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【焦点】「安心して産みたいのに」 長距離移動、妊婦に負担

出産を控え、診察に向かう女性。震災後、沿岸、内陸を問わず遠方の施設に通院する人が増えている=宮城県石巻市の石巻赤十字病院

 東日本大震災後の10年間で3割減った宮城県内の分娩(ぶんべん)施設。安全なお産のために一定の集約化が避けられないとの指摘がある一方、長距離の移動を強いられる妊産婦の負担は少なくない。「安心して産みたい」。悲痛な声が各地で上がっている。(報道部・菊池春子)

 「妊婦健診に行くだけで半日以上かかる。仕事との両立も大変」。出産予定日を12月に控える丸森町の自営業八巻真由さん(27)がこぼす。
 隣接する角田市の医院が4月に分娩を休止し、片道40分かけて岩沼市の病院に通う。分娩施設が減少した影響もあり、病院はいつも混み合う。待ち時間を含め3時間以上かかることもある。
 陣痛が始まった場合は夫の運転で病院に向かう予定だが、夫が常に対応できるとは限らない。時間帯によってはタクシーの利用も難しい。「少子化が叫ばれながら、安心して産める環境が十分ではない」と訴える。
 市内唯一の分娩施設がなくなった登米市の主婦太田麻璃さん(30)は9月、片道40分の石巻赤十字病院(石巻市)で第4子を出産した。
 建設業の夫は市外の現場での仕事が多いが、陣痛が始まった時、たまたま家にいたために送ってもらえたという。それでも「もし移動中に産まれたら、という不安はあった」と振り返る。

 白石市の農業大石知子さん(33)は、2016年に公立刈田総合病院(白石市)が分娩を休止したため、18年10月に県境を越え、伊達市の産院で第3子を出産した。
 産前だけでなく、産後しばらくは自身の体調や育児の不安が大きい。「上の子もいる中、お産した病院にすぐに駆け込めないのは不安だった」と打ち明ける。
 大石さんは「将来、娘2人が里帰り出産ができないと思うとやるせない。分娩施設が地元にないことが、若い人たちの地元への定着に影響を与えかねない」と懸念する。


2020年10月06日火曜日


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