俳句(4/10掲載)

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【石母田星人 選】

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末黒野や光り流るる追波川   石巻市新館/高橋豊

【評】末黒野(すぐろの)とは野焼き跡が黒く残っている場所。いつもの流れも、こうして末黒野の向こうに見ると、まぶしいほどの輝きを感じるのだ。回想の景かも。

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不穏の地知らずに今朝も鳥帰る   東松島市矢本/雫石昭一

【評】川や沼を旅立って行く鳥たち。毎朝その景を目にすると長旅の無事を祈ってあげる作者。この春はさらに気掛かりが増えた。人類だけの地球ではない。

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いぬふぐり月日うすれし軍馬の碑   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】大陸に送られて戦場に消えた軍馬たち。碑の周りには瑠璃色の犬ふぐり。「軍馬の命を犠牲にしたことを忘れないで」と、碑に誘うように咲いている。

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若人の視線の先や春の海   石巻市丸井戸/水上孝子

鏡見て締めるネクタイ初桜   東松島市あおい/大江和子

漁終えて薪風呂やさし春の宵   石巻市元倉/小山英智

春の雨夢のまにまに音きざみ   石巻市門脇/佐々木一夫

三月の記憶もろとも揺れ続く   石巻市流留/大槻洋子

桜烏賊ことこと籠り居の続く   石巻市相野谷/山崎正子

いまはもう赦すほかなし春の海   多賀城市八幡/佐藤久嘉

暖かや昔ばなしに児はねむり   石巻市小船越/芳賀正利

無垢材の四温かほれる太鼓橋   石巻市開北/星ゆき

返されて生気もどすや春の土   石巻市広渕/鹿野勝幸

フラ踊る青き天鵞絨うららかや   石巻市中里/川下光子

帰り行くうからを送る残る鴨   石巻市蛇田/石の森市朗

冬銀河無限に大脳働かぬ   石巻市駅前北通り/小野正雄

赤よりも白が寂しや落椿   石巻市吉野町/伊藤春夫

園庭の高きかけ声すみれ草   仙台市青葉区/狩野好子

春昼や波の眠りし船筏   石巻市桃生町/西條弘子

宮城野に代代住むや涅槃西風   石巻市蛇田/高橋牛歩

さんさんと春の陽海のまん中に   東松島市矢本/菅原れい子

法面の痩せのノビルに朝日射し   石巻市二子/北みなみ

スーパーに行けば見事な春の色   東松島市矢本/奥田和衛

青き踏む遠くの峰はまだ白し   石巻市水押/小山信吾

春寒や衿立て歩く散歩道   石巻市中里/須藤清雄