総評・部門講評/第73回(2026年)
総評
伝統書は長年の修練の成果が表れた作品が多かった。現代書は自由な表現が快かった。
漢字は線質がしっかりしており、かなは繊細な細字が光った。墨象は濃墨の作品が目を引き、近代詩文は粗密のバランスが良かった。少字は筆遣いが大胆で、篆(てん)刻(こく)・刻字も型にはまらない作品が多かった。一行書は作品に独特の雰囲気があった。
全体的に若い人の活躍が目立っていたことが喜ばしく、今後に期待を抱かせる。焦らずに基礎を着実に固めながら、書を長く続けてほしい。
審査委員長 後藤大峰
第1部 漢字
出品数が減少したが、ベテランには安定感、若手には勢いがあり、重ねた年月が作品に表れていた。墨量の多い作品が目立つが、文字の密度のある明るい作品の美しさも光った。チャレンジする若手が少なからずいる一方、長く続ける難しさも痛感する。
審査員 加藤松軒
第2部かな
ベテランが多い中、10代が出品してくれたのが大変喜ばしい。基本の臨書に取り組む姿勢が心強かった。ベテランはこれまでの作風に加え、新たな表現を模索する様子が伝わった。その努力とバイタリティーが新しい出品者の勇気になることを期待する。
審査員 岩澤芳華
第3部 墨象
会友、一般ともに淡墨が少なく、濃墨が多かった。骨格がしっかりした重厚で迫力ある線は見応えがあった。一方、造形の組み立てが単調で、思いがストレートに伝わらない作品もあった。さらなる努力のもと、個性豊かな独自性のある作品を期待したい。
審査員 太田蓮紅
第4部 近代詩文
濃淡の墨色がさえ、若々しくエネルギッシュな作品が多かった。上位入賞者に若い世代が多く、構成などに新しい挑戦が見られた。線質の練度などレベルが高く、日頃の学書が実を結んだ。心に響く言葉との出合いを基盤に、心を揺さぶられる広い学びを望む。
審査員 千葉紅雪
第5部 少字
墨量や線の変化で流れを作り、一気呵成に躍動する大字書の醍(だい)醐(ご)味(み)がある。にじみの美しさとスピードの変化を巧みに表出している。古典に裏付けされた字句に、作者の自己主張がもう少しあってもよいか。書くことがライフワークであり続けるよう願う。
審査員 佐々木藤恵
第6部 篆刻・刻字
河北賞の刻字は切れ味のある彫りと構成に工夫が見られ、躍動感のある斬新な試みが生きた。篆(てん)刻(こく)は迷いのない大胆な奏刀が目を引いた。理屈でなく真(しん)摯(し)に取り組む作品に心を打つものがあった。今後も文字の勉強を怠らず、練度を高めていただきたい。
審査員 高野芳月
第7部 一行書
一行書は簡潔な形式のため、線質、字形、余白の美しさが際立つ。入賞作は古典に裏打ちされた豊かな表現力を備え、生命感が宿っていた。全体として多彩な表現が見られ、充実感があった。個性を大切に、より豊かな作品世界を生み出してほしい。
審査員 鈴木智翠
