Sportsスポーツ

2019.12.19号掲載

VEGALTA SENDAI

ベガルタ仙台

スタジアムDJ大坂ともおが選手と対談 場外フリーキック

25周年を迎えた2019年も熱い戦いを見せてくれたベガルタ仙台。苦難が続いた場面でも、選手たちは負けずに活路を開いてきました。チームに貢献し、光るプレーを見せてくれたのはどの選手? チームを見守ってきたおなじみの2人が振り返りました。

 

起伏激しいシーズン

最後にフィット


ともお 今シーズンの印象は?
板垣 起伏が激しかった。最初は苦しかったですよね。
ともお キャンプで聞いた話と、実際の試合が違う印象で「うまくいっていないのかなぁ」と心配でした。
板垣 最終的に去年と同じ11位。選手がかなり入れ替わり、最初は苦戦していましたが、最後に持ち直したのでは。
ともお ここ数年のベガルタはオフに主軸が抜けて、チームを一から作り直すことが続いています。
板垣 ホーム最終戦の先発は半分ほどが新戦力。時間はかかりましたが、最終的にはフィットした印象です。
ともお 勢いが出てきたと感じたのは6月ですね。印象的だったゲームは?
板垣 6月23日、ホームFC東京戦です。4連勝の一つですが、当時首位で勢いがあったFC東京を2-0で破った。
ともお 関口訓充選手のゴールがかっこよかった!
板垣 関口選手はベテランだけど、ちゃんと継続して体づくりをしていて、よく走る。本当に頼もしい選手です。
ともお チームを引っ張ってくれていますよね。入団当時の若い頃を知るサポーターは感慨深いでしょう。
板垣 ともおさんが注目したゲームは?
ともお 9月14日の札幌戦ですかね。リーグ後半、苦しい中での勝利がサポーターにも元気をくれました。未勝利ジンクスがあった札幌厚別(公園競技場)で勝てたこともうれしい(笑)。
板垣 3-1で内容も良かった。自信につながりますよね。
スタジアムDJ大坂ともおが選手と対談 場外フリーキック

▲︎今季は新加入選手の融合に試行錯誤が続いた


新戦力が活躍


板垣 シマオマテ選手が特に夏以降、活躍していました。素早くて強さがあって賢くて。リーグの年間優秀選手にも選ばれました。
ともお GKではヤクブスウォビィク選手が加入しました。
板垣 ヤクブスウォビィク選手は初の海外移籍でしたが、すぐにフィットしましたね。GK陣はお互いにライバル意識を持って高め合いつつ、一体感もあって、関憲太郎選手が大けがで離脱した時、途中出場の川浪吾郎選手が無失点で試合を終えたことが印象深いです。
ともお MF陣は顔触れが大幅に変わりました。
板垣 道渕諒平選手は5ゴール。ポジションをものにしているのがすごい。
ともお 「道渕選手が活躍すると負けない」というイメージがあるくらいでした。
板垣 松下佳貴選手も最初は苦しみましたが、最終的には「同じことをできる選手がいない」という存在になった。左利きで、攻撃にバリエーションを加えてくれました。
ともお FW陣はどうでしょう。
板垣 リーグ戦で7ゴールを決めた、新加入の長沢駿選手でしょうか。単純にゴール数が多いし、頭でも足でも得点できる。
ともお システムや試合の流れによって、石原直樹選手やジャーメイン良選手のプレーも光っていました。
板垣 移籍がなく、今季のベースを残せれば、来季はもっと飛躍できると思います。


次の25年 展望見せて

監督退任は衝撃

ともお 渡辺晋監督の退任は驚きました。困難な状況で着実にチームを作って残留を果たし、リーグ屈指の監督へと成長した「ナベさん」。選手時代からの付き合いだから、思いがあふれて、正直言葉が見つかりません。
板垣 渡辺監督は、選手だった2001年からクラブに在籍していたこともあってか、単なる現場監督ではなく、クラブ全体のことを考えた言動が印象的でした。GM的な立場、あるいは社長として仙台に戻ってきてほしいですね。
ともお クラブは25周年。さまざまな意味でターニングポイントだったと思います。
板垣 苦難を乗り越えた1年になりましたし、何より今季はホームが強かった。
ともお 声援を送り続けたサポーターへ、次の25年をどう作っていくか、ビジョンを見せてほしい。フロントを含めてチーム全体として、強化や観客増などで思い切った改革に挑戦してほしいですね。

▲︎サポーターの声援を受け、今季はホームで強さを見せた


MVP 満場一致


ともお さて、MVPは?
板垣 1年間継続して出場していた永戸勝也選手を選びたいです。
ともお 僕も永戸選手にあげたい。道渕選手も考えましたが、彼はもっと伸びしろがあると思う。
板垣 2人で競い合って成長してくれれば。
ともお 満場一致でMVPは永戸選手となりましたので、個別で特別賞も選びましょうか。
板垣 夏以降に目覚ましい活躍だったシマオマテ選手で。
ともお 僕は平岡康裕選手。GKがヤクブスウォビィク選手に変わった時も、安定したプレーでチームを支えてくれました。

主将の風格発揮


ともお レディースのMVPはいかがですか。
板垣 苦しい時に支えてくれたのは、やはり安本紗和子選手。終盤戦と皇后杯では、有町紗央里選手が救世主のように活躍してくれました。
ともお 有町選手がけがなく試合に出ていれば、リーグ戦の結果(8位)が変わっていた可能性もあるかも。
板垣 通年のMVPはやはり主将としてやれることをやった安本選手でしょうか。
ともお 主将2年目で、風格も出てきました。若手にも頑張ってほしいです。今年いろいろと試して積み上げてきた分、来季は頑張ってほしいし、期待しています。

 


ちょっとハーフタイム 飯尾篤史

渡辺監督の功績を思う

青天の霹靂(へきれき)と言っていい。2014年4月から6シーズンにわたってベガルタの指揮を執ってきた渡辺晋監督の退任が12月9日に発表された。
監督が退任する場合、シーズン最終戦の前にはすでに決まっていることが多いから、今回は異例のケースと言える。
クラブとしては、7季連続2桁順位に終わった停滞感を打破したいのかもしれない。
だが、ベガルタは大企業のバックアップがあるわけでも、ホームスタジアムの収容人数が最大2万人弱と、入場料収入に頼れるわけでもない。
しかも、赤嶺真吾、角田誠、鎌田次郎、三田啓貴、西村拓真、野津田岳人、板倉滉、奥埜博亮、シュミット・ダニエルと、毎年のように主力選手が引き抜かれたり、所属元に戻って行ったりした。
それにもかかわらずJ1に居続けられたのは、渡辺監督の手腕によるものだ。
また、この青年監督の、もう一つの功績が戦術面の整備だ。
渡辺監督が導入した、ポジショニングを重視しながら相手とボールを動かすスタイルは、欧州で流行する「ポジショナルサッカー」「5レーン理論」とほぼ同じ。それを誰かから教わるのではなく、自ら欧州へ視察に向かい、小林慶行コーチらと相談しながら構築していった。
こうした戦術面の整備が、17年のルヴァン・カップ4強や18年の天皇杯決勝進出という結果につながった。だが、効果はそれだけではない。ブログやSNSで戦術分析に熱を入れるベガルタサポーターが急増し、他クラブのサポーターや欧州サッカー好きのファンからも、ベガルタのサッカーが注目されるようになったのだ。
その点においても渡辺監督は、間違いなく功労者。たとえ契約を終えるにしても、もう少しスマートな別れ方ができればよかったのだが…。
今はただ、強化部が思い描く新指揮官の招聘(しょうへい)に成功し、渡辺監督の新たなチャレンジの場が決まることを願うばかりだ。もし来季、渡辺監督とJ1の舞台で顔を合わせられたなら、これほど熱いことはない。

いいお・あつし

『週刊サッカーダイジェスト』記者を経て2012年、フリーランスに転身。南アフリカW杯やブラジルW杯、リオ五輪などを現地で取材。サッカー専門誌やスポーツ総合誌、ウェブメディアなどに寄稿する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)がある。