岩手のニュース

W杯から1年、釜石のラグビー熱に水差すコロナ 風化懸念、具体策提示が急務

W杯1周年の記念試合では、SWジュニアが震災支援への感謝を伝える歌を合唱した=10月10日、釜石鵜住居復興スタジアム

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会から1年がたった。東北唯一の開催地となった釜石市は、ラグビーを活用したまちづくりを目指す。だが新型コロナウイルスの影響で、軸となる釜石鵜住居復興スタジアムの運営を巡る協議は停滞。W杯のレガシー(遺産)をどう発展させていくか、具体像はまだ示せていない。
(釜石支局・中島剛)

 「大会に向けて地域が一つになった。ハードのレガシーがスタジアムなら、ソフトは市民の心に広がった達成感。釜石は大きく変わった」
 元日本代表でW杯3大会に出場した釜石シーウェイブス(SW)の桜庭吉彦ゼネラルマネジャー(GM)は感慨深げだ。

 これまで釜石とラグビーと言えば、新日鉄釜石の日本選手権7連覇(1978〜84年)の印象が強かった。あの熱気を体験した世代は少なくなりつつある。
 桜庭GMは「多くの子どもや若者が積極的に関わり、大会の成功に貢献した。ラグビーのまちづくりを進める上でV7に匹敵する大きな財産になった」と強調する。
 高まるラグビー熱を象徴するかのように、小学生以下でつくる釜石SWジュニアの選手数は増加の一途をたどる。2018年度は43人、19年度は57人、現在は71人を数える。
 しかし、想定外の新型コロナに水を差された。
 春以降、トップリーグの試合など市内で予定されていたラグビー関連のイベントの多くが取りやめとなった。市と岩手県はW杯1周年行事として、台風で中止となったW杯第2戦のナミビア対カナダ戦の実現を目指していたが、断念を余儀なくされた。

 現在、市が直営するスタジアムは、専門家らとつくる運営委員会で案を練り、来年度から運営を民間に移す予定だった。本年度、運営委は一度も開けず、新体制への移行は22年度以降に延期される。市スポーツ推進課の担当者は「検討する時間が増えたと捉え、より良い結論に結び付けたい」と話す。
 心配なのはW杯の風化と関心の低下だ。官民でつくるラグビーのまち釜石推進協議会の小泉嘉明会長は「ラグビーは釜石の希望の中心。W杯の素晴らしい記憶が鮮明なうちに市民が観戦でもボランティアでもラグビーに簡単に関われる仕組みをつくりたい」と願う。
 ラグビーのまちづくりについては概念論が多く、具体策が見えないとの声も市民にはある。
 野田武則市長は「経済的な効果を今挙げるのは難しい。具体的な政策や事業は運営委の意見をもらいながら考えていく」と説明する。少年選手の育成強化に意欲を示し、「釜石の高校が全国大会で名をとどろかせるようにしたい。ラグビーのまちの核となるのは子どもたちの活躍。体制づくりを急ぐ」と力を込めた。


関連ページ: 岩手 社会 新型コロナ

2020年11月04日水曜日


先頭に戻る