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福島第1処理水 海洋放出に宮城も懸念 漁業者「風評被害広がる」

福島第1原発の構内にある処理水のタンク群

 東京電力福島第1原発にたまり続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分を巡り、政府が月内にも海洋放出を決定する方針が報じられた16日、隣接する宮城県の漁業者や首長からは、強い反対と怒りとともに、風評被害への懸念の声が上がった。
 「福島県に近いだけに不安は大きい。実際に処理水が海に放出されれば、風評被害がどれだけ広がるか予想できない」。県境に接する山元町の漁師猪又賢さん(66)は心配する。
 海洋放出には一貫して反対の姿勢を貫いてきた猪又さん。「国が決めることだから、いくら反対してもどうしようもない」と嘆息するが、「風評被害が出ればきちんと補償すべきだ」と注文を付けた。
 東日本大震災で大きな被害を受けたホヤ養殖の現場にも動揺が広がった。女川町の阿部次夫さん(68)は「絶対に反対。数十年後も人体や環境に影響がないとは言い切れない」と不安視する。
 震災前、県産ホヤの約7割の輸出先だった韓国は、福島第1原発事故を理由に2013年から禁輸措置を継続。最大の販路を失った浜は、生産調整や廃棄処分を強いられている。
 14年以来維持してきた生産量首位の座も19年、北海道に奪われた。阿部さんは「風評被害の厳しさは、これでもかと感じた。元に戻すことは容易ではない」として方針転換を訴えた。
 県漁協は今年6月、海洋放出をしないよう国への働き掛けを村井嘉浩知事に要望した。水産関連が産業の7割を占めるとされる気仙沼市の菅原茂市長は「漁業者の理解を得ることに全力を注いでほしい。理解を得られないのであれば、別の方法を真剣に考えるべきだ」との考えを示した。
 「9年半、漁場を捨てずに頑張ってきた漁業者もいる。これまでの努力を無にすることがないよう、しっかり話し合いを進めてほしい」と話し、議論を尽くす必要性を指摘した。


2020年10月17日土曜日


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