vol.01

考えていますか?
職場健康づくり

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が急速に進む日本において、「健康に働ける期間」をできるだけ長くすることが喫緊の課題となっています。その対策の一つとして国や県が推奨しているのが、働く人の健康づくりや生活習慣の改善を職場で支える「健康経営」の実践。こうした取り組みを後押しし、「健康みやぎ」実現の第一歩として、河北新報社は県内の企業を対象とした「健康意識調査」を実施しました。今回の紙面ではその結果をもとに、県民の健康づくりへの取り組みについて検証します。

「健康経営」って何だろう?

「健康経営」とは、従業員の健康を重要な健康資源ととらえ健康増進に積極的に取り組む経営方針。従業員の活力向上や生産性の向上など組織が活性化し、業績や株価の向上に寄与することが期待されています。経済産業省は健康経営に係る企業顕彰制度として平成26年度から「健康経営銘柄」を選定。平成28年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。社員が心身ともに健康で元気に働ける企業は社会的に高い評価が得られるということで、優秀な人材の維持・確保が課題の中小企業は近年取り組みを強化しています。

INTERVIEW

社員の健康増進から、
企業力アップへ

辻󠄀 一郎 教授

東北大学大学院 医学系研究科
公衆衛生学分野

心身の健康が
労働災害の防止に

健康経営に大きな注目が集まっている背景には、大きく分けて「労働者人口の高齢化」「国による働き方改革の推進」「職場でのメンタルストレス問題の深刻化」の3つがあると考えます。そこへ近年は、新たに就職する世代から優秀な人材を確保するため、働きやすい職場を作ることが加わり、企業にとって経営上の重要課題となっています。東京や大阪では大企業が熱心に健康経営に取り組んでいますが、その熱気がなかなか東北まで伝わってきていないのが現状。しかし、東北6県の中小企業で比較すると「健康経営優良法人」の認定増加率が宮城県は断然トップです。協会けんぽ宮城支部が提案する「職場健康づくり宣言」制度など、きめ細やかな取り組みが功を奏していると思います。

さまざまな制度利用で
健康経営を推進

健康経営を広げていくにはいろいろなルートがあります。その一つが宮城県の進める「スマートみやぎ健民会議」です。参加すると健康づくりに積極的に取り組む企業としてイメージアップにつながりますし、会員間での情報交換を通じて新たな事業の広がりなども期待できます。現在323社(2018年2月現在)が登録していますが、参加する企業をもっと増やしてうまく活用していってほしいところです。また、同じくもっと活用するべきと感じるのが「健康経営アドバイザー」。健康経営アドバイザーは企業を訪問して、健康経営についてのノウハウや関連する法令知識を元に実施へのきっかけづくりを行います。各企業に合わせた具体的なアドバイスをしてくれるので、それに沿って実践することでかなりの改善が期待できるはずです。しかし宮城県ではまだ1割程度の企業しか利用していない。これはもったいない話です。

「スモールステップ」で
できることから始めよう

では実際にどんなことをすれば健康経営になるのかというと、例えば社員食堂がある会社ならメニューに塩分やカロリーの表示をするとか、駐車場の場所を会社から遠くして歩く距離を増やすとか、本当に簡単なことからでいいのです。他にも社員が部署ごとに交代で清掃をするようにしたら、社内の風通しが良くなったという例もあります。

私は「スモールステップ」と言っていますが、少しの工夫からいろんな効果が出てきます。つまり健康経営とは「働きやすく働きがいがある職場を作り、そこで仕事をするうちに次第に心身が健康になれるような会社を作ること」。そういう会社にはいい人材が集まり、経営状態もよくなるなど、いい循環が広がっていくはずです。さまざまな制度を活用しながら、まずはできることから始めていただきたいですね。

2019年4月11日付
 河北新報朝刊_特集紙面 Vol.1より転載

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このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
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