壁巡り非常事態宣言/分断の根源は大統領にある。
この記事は2019年02月17日配信。
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 一般教書演説で「党派対立を超え、一つの国を目指そう」と結束を呼び掛けたばかりではないか。その舌の根も乾かぬうちに、自ら議会、民主党との信頼を踏みにじった。
 トランプ米大統領が、公約であるメキシコ国境の壁建設のために国家非常事態を宣言した。議会承認を経ず、大統領権限で建設費を確保する最終手段である。横暴な政治姿勢にあきれ果てる。
 一方、共和、民主両党が合意し、13億7500万ドルのフェンス建設費を含む歳出法案にはしぶしぶ署名した。再び予算が失効すれば政府機関の再閉鎖は避けられない。またも政府職員や国民を混乱させるわけにはいかなかった。
 ただ、ここで強権発動に出る選択肢は本来ない。議会否定につながるからだ。そもそも「禁じ手」まで使う強硬路線は共和党内にも反対論があった。壁建設で一定の妥協をした民主党側は「国境に非常事態はない。職権乱用だ」と非難。法廷闘争に持ち込む構えだ。対立激化は免れまい。
 不法移民問題が深刻なのは事実だろう。トランプ氏は先日の一般教書演説で、麻薬の密輸入、人身売買、殺人などの犯罪や貧困、雇用格差などを挙げ、「国境の無法地帯は全国民の安全、幸福の脅威だ」と訴えた。
 そうであればこそ、壁建設だけでなく多方面から戦略的な対策を打つべきだ。方法はそれこそ無数にあろう。
 しかし記者会見で「どのようにしてでもやる」と意気込むトランプ氏には、要求した建設費57億ドルが大きく削減されたことへの不満と、「弱腰」批判をかわそうとする独善性しか感じられない。対立の危機の根源は、大統領自身にあると言わざるを得ない。
 トランプ氏が「堅固な壁」にこだわるのは結局、2020年大統領選での再選に向けた岩盤支持層へのアピールである。「分断に橋を架け、古傷を癒やそう」などと、いくら寛容な言葉で取り繕っても、対立をあおり、支持者をつなぎ留める強権政治家の本質は隠しようがない。
 トランプ政権は、非常事態宣言で国防総省などの関連予算から計67億ドルの捻出を当て込むが、壁建設が該当するかは不透明だ。法廷闘争が長引いて、不法移民対策が一歩も進まなくなる恐れもある。下院で民主党が主導権を握る「ねじれ議会」が続く中、どこまでまっとうな政権運営ができるのか不安は拭えない。
 当面の外交日程を終えれば、実質的に大統領選の準備モードに入る。壁を巡る両党の攻防が、選挙戦に大きな影響を与えるのは間違いない。
 一方で、大統領周辺とロシアの関係を巡る「ロシア疑惑」捜査も大詰めに来ている。民主党は、壁建設問題と合わせて追及の手を緩めまい。
 強大さを誇示するだけで、空回りするトランプ政権の内向き政治が一層、空疎に見えてきた。
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