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健康の医学教室

身近な病気や症状について、東北大医学系教授らが最新情報を伝える

東北大大学院医学系研究科
高次機能障害学分野
  教授 鈴木 匡子 さん

1984年山形大医学部卒。東北大脳神経内科に入局後、メルボルン大神経心理学教室に留学。山形大高次脳機能障害学講座教授、第三内科神経学分野教授などを経て、2017年12月から現職。日本神経心理学会、日本高次脳機能障害学会などの理事を務める。仙台市出身。

【テーマ】高次脳機能障害を知っていますか? ―脳卒中や脳外傷の後に―

脳損傷で物忘れ、失語など
「見えない障害」に注意を

脳卒中や頭部外傷などにより脳に傷がつくと、まひなどの運動障害が起こることがあります。この場合は一般の方でも障害に気付きます。しかし、物忘れや失語などは、外から見ただけでは分かりません。このため高次脳機能障害は「見えない障害」と呼ばれ、「脳の損傷で複雑な脳の機能障害がされること」と定義されます。
認知症も、大きなくくりでは高次脳機能障害に含まれます。高次脳機能障害はその原因となる疾患がはっきりしており、画像などで確認できます。一方、うつ病や統合失調症などの精神疾患は、今の技術で明らかな損傷部位を示すことはできません。

一人一人症状が異なる

高次脳機能障害の症状はさまざまです。脳は言語や行為、視空間認知、記憶、注意、遂行機能など、複雑な機能に関わっており、脳の部位によって役割分担があります。損傷する部位によって、話せない、道具が使えない、道に迷う、物忘れをする、集中できない、予定の変更に対応できないなど、いろいろな症状が出てきます。また、患者さん側の要因として、病気になる前の状態が一人一人違うので、症状の出方もそれぞれに違ってきます。
東北大病院の高次脳機能障害科では、患者さんの病歴を伺って脳の損傷があることを確認し、脳の損傷部位を検査します。また、生活の中でどんな障害があるかを聞いたり、記憶、言語、視空間認知などの神経心理学的検査を行ったりして、どんな高次脳機能障害があるかを調べます。そして症状と病巣の関係を検討し、最適な治療や対応を考えます。

周囲の人の理解も必要

診察では、どんな症状で何ができにくくなっているかを、本人と家族に具体的にお伝えします。診察や検査を通して症状を実感していただくことも大事です。自分の状態が分かると、行動をある程度コントロールしたり、工夫したりできるようになります。介護者にも症状を理解してもらい、安全に暮らせる住環境の整備を進めてもらいます。場合によっては福祉制度の活用を提案することもあります。治療には時間がかかります。進行性の病気が原因でなければ、時間をかけて少しずつ良くなります。
高次脳機能障害は脳損傷の後に生じる見えない障害です。まひなどの症状は良くなったのに、病気の前にできていたことができない場合は、かかりつけの先生を介して、専門家にご相談ください。
(10月29日講演)