vol.27

健康経営勉強会 開催
働く女性支え、企業・地域の成長を

テーマ
女性の健康と健康経営

女性特有の健康課題を理解し、
誰もが生き生きと働ける職場へ

従業員の健康づくりに取り組むことで、企業の持続的な成長を目指す「健康経営®」の勉強会が、11月20日、河北新報社(仙台市青葉区)で開催されました。今回は、女性の健康をテーマに講演などを実施。11月13日には、登米市で「ミニ健康経営勉強会」を開催し、セミナーほか、参加企業の事例紹介なども行われました。

TOPIC. 01

女性の活躍を支える健康経営

東北大学名誉教授・
同医学系研究科客員教授
(一財)宮城県予防医学協会 理事長

辻󠄀 一郎 教授

女性の健康課題による経済損失は約3・4兆円

女性の健康課題や女性の活躍は、企業の経営に大きな影響を及ぼします。我が国の女性の活躍の状況を女性役員の比率(全上場企業)で見ると、2013年の1・8%から24年の12・5%まで徐々に上昇していますが、日本を除くG7諸国の平均38・8%(22年)とは、依然として大きな開きがあります。

就労における女性の健康課題は、思春期、性成熟期、更年期、老年期と生涯を通じて女性ホルモンが大きく変動し、ライフステージに応じた影響を受けやすく、月経や妊娠・出産も大きな要因です。また、前立腺肥大症などの男性特有の病気は、50代以降に患者が多くなるのに対し、子宮内膜症をはじめとする女性特有の病気は、20~50代の働く世代に多く、主ながんの年齢別罹患率を見ても同様の傾向があり、治療と仕事の両立の負担も女性の方が大きいと言えます。

女性特有の健康課題(月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療)による経済損失は、社会全体で年間約3・4兆円と推計され、女性の健康支援が重要になっています。

企業がこうした女性の健康課題に取り組むメリットは、女性の活躍状況が投資判断において重視されている点にあります。女性活躍推進に優れた上場企業を選定した「なでしこ銘柄」が注目されており、両立支援制度を整備している企業は財務パフォーマンスが中期的に向上することも示唆されています。


女性特有の病気の総患者数(2020年)

会社全体で改善に取り組む姿勢を

女性の健康施策推進の考え方として、経営陣からのメッセージ発信をはじめとする「理解促進」、女性登用に積極的な「企業組織体制」、サービス支援や費用補助などの「積極投資」、休暇制度などの「働き方の調整」の4本柱が挙げられます。大企業では、CEOが生理痛体験会に参加する先進的な事例や、中小企業では、社長自らがフレキシブルなワーキングスタイルを実践している事例もあります。

地方創生の観点からも、女性がやりがいを持てる仕事の創出や魅力的な職場づくりに取り組むことが、地方の人口の流出を防ぎ、活性化をもたらすでしょう。

最後にお伝えしたいのが、出産後に女性が安心して職場復帰できる環境づくりの重要性です。母乳育児を支援する「搾乳室」設置などの取り組みが必要です。欧米では設置が義務化されている国もあり、日本でもこうした支援が期待されます。

TOPIC. 02

女性の健康課題と働きやすい
職場づくり

宮城産業保健総合支援センター
産業保健専門職

木村 裕香子

「勤務先で困った」女性の約半数回答

我が国の女性就業者は、2010年から23年の間に、約395万人も増加しています。昨今は、さまざまな働き方が可能になり、結婚・出産後も引き続き就労し、長く働くことを望む女性も増えています。そうした中、経済産業省の調査では、女性従業員の約半数が、月経関連の症状や疾病、PMS(月経前症候群)、更年期障害などの女性特有の健康課題により、「勤務先で困った経験がある」と回答しています。

女性は、女性ホルモンによる影響で、ライフステージによるさまざまな健康課題があります。女性ホルモンとは、主に卵巣から分泌されるホルモンで、排卵や月経をコントロールし、女性の心身の状態に影響を及ぼしています。働く女性の健康課題において、内閣府の調査では、「生理による体調不良の仕事などへの影響」に関し、約8割の女性が「支障あり」と回答。更年期では、発汗、動悸、イライラや睡眠障害などの症状などが挙げられ、40代女性の約4割、50代女性の半数以上が更年期症状を抱えていることが明らかになりました。閉経前後から増える病気としては、エストロゲン減少の影響による骨粗しょう症や脂質異常があります。さらに、働く女性の転倒災害の増加や働く世代の女性のがん罹患率が男性を上回るという課題もあります。

ヘルスリテラシーを高め、心と体の健康管理を

女性の健康管理の対策としては、ヘルスリテラシーを高めることが一つの手段です。ヘルスリテラシーが高い女性は、「月経不調時などに仕事のパフォーマンスが下がる割合が低い」という調査もあります。ヘルスリテラシーを高める上では、厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」も参考になります。

働く女性にとって、良い睡眠も大切です。毎朝、同じ時間に太陽の光を浴びる、朝食をしっかり食べる、夜に強い光を浴びないなどがポイントです。栄養面からは、女性に不足しがちな栄養素として、特にタンパク質、炭水化物、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンD、カルシウム、鉄、亜鉛などを意識的に取りたいものです。

企業側の課題として、生理休暇制度の利用者が少ないという現状があります。例えば、「リフレッシュ休暇」に名称を変えるなど、利用しやすいような対策も必要です。女性が生き生きと働き続けられる職場づくりに取り組みましょう。


厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」

協賛社・協力団体ブース/交流会 健康づくりに役立つ情報を提供

会場を移して行われた第2部では、アクサ生命、住友生命、宮城産業保健総合支援センター、宮城県健康推進課、全国健康保険協会(協会けんぽ)宮城支部、ヘルスマネジメントコネクトがブースを出展し、健康づくりに役立つ情報や機器などを紹介。参加者はブースを回って説明を聞いたり、情報交換したりなど有意義な時間を過ごしました。

アクサ生命

指先に装置を当て、短時間で血管年齢を測定。
実年齢との比較で生活習慣への注意を喚起

住友生命

体組成測定を体験し、体を構成する筋肉や
脂肪、骨、水分などのバランスをチェック

宮城産業保健総合支援センター

健康で安心して働ける職場づくりを支援する
各種サービスの紹介や相談などを実施

宮城県健康推進課

「スマートみやぎ健民会議」10周年の記念パネルを展示。
県の健康施策の資料配布も

協会けんぽ宮城支部

トラックドライバーの健康を支援する
「ザ・ドラめしプロジェクト」の動画などを紹介

ヘルスマネジメントコネクト

瞳孔を測定することで心身の状態を可視化できる、
電子瞳孔計「Mecara(メカラ)」を体験

参加者交流会

カフェイン量を選べる「カフェインコントロール・コーヒー」を飲みながら交流する参加者

「健康経営勉強会」参加者の声「健康経営勉強会」参加者の声

  • 勉強会にはなるべく参加するようにしています。毎回のテーマが違うのでとても参考になります。
  • 範囲が広く参考になるお話でした。女性にとって働きやすい職場づくりを今後進める参考にしたいと思いました。
  • 女性の活躍や管理職登用の妨げは、出産後に関わることが多いとは思っていたが、病気にも大きく影響を受けることを数値として見ることができて参考になりました。
  • 健康経営に取り組む際のポイントを、分かりやすく説明していただきありがとうございました。
  • 生活習慣改善プランを提案(特に食事)する必要を感じた。搾乳室の設置について社に持ちり帰り検討したいと思います。
  • どんな世代でも性別も関係なく、相互理解しあった環境下で長く働くことが出来たら、社会経済的にも大きな成果や成長ができるようになるのだろうと、しみじみ思いました。

ミニ健康経営勉強会  in登米市

仙台市以外では初めてとなる勉強会を、登米村田製作所(登米市)を会場に開催しました。一般社団法人ヘルスマネジメントコネクトの岡本直也代表理事による講演「経営につながる健康」をはじめ、登米市役所からの健康課題についての報告、市内企業の健康経営への取り組み紹介などが行われました。終了後、参加者同士の交流会も開催され、熱心に情報交換する様子が見られました。

ヘルスマネジメントコネクトの岡本代表理事は、
食生活を変えることで精神面と健康面が
改善できることを説明。「ヘルスリテラシーを
高め、企業の成長を」と呼びかけました
登米村田製作所は、これまでの健康経営への
取り組み事例について、失敗例も交えて紹介
講演後に行われた参加者交流会。地域の
企業同士、すぐに打ち解け情報交換の機会にも

2025年12月23日付 河北新報朝刊_特集紙面 Vol.27より転載

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このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
河北新報掲載の特集紙面は以下よりダウンロードできます。

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