Feature特集

2018.04.12号掲載

何だか気になる

お通しの話

居酒屋で「取りあえず」と頼むのはビールが多いが、注文してもいないのに取りあえず出てくるのが「お通し」。何十年と当たり前に受け入れてきた、外国人は驚くニッポンの居酒屋文化だ。新年度を迎え、何かと酒の席が多いこの季節。ここらで謎の小鉢(皿)の正体を探ってみよう。(せ)

一皿勝負の場

そもそも「お通し」は、お酒を飲む客に、注文した料理を出す前に店側が提供する料理と位置付けられる。日本料理専門調理師で、宮城調理製菓専門学校の講師・守谷哲夫さんは、「名前は席に座った客の注文を調理場に『通した(伝えた)』、また調理場に客が来たことを通したなどの意味があったようです」と説明する。お通しは主に関東の呼び方で、関西では「突き出し」が一般的。他に先付けなどいろいろな呼び方がある。

「先付け」といえば会席料理の始まりに出すものだが、酒の肴として和(あ)えもの、焼きもの、炊き合わせなど何を持ってきても良い。

「発祥は定かではないが、その辺りからの流れではないでしょうか。席料をもらうのに、本料理までのつなぎを兼ねて店側のサービス心で小さな一品を付けたのでは」(守谷さん)

お通しは無料ではなくだいたい最低でも数百円はかかるため、近ごろは「いる・いらない」論争もあるようだが、守谷さんは「個人店ではお通し一つも勝負ですよ」と話す。


料理への期待高める

ここで月1回、本紙掲載の「酔粋駅近」でお世話になった飲食店にお通しへのこだわりを聞いてみた。

「最初に箸を付けるものなので店の味を判断されるもの。手を抜けない」とは「わのしょく 二階」(青葉区一番町)の店主・中森伸さん。冬はおでんなど温かいもの、今ならメカブや山菜など旬を感じるものを用意。「続けて来店したお客には前と違うものを出します。それに気付いてもらえるとうれしいです」

語らずともお通しで心が通じ合う瞬間がある(ということか)。「お通しで喜ばれると次の料理のお薦めがしやすい。満足度を高める武器」と話すのは、「魚・炭・酒 おはし二日町」(青葉区二日町)の店主の菅野大輔さん。同店では茶碗蒸しが定番で、「これが目当てという常連さんも多い」という。

焼き鳥店「鳥"夢(ドリーム)」(若林区河原町)では「タケノコと牛スジの煮込み」や「ゴボウサラダ」など、2種類から選べるスタイル。店主の伊藤和臣さんは「焼き鳥が焼き上がるまで時間が掛かる。つなぎの意味も強い」と位置付けながら、「焼き鳥では表現しにくい季節感を出せる」と話す。お通しを食べた後にさらに単品で同じものを注文する人もいるそうだ。


思い込めた一品提供

個性的なお店はお通しにも特長がある。にごり酒専門「酒肆(しゅし) 番」(青葉区本町)の定番お通しは大豆の煮付け。店主の岩村翔さんが落語好きで落語の「みそ豆」から着想を得た。ここも「料理を出す前のつなぎ」としながら「体にいい豆をもっと食べてほしい」(岩村さん)との思いを込める。

煮物料理・発酵・熟成がテーマの居酒屋「ぼったくり」(青葉区国分町)も店のコンセプトが伝わる品を意識。「『何これ!?』とわくわくしてもらいたい」と店主の高橋聡さん。つい気合が入って出し過ぎるのか、「お通しだけで飲めるから料理の注文が出来ないと何度か言われて以来、気を付けている」というエピソードも披露してくれた。

中には「お通しを出さないことでその分、安く感じてもらいたい」と出さないことをこだわりとしているところも。

たかがお通し(?)されど…各店熱い心で提供しているのだ。


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