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対応の失敗や反省、ほとんど触れず 開館1カ月の原子力災害伝承館、福島大准教授が指摘

東京電力福島第1原発事故の展示を調査する後藤准教授=17日、福島県双葉町の県東日本大震災・原子力災害伝承館

 開館から1カ月がたった福島県東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)。「福島だけが経験した原子力災害をしっかり伝える」とうたうアーカイブ施設は、被災の実態を適切に紹介しているのか。開館前から「事故の反省が乏しい施設になるのでは」と危惧していた専門家と伝承館を歩き、検証してもらった。(福島総局・神田一道)

 検証した福島大共生システム理工学類の後藤忍准教授(環境計画論)は、国内外の過酷事故や公害などを伝えるアーカイブ施設を研究している。これまでにウクライナにあるチェルノブイリ原発の博物館や熊本県水俣市の水俣病資料館を訪問し、展示内容を詳細に分析してきた。
 伝承館で後藤氏が真っ先に指摘したのは、東京電力福島第1原発がなぜ過酷事故に至ったのかを説明する展示が少ないことだ。
 第1原発の敷地は、標高35メートルの平たんな台地を25メートル削って造成された。海抜が低く巨大津波に弱い構造になったが、館内の520分の1サイズの模型に掘削の記述はない。
 「造成時の映像がどこかに残っているはずだ。模型を作るなら、元の地盤をどれだけ削ったのか示すべきだった」
 被害の記述が乏しいのも特徴だ。死者・行方不明者と関連死の数を記載するパネルはあるが、どのようにして亡くなったかの紹介は少ない。水素爆発で拡散した放射性物質の流れを示すグラフィックもなく、映像で短く触れるだけだ。
 チェルノブイリの博物館の日本語音声ガイド(約1万4000語)を分析した結果、「事故」「汚染」「死亡」といった被害を想起させる単語が多かったのと対照的だという。
 「深刻な被災状況も克明に語るのがアーカイブ施設に課せられた役割。数だけでは事故の教訓の核心が伝わらない」。事故後に「私はお墓にひなんします」と遺書を残して自殺した女性らを紹介するべきだと後藤氏は主張する。
 事故対応の失敗や、反省点にほとんど触れていないのも気になったという。県は事故後、住民避難に活用が可能な緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータを消去するミスを犯していた。
 しかし、パネルでは「情報を共有することができませんでした」と短く触れただけ。甲状腺がんを防ぐ安定ヨウ素剤も展示しているが、適切に配られなかったため「防護策として機能しなかった」(国会事故調報告書)との記述はない。
 後藤氏は「『原発事故を自分のこととして捉えてほしい』と日頃から訴えている県自身が、事故をひとごとと思っている印象すら受ける。県には反省点としっかりと向き合い、至らなかった部分も含めて発信する姿勢を求めたい」と語る。
 担当する県生涯学習課の渡辺賢一課長は「さまざまな意見があることは承知している。県としては、原発事故で起きたことをありのままに展示していると考えている。内容については随時見直していく」と話す。

[福島県東日本大震災・原子力災害伝承館]震災と東京電力福島第1原発事故のアーカイブ施設として、国と県が造る復興祈念公園の隣接地に総工費53億円で建設。事故の経過を振り返るシアターに続き、発生から復興までの取り組みを5コーナーで解説する。収集した資料約24万点から約170点を展示している。


2020年11月05日木曜日


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