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健康の医学教室

身近な病気や症状について、東北大医学系教授らが最新情報を伝える

東北大大学院医学系研究科
心臓血管外科学分野
教授 齋木 佳克 さん

1990年東北大医学部卒業。同大大学院で医学博士号を取得。トロント大、ハーバード大小児病院、アルバータ大心肺移植部門など海外で研修。東北大病院心臓血管外科講師を経て、2010年から現職。

【テーマ】弁膜症を治す

心不全の一因になる弁膜症
息切れ、疲れ 早めに検診を

高齢化が進む中、心不全の原因となる弁膜症が増加しています。少し動くと息切れする、疲れやすいという人は弁膜症かもしれません。日本心臓財団は「早めに検診を受け、ひどくなる前に治療を始めましょう」と注意喚起のキャンペーンを展開しています。

全身に送る酸素が不足

心臓には4つの部屋があり、各部屋の出入り口には血液が一方向にのみ流れるように、三尖弁(さんせんべん)、肺動脈弁、僧帽弁(そうぼうべん)、大動脈弁の4つの弁があります。この弁に障害が起き、きちんと開閉しなくなった状態を弁膜症といいます。特に僧帽弁と大動脈弁に多く起こる疾患で、弁の閉じ方が不完全で血液が逆流する「閉鎖不全」と、弁の開き具合が狭くなり血液の流れが妨げられる「狭窄(きょうさく)」に分けられます。
弁膜症になると、全身に送り届ける酸素が不足するため、疲れやすい、息切れ、動悸(どうきå)などの症状が出てきます。治療のタイミングは、症状の程度や変化、心臓の大きさ、随伴する不整脈、肺高血圧、その他の病気などを調べ、治療によるリスクを勘案して総合的に判断します。

投薬、手術、カテーテル

弁膜症の中で比較的多いのは、大動脈弁狭窄症です。昔はリウマチ熱という感染症が主原因でしたが、最近は血管が石灰化する動脈硬化症が増えています。無症状の期間が長く、重症化すると失神や呼吸困難を生じ、突然死する危険もあります。症状が出た後は急速に進行し、治療が手遅れになる場合もあるので、早めの治療が必要です。
治療の選択肢は3つ。軽症であれば、薬で症状を和らげながら経過観察をします。体力のある人には開胸手術をして、悪くなった弁を人工弁に取り替えます。日本では最初に選択される治療法です。
高齢で体力が低下している患者さんや他の疾患を抱えている患者さんには、カテーテルを使って大動脈弁を人工弁に置き換えるTAVI(タビ)という、新しい治療法が選択できるようになりました。開胸の必要がないので体への負担が少なく、入院期間が短い利点があります。ただ、TAVIの治療が始まってから10年程度しかたっていないため、それ以上の長期成績はまだ明らかではありません。
治療には医師の判断が重要ですので、今は心臓外科だけでなく、循環器内科やリハビリ科の先生方とも相談し、治療に当たっています。弁膜症の治療は日進月歩です。近い将来、さらに新しい治療が選択できるようになると思います。 


(7月24日講演)