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富士大の安田新監督、好スタート 北東北大学野球 自主性尊重し競争促す

練習をベンチから見守る安田監督=花巻市の富士大

 山川穂高選手(西武)らプロ野球選手を輩出している北東北大学1部リーグの富士大(岩手県花巻市)の新監督に、かつて東北学院大で岸孝之選手(東北楽天)と共に活躍した安田慎太郎さん(35)が就任した。一昨年まで10季連続で優勝した強豪の再建を託され、初陣の秋季リーグは開幕8連勝。3季ぶりの優勝に導いた。
(一関支局・金野正之)

 4年前からコーチを務め、7月に昇格。青年監督らしく「大学初の全日本選手権制覇を狙う」と野心を隠さない。しかし練習では基本的に選手の動きを注視するだけだ。それには理由があるという。
 「指導者が押し付けてばかりでは、言われた通りにするだけになる。主体的に考え、行動する選手が育たない」。コーチ時代は技術や戦術を熱っぽく伝える方だった。昨年秋、チームの転換期に悩んで、自主性尊重へと発想を変えた。
 野放しにしているわけではない。「周囲を納得させる結果を出す選手を起用する」と競争を促し、「そもそも日常行動がルーズな選手は論外」と規律を最重視する。
 厳しさの中にも優しさはある。大学野球では入学後に挫折して練習に出ないまま退部する選手が出がち。だが安田さんは「幽霊部員ゼロ」を掲げる。「姿が見えない日があればすぐ『出てこいよ』とみんなでハッパを掛け、練習に戻らせる」と家族的に支える。

 甲子園の土を踏んだ野球経験値の高い選手がそろう首都圏の大学と違う。富士大には、かつて沖縄県から来て飛躍した山川選手のように各地から磨けば光る金の卵が集まる事情もある。
 安田さんもかつて国内と韓国の独立リーグなど5チームを渡り歩き、プロ入りを夢見た。宮城のアマ球界では知られた選手だった。
 2002年の高校野球宮城大会、安田さんが主将を務める仙台は準々決勝で、151キロ左腕高井雄平選手(ヤクルト)がいた東北を破る番狂わせを演じた。
 「選手の状況判断が勝負を左右する」。自主性の重要さを知った原体験は06年仙台六大学春季リーグだ。エース岸選手、主砲安田さんが両輪の学院大は34連覇中の王者東北福祉大を破って優勝した。
 王座を懸けた直接対決最終戦、学院大が1点を追う九回2死一塁2ストライク。打席の安田さんがベンチを見ると監督は天を仰ぎ、仲間は泣き、応援団も帰り始めている。既に万事休した空気。「何だよ、まだ勝てるぞ」。逆に安田さんは気を吐いた。ワンバウンドしそうな悪球をすくい上げ、右中間フェンスを直撃する起死回生の同点打に。直後のサヨナラ勝ちを呼んだ。

 安田さんはチームリーダーでもあった。当時の岸選手は天才肌であるあまり体育会的な風習を押し付けられるたび「野球をやめる」とごね、伸び悩んだ。それを安田さんらがうまく後押しし、開花させた。
 監督になった今、理想のチームを「何も指示しなくても試合に勝つ自立した選手の集団」と思い描く。14年の年輪を刻んだリーダーシップに期待が懸かる。


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2020年09月22日火曜日


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