河北書道展

総評・部門講評/第72回(2025年)

審査風景
審査の様子

総評

書道人口が減る中、多くの出品があってよかった。一般の部は、時間をかけて丁寧に書かれた作品が目立ち、構図や発想が大胆な若手の作品が印象深かった。会友の部は研さんを積み重ねた素晴らしい作品が集まった。

漢字は基本に忠実に、努力して書き込んだ作品がそろった。かなは熟練し、墨象は個々の持ち味が発揮されていた。近代詩文は筆の運びがしっかりし、少字は思い切った運筆が多かった。篆(てん)刻(こく)は文字の組み立てが独創的で、刻字は配色などがよく考えられていた。一行書も力作が多かった。

書の基本である古典とともに、河北書道展は前衛書も充実している。各部門の若手を中心に、書の魅力を周囲に伝えてほしい。

審査委員長 後藤大峰


第1部 漢字

充実した作品を選ぶのに苦心した。枚数を重ねたベテランと、手の若い作品とに大きく分かれた印象で、出品者の世代交代にも映る。憧れの河北書道展と言われるよう、全出品者にさらに練度を高めていってもらいたい。

審査員 加藤松軒

第2部かな

大字、中字、細字などバラエティーに富んだ力作が多かった。臨書に真(しん)摯(し)に取り組んだ作品が、かなの原点を改めて考えさせてくれ、印象にも残った。筆で字を書く機会が減った現代だからこそ、若い人にかな書道に挑戦してほしい。

審査員 岩澤芳華

第3部 墨象

躍動感あふれる多彩な作品が目立った。用具、用材の工夫や用筆法にも苦心の跡がうかがえ、時代の先端を歩む部門にふさわしい作品群だった。受賞作は練度の高い線で表現され、感情の変化や深い思いが伝わる内容になっていた。

審査員 太田蓮紅

第4部 近代詩文

全体の水準が向上する一方、構成がパターン化して斬新さが感じられる作品が少なかった。その中で、主張が響く作品が入賞した。濃墨、淡墨ともコントラストを工夫し、立体的な線質を追求してほしい。主張を表現できるよう鍛錬を望む。

審査員 千葉紅雪

第5部 少字

さまざまな線質による表情に富んだ書が多く、圧倒的な生命力を感じた。思いを感情豊かに表現しつつ、バランスの取れた自由さが快かった。静けさのある作品もあればなおよかった。前回より出品者が増え、今後が楽しみだ。

審査員 佐々木藤恵

第6部 篆刻・刻字

多様な書体を生かし、存在感のある作品が見られた。河北賞は伸びやかな表現と骨格の確かさが魅力であり、会友秀逸賞は鈍刀で衝撃力を加えた重厚な作品だった。回を重ねるごとに内容が充実しており、若手の出品に大いに期待する。

審査員 高野芳月

第7部 一行書

それぞれに悠々と自分の世界をつくり上げており、敬意を表したい。書も時代とともに変化するが、変化の波を自在に消化していく強さを多彩な作品に感じた。持ち味を生かしつつ、誤字に注意して仕上げてほしい。

審査員 鈴木智翠