悟が問われている」と訴える。
 村井知事は「原子力政策は国策」と繰り返す。2号機の安全性は新規制基準への適合を認めた原子力規制委員会の審査を尊重し、30キロ圏内の広域避難計画は政府の了承事項と一歩引く。
 再稼働を目指す原発に対し、主体的に関与する知事もいる。新潟県の花角英世知事は県独自の検証が終わらない限り、同意の議論を進めない考え。静岡県の川勝平太知事も再稼働に慎重で、県民投票に賛意を示したこともある。
 女川2号機の再稼働は安全対策工事が終わる2022年度以降で、熟議の時間は残されている。元福島大教授で、自治体政策に詳しい地方自治総合研究所(東京)の今井照(あきら)主任研究員は警鐘を鳴らす。
 「知事は政府や国に忖度(そんたく)することなく、避難計画の実効性などの課題をチェックし、地元の考えをしっかり伝えるべき立場にある。事故が起きれば、影響を受けるのは地域。拙速な手続きはあり得ない」
 政府から地元同意を正式に要請されて半年余り。23日開会した県議会9月定例会で、村井知事は「県民の代表である県議会の意思を十分に踏まえ、総合的に判断したい」と述べ、県議会にボールを投げた。
 県議会は定例会で賛成派、反対派双方からの請願を審議する見通し。最終日の10月22日に向け、村井知事の決断を左右する最大のヤマ場を迎える。


2020年10月02日金曜日


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