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「特記事項なし」を黒塗り 名取市教委、指導要録など一部非開示に 生徒の審査請求で覆る

調査書の特記事項欄。黒塗り部分に書かれていたのは「特記事項なし」だった
指導要録の総合所見欄。当初は黒塗りだった

 「指導要録の所見欄を非開示とした名取市教委の決定は時代遅れだ」。市内の高校2年男子(16)から「読者とともに 特別報道室」に訴えが届いた。男子生徒は中学時代の成績や評価を記した指導要録と調査書(内申書)の開示を市教委に請求。当初の部分開示決定を覆し、全面開示を勝ち取った経緯を明かした。

 指導要録は小中学校などが児童生徒の学習や健康の状況を記録した文書で、通知表や調査書の原本となる。男子生徒は2月中旬、市教委に開示請求した後、指導要録の総合所見欄と調査書の特記事項欄が黒塗りとなった部分開示決定を不服として、審査請求した。
 市教委は市個人情報保護審査会で「本人や保護者への開示が前提となると反応を懸念するあまり、客観的で公正な判断に基づく記述が困難になる。指導要録の内容が形骸化し、適切な指導を困難にする恐れがある」と弁明。指導や評価の情報を非開示と定めた市個人情報保護条例の規定を根拠に、部分開示決定の妥当性を訴えた。
 男子生徒は1999年に指導要録の全面開示を認めた大阪高裁判決を挙げ「マイナス評価であろうと普段の教育で生徒に伝えられているはずで、いまさら非開示とする理由にはならない」とする反論書を提出。各地で進む全面開示の実績を示し「『不開示を前提としている』との認識は時代遅れだ」と主張した。
 審査会は9月中旬、開示しても指導、評価に関する事務事業に支障が生じる恐れは認められないとして、市教委に全面開示するよう答申した。これを受け、市教委は当初の決定を取り消し、全面開示を決めた。
 開示された指導要録の総合所見欄は、学校生活に関する事実の記載が大半を占めた。調査書の特記事項欄には「特記事項なし」としか書かれていなかった。
 男子生徒は「特に変わったことは書かれておらず、開示しないのはばかげている」とあきれ顔。「閉ざされがちな行政を打開するきっかけになってほしい」と話した。
(小沢一成)

◎問われる学校の透明性 市教委判断に疑問の声

 名取市教委が指導要録の一部を非開示とした当初の決定について、宮城県内の教育関係者から疑問の声が出ている。指導要録開示を巡っては、情報公開の機運が高まった1990年代に各地で請求や訴訟が相次ぎ、社会問題に発展した。全国の学校現場でいじめや体罰などの課題が山積する中、開かれた学校づくりの姿勢が改めて問われそうだ。
 県教職員組合(宮教組)の堀籠拓書記長は「指導要録が教師の間で闇情報のように流通するのはおかしな話。自分がどう評価されたのかを知る権利は認められるべきだ」と強調する。
 その上で「いじめや体罰、部活動での指導死などは閉鎖的な空間で起きる。教師は子どもに対する権力者だが、透明性が担保されていれば自制する」と情報公開の重要性を訴える。
 指導要録開示の動きは90年代、個人と行政がせめぎ合いを続けながら急速に広まった。92年に大阪府箕面市教委が全国で初めて全面開示を認めた後、各地で全面開示の事例が相次いだ。2000年12月には旧文相の諮問機関「教育課程審議会」が本人への開示を原則とするよう答申した。
 宮城教育大教職大学院の本田伊克教授(教育課程論)は「指導要録は児童生徒に対する指導と学習結果の要約で、自らの要録公開に制限がかかるのはおかしい。本人と保護者には当然開示されるべきだ」との見解を示す。
 教育現場が情報公開に消極的となる一因として、02年度の指導要録から絶対評価に全面移行した影響があるとみる。「絶対評価は教師の主観を反映してしまうのではないかという懸念が社会に広がり、教委や学校は評価の基準とプロセスの説明責任をいかに果たすかに、きゅうきゅうとしている」と指摘する。
 名取市個人情報保護審査会は答申の付帯意見で「一律に指導要録などの内容を全て開示すべきだと判断したものではない」とした上で「教育現場で活用できる開かれた指導要録と調査書の作成に取り組むことを望む」と注文を付けた。
 市教委学校教育課の鈴木博幸課長は「開示が前提になれば筆が止まる教員もいると懸念している。今後、一律に全面開示の方向に行くかどうか慎重に考えなければならない」と話す。


2020年10月28日水曜日


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