vol.08

健康経営が働き方を変える
コロナ禍の今こそチャンス

従業員の心身の健康づくりを企業主導で実践する「健康経営」は、宮城県内の多くの企業でも導入が進んでいます。健康経営に積極的に取り組む「健サポフレンズ」登録企業・団体の具体的な実践例とともに、健康経営の始め方のヒントや成功のコツなど辻一郎教授からのアドバイスをご紹介します。

INTERVIEW

宮城県内の
企業・団体に広がる
職場健康づくりの輪

辻󠄀 一郎 教授

東北大学大学院 医学系研究科
公衆衛生学分野

首都圏に浸透する健康経営
コロナ禍で関心高まる

首都圏、特に東京では健康経営がブームと言っていいほど、多くの企業が力を入れています。宮城県内にもその流れは来ていて、2016年の立ち上げから間もなく5年を迎える「スマートみやぎ健民会議」の登録団体数は、昨年末で812団体と着実に増加しています。昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大で、改めて社員の健康の大切さ、会社における健康管理の重要性に気付いた企業が増えたことも一つの要因でしょう。

会員になると、県のホームページに団体名が掲載される。
また、健康に関する情報が定期的に届く

コロナの影響で急速に進んだリモートワーク・在宅ワークの動きは、コロナ収束後も継続していくと思います。通勤時間が不要、企業コストが削減できるなどメリットが多く、懸念されていたコミュニケーション不足の問題については、工夫して改善・解決している企業が多いと聞きます。在宅では難しいと思われていた販売接客の仕事を、アバターの開発で可能にした企業もあります。在宅でできる職種が増えれば、スキルを持ちながら家庭の事情などで退職してしまった人が仕事復帰しやすくなり、仕事の多様性はさらに広がっていくはずです。リモートワークを継続してノウハウを蓄積している企業と、元に戻してしまった企業とでは、今後に大きな差が生まれると考えています。

食事に運動に健診
工夫のポイントさまざま

健康経営成功のコツは、「努力しなくてもいつのまにか自然と健康になる」モノやコトを取り入れることです。「健サポフレンズ」に登録している企業・団体も、コロナ禍において積極的に工夫して従業員の健康づくりに取り組んでいます。

例えば、「健康な体は健康的な食事から」と考え、オフィスで食べるランチに野菜やフルーツたっぷりの総菜宅配サービスを取り入れた事例です。バランスの良い食事を毎日取ることで自然と健康になるだけでなく、楽しみながらの食事で職場の人間関係が良くなる。結果としてストレスも減ってくるはずです。会社に対するエンゲージメント(愛着心)も強まりとても良い取り組みだと思います。

職場にいながら、不足しがちな野菜やフルーツが取れるような総菜宅配サービスが増えている。働き方の多様化に伴い、職場でのランチも変化が見られる

ウォーキングアプリを活用している会社も多いです。最近はゲーム化されたさまざまなウォーキングアプリがあり、チーム同士や支店同士で歩数を競って、社員の健康増進プラス、仕事以外のコミュニケーションを増やすことに役立ちます。「みやぎウォーキングアプリ」も企業対抗のアプリ大運動会を開催したり、歩数アップのインセンティブを付けたりして、楽しみながら歩ける内容です。またウォーキングのほかにスイミングやヨガなど多彩なメニューを作って、選べるようにしている企業もあります。

ほとんどの企業が実施している健康診断も行動変容のきっかけに利用できます。例えば、所見ありの人に行う個別面談などの特定保健指導を、健診直後に加えて次回健診の3カ月前にも行い、次の健診までに気を付けるポイントを伝えるのです。節制を1年間継続するのは難しくても「3カ月なら頑張ってみよう」と考える人は多いと思います。それで結果が改善されれば、その後のモチベーションにもつながるでしょう。

中小企業こそ健康経営 
多彩なツール利用して

冒頭で〝東京では健康経営がブーム”と紹介しました。しかしその東京においても率先して取り組んでいるのは主に大企業で、中小企業はまだまだというのが実情です。1人の社員が抱える役割や責任、事業安定のための人材確保、新たな人材教育のコストや時間などを考えれば、本来は中小企業にこそ健康経営が重要です。とはいえ、難しく考える必要はありません。健康のためにとねじり鉢巻きで努力することは、つまらないし続かないものです。今は楽しみながら自然と健康になれるツール、サービスがどんどんできています。まずは他社の優良事例の中からできそうなものをまねすることから始めてみてください。

健康経営で
社員の健康への関心が定着。
今後は心のケアにも注力

日本電気通信システム株式会社 
仙台事業所 グループマネージャー 千葉 修也さん

当事業所では数年前より「元気」をキーワードに健康経営を実践。社員一人一人が心身ともに元気で働けることが重要であり、その結果が業務にも良い影響を与えると考えています。現在は8名の健康ワーキンググループを中心に、歩数計アプリや健康グッズの活用、有志による地域スポーツイベントへの参加、救急救命講習会、芋煮会や懇親会などを開催しています。こうした取り組みにより、社内にも健康を気遣う雰囲気が定着。社員間のコミュニケーションも活発になり、風通しのよい職場になってきたことも大きな成果だと思います。現在はテレワークが増え、運動の機会や会話も減少していることから、心のケアの必要性を感じています。今後も社員全員が心身ともにベストな状態で無理なく仕事に臨み、自己実現を果たせる職場づくりを行っていきます。

コロナ禍以前は地域の各種スポーツイベントに参加

日本電気通信システム株式会社
仙台事業所

NECグループにおける通信ネットワークのソフトウェア開発を担う。高品質・高信頼のネットワーク技術で、新たな価値創造と社会貢献を目指す。
宮城県仙台市青葉区中央3-4-7 メットライフ仙台ビル5F
TEL.022-212-5827

健康の尊さを
社員自らが学ぶ機会を創出。
社内外で健康経営を盛り上げる

三井住友海上あいおい生命保険株式会社
東北中央営業部 東北第一生保支社 
支社長 古野 幹雄さん

当社は生命保険会社であり、企業の健康経営推進を支援する立場でもあることから、社内全体で「もっと健康に意識を向けなければ」という思いがあります。健康経営の実践は整備段階ですが、これまでも宮城県主催の「企業対抗アプリ大運動会」やウォーキングアプリのキャンペーンに参加するなど、個人の健康増進や社員間のコミュニケーションの活性化に役立ててきました。そのほか、当社発行の健康情報紙の活用や産業医のオンラインセミナーにも参加し、情報の共有も図っています。現在はテレワークの導入により交代での出勤ですが、ストレス軽減策としてオンラインで顔を見ながらの会話を大切にしています。今後も健康の尊さを学び、体験する機会を増やしながら持続的な事業の運営に生かし、健康経営を盛り上げていきたいと思います。

社内に完備された運動器具で、いつでもフィットネスが可能。リフレッシュや健康増進に役立てている

三井住友海上
あいおい生命保険株式会社

MS&ADインシュアランスグループの中核生命保険会社。多様化するニーズに対応する保険商品をそろえ、顧客や社会から信頼され選ばれる保険会社として健康な暮らしを支える。
宮城県仙台市青葉区花京院1-1-10 あいおいニッセイ同和損保仙台ビル11階
TEL.022-227-2220(営業アシストセンターに転送)

有給休暇の完全消化を義務化、
社食で健康的な食事をサポート

はちまん石川内科クリニック 
院長 石川 一郎さん

「患者さんを元気にするためには、自分たちから」との考えから、全員が健康で共に長く働ける職場づくりを模索していました。そんな折健康経営の存在を知り、改善策として取り組んだのが総菜やフルーツの宅配サービスです。これは、栄養バランスが偏りがちな食事を補うもので、スタッフには「お昼の楽しみが増えた」と好評です。また、スタッフが体の不調や家庭の都合などで遠慮がちに休暇を申請している状況を知り、誰もが気兼ねなく休めるよう「有給休暇の完全消化」を義務化しました。オン・オフそれぞれが充実することで、仕事への意欲や集中力にも変化が見られ、スタッフ間の連携にも好影響を感じています。そのほか、定期健康診断を毎年実施し、健康指導を行うほか、定期的に個人面談を行い、何でも気軽に話し合える職場環境づくりを行っています。

患者さんに寄り添い、笑顔のコミュニケーションを心掛けている

はちまん石川内科クリニック

1959年青葉区八幡に開業。内科全般の診療を行い、病気や健康の悩みを気軽に相談できるホームドクターとして地域医療に貢献。
宮城県仙台市青葉区八幡2-18-2
TEL.022-272-9767

社員自らが健康を意識、
いきいきとした職場を目指す

株式会社エコライフサポート 
代表取締役 奈良坂 進さん

事業の安定運営には人材の確保は不可欠です。大企業ならば1人欠けてもあまり影響はありませんが、中小企業にとっては1人離脱してしまうだけで負担が大きく、新しく人材を育成するにもコストも時間もかかります。健康経営を始めたきっかけは、そうしたリスクを軽減し、社員全員が健康を意識しながら、いきいきと働ける職場を目指したいと考えたことでした。最近では保健師による個別面談を半年間にわたり月例で実施しました。以前は健康診断で良くない結果が出ても具体的に取り組まない社員がほとんどでしたが、保健師からの専門的なアドバイスによって食事内容の見直しや適切な運動を心がけるなど、少しずつ健康増進に前向きな社員が増えてきました。3月には今年度の健康診断を予定しており、この半年間の指導が社員全員の診断結果に反映されたらうれしい限りです。

保健師からの専門的な指導により社員の意識も変化

株式会社エコライフサポート

調光LED照明などの環境配慮型商品をはじめ、循環型社会の実現に向けたサービスやシステムの提案を行う。希望のサイズや仕様でオーダーできる卓上パーテーションも好評。
宮城県仙台市宮城野区榴岡3-2-5 サンライズ仙台1F
TEL.022-792-9821

※取材は新型コロナウイルス感染防止対策を徹底し実施。取材終了後にマスクを外し顔写真の撮影を行いました。

2021年2月11日付 河北新報朝刊_特集紙面 Vol.8より転載

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このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
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