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健康の医学教室

身近な病気や症状について、東北大医学系教授らが最新情報を伝える

東北大大学院
医工学研究科分子病態医工学分野
医学系研究科病態液性制御学分野
  教授 阿部 高明 さん

1986年東北大医学部卒。同大大学院医学研究科修了。米国ハーバード大医学部客員研究員、ヒューマンフロンティア財団長期研究員などを経て、2008年から現職。腎臓と腸の関係に注目し、新たな治療薬の開発に取り組む。

【テーマ】腎臓の病気と腸内細菌

腎臓と腸に密接な関連性
快便で腎臓病悪化防ごう

腎臓は血液をろ過するフィルターのような働きをしています。血液から老廃物を取り除き、余分な塩分や水分を尿として体外に排出します。
慢性腎臓病(CKD)は、糖尿病などの全身の病気が原因で起きる場合と、腎臓自体に病気がある場合に大きく分けられます。近年は糖尿病腎症の患者さんが増加しています。病気が進行して人工透析を受けている人は全国で約34万人もいます。

塩分の取り過ぎに注意

CKDの治療は基礎疾患を治し、血圧や血糖をコントロールすることが大原則です。基本はまず食事です。塩分を取り過ぎると血圧が上昇して腎臓に負担をかけるので注意します。病状が進行すると、タンパク質やリンの制限も必要になります。そして降圧剤
(アンジオテンシン受容体阻害薬やACE阻害薬)を服用することで腎臓を保護します。
腎臓病の悪化抑制にプラスの効果が期待されるのが腸内細菌です。腸管内には1000~2000種類の腸内細菌がいます。その働きの1つとして、炭水化物やタンパク質(アミノ酸)の代謝・発酵を担っています。炭水化物を分解するのがいわゆる善玉菌、タンパク質を分解するのが悪玉菌です。この2種類の菌がバランスを保って腸内環境を維持しています。腸内細菌の集団(腸内細菌叢(そう))のバランスを制御することが、CKDの進行を抑えるために重要なのです。

便秘症の治療薬に注目

腎臓と腸は「腎腸連関」といって、相互に影響を及ぼすことが分かってきました。腎臓の悪い人は腸管内の善玉菌が減少しやすく、腸管バリア機能の低下によって血中に悪玉菌が漏れ出して炎症を引き起こし、心血管疾患のリスクを高めてしまいます。また、腎臓の悪い人には便秘の人が多いという報告もあります。便秘になると腸内環境が悪化して悪玉菌から尿毒素が作られ、さらに腎臓病を悪化させる悪循環が発生します。
私たちの研究グループは、腸内環境および腸内細菌由来の代謝物質に注目して、腎臓病の新たな治療方法の研究開発をしています。その結果、便秘症の治療薬の1つが腎臓病の進行を抑制する一助になることがマウスの実験で明らかになりました。今、この薬を用いて全国で治験を行っています。
しかし治療の基本は、食事療法や運動などで基礎疾患を治すことです。腎臓病の人は尿毒素の原料となるタンパク質の摂取量とリンに気を付ける一方、食物繊維や乳酸菌、オリゴ糖など腸に良いものを食べてください。規則的な生活やストレス回避の他、下剤を用いるなどして便秘をしないように心掛けてください。
(2月25日講演)