Feature特集

2020.02.20号掲載

伝統の技

古くて新しいモノ

愛用品が壊れたら…捨てる? 直す? 断捨離や「サブスク(定額で借りる)」など、モノとの付

き合い方を問われる時代。使い捨てせずに修理しながら長く使う、昔ながらの職人の技術に注目が集まっている。(せ)

欠けを埋めた部分のでこぼこをやすりで丁寧に削る
教室の開催時間の中で2時間、自分のペースで作業を進める。写真は仙台市泉区のセルバ泉中央文化教室
ほつれと小さな欠けは弁柄漆で埋めていく。「結婚祝いの花瓶。欠けても捨てられず20年。やっと直せる」と持ち主
加藤さんが制作したアクセサリー。街のイベントやWEBサイトで販売する

ここ数年、「金継ぎ」教室の人気がじわじわと上昇している。壊れた器を補修する、日本独自の伝統の技だ。「直す」ことで生まれる新たな価値とは。仙台の金継ぎ教室をのぞいてみた。  

「教室では、お気に入りの器を自分で直せることが喜ばれています」と話すのは、漆アクセサリー作家の加藤恵さん。生徒のリクエストで金継ぎ教室を開いたのが2年前。昨年依頼が急増し、現在5カ所で教えている。「漆芸家にとって、金継ぎは元々、副業的な技。私も教室を開いて初めて、求められていた価値に気が付いた」と人気に驚いている。


【金継ぎ】
皿やカップなど陶磁器の割れや欠け、ひびを、漆を使って接着し補修する技術。仕上げに金や銀で装飾する。漆を接着に使うのは縄文土器にも見られるが、継ぎ目を飾るのは茶の湯文化が栄えた室町時代から。高価な茶道具を金や銀で継いだ跡が新たな「景色」として現れるのを愛(め)でた。


繊細な作業に没頭

加藤さんのある日の教室にお邪魔した。生徒の手元をのぞくと、「欠け」を埋める材料「錆(さび)」を、砥石(といし)の粉末と水、漆を混ぜて作ったり、接合部分のでこぼこをやすりで磨いたり。器の素材、割れや欠けの状態によって材料や工程が異なるが、どれも繊細な作業だ。

生徒たちは、「結婚祝いに頂いた花瓶」「一目ぼれして買った作家もの」「義母からもらい毎日愛用していた皿」など直したいものを持参している。中には「壊れたものがなくて実家を探して集めた」という人も。  

漆は接着剤のように一度では付かない。薄く塗っては時間を置き、乾かしながら(硬化)の作業で、完了まで4~5回は通う。「思ったより時間がかかる。でもそこが楽しい」と50代パートの女性。「没頭して『無』になれる時間です」とは30代の看護師。

体験でわく愛着

皆、「時間と手間をかけて取り組むうちに、器により愛着がわく」と口をそろえる。地味な作業は全て金で華やかに仕上げるまでの我慢と思いきや、次回はいよいよ金をまく段階となり、「終わっちゃう」と声を上げる人も。思い入れのある器を自分で繕う時間こそが大事なのだ。

「自分で工程を体験すると、天然漆や漆工芸の価値を知ることにつながると思う」と加藤さん。日本の伝統の技への見直しが体験から深まるのかもしれない。

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