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帰還困難区域の線量を毎月測定 76歳の区長「古里の現状を避難者に伝える」 福島・浪江

帰還困難区域の空間放射線量を調べる今野さん(右)=9月28日、福島県浪江町赤宇木

 東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域になった福島県浪江町津島地区の赤宇木(あこうぎ)集落に、地域の空間放射線量を調査するため今野義人さん(76)が毎月足を運んでいる。集落を1戸ずつ回って測定する作業を続けて延べ約100日。「古里の現状を正確に避難住民に伝える」という行政区長の責任感が活動を支える。(福島総局・神田一道)

 9月28日午前、人けのない集落を1台の車が走り抜けた。乗車しているのは今野さんら避難住民3人。月1回、赤宇木の空間線量を測定しているメンバーだ。
 毎回3時間ほどかけて住宅や公民館など計95地点を測っている。毎時4.54マイクロシーベルト、5.95マイクロシーベルト…。福島市内の30〜40倍の数値が次々と計測される。
 地表面で44マイクロシーベルトの地点もあった。「これでも前月に比べて下がったんだ」。今野さんが苦笑いしながら教えてくれた。

 2011年3月、炉心溶融(メルトダウン)によってまき散らされた放射性物質は風に乗り、北西方向の浪江町に降り注いだ。赤宇木のある津島地区は特に汚染がひどく、立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域に指定された。
 その年の5月、津島地区で170マイクロシーベルトの高い線量が計測されたと聞いた。「区長として心配になった。何が起きているのか知りたかった」。7月、持参した測定器で線量調査を始めた。
 当初は20マイクロシーベルトを上回る地点が多かったが、今は1桁に落ち着いた。住宅の前で測った数値は調査時の地域の様子をつづった文書を添え、赤宇木の八十数世帯に毎月送っている。
 今野さんは白河市に暮らしている。赤宇木まで片道約100キロ。3年前に腰を痛め、この夏からは歩くのも一苦労だ。体は悲鳴を上げているが「住民に線量を伝えるのは区長の義務。区長を務める限りはこれからも続ける」と覚悟をにじませる。

 津島地区に隣接する飯舘村の帰還困難区域では、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の区域外で全面的な除染をせずに避難指示を解除できる仕組みが検討されている。赤宇木も復興拠点外。同様の対応が検討される可能性はゼロではない。
 今野さんはこれに反対する。「赤宇木では年配者を中心に、除染されれば帰還しようと考えている人が多い。徹底的に除染し、安心して住める環境を整えずに避難解除するなんてあり得ない」と言う。
 赤宇木は少なくとも600年前の室町時代から人々が生活を営み、戦後は旧満州(中国東北部)からの引き揚げ者が開拓した。「先祖から守り続けた大事な地。赤宇木の歴史をここで終わらせる訳にはいかない」


2020年10月07日水曜日


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