俳句(5/24掲載)

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【石母田 星人 選】


水鏡いくつも作り代田かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】田植え前の代田が、山々や空を映している。この時季特有のピリッとした空気感が伝わってくる。


白波の海を見下ろす羽抜鶏   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】夏に羽が抜け替わる羽抜鶏。威厳をなくしたその風貌に焦点を当て、哀れさ滑稽さを前面に出して詠まれる句が多い。だがこの句は一味違う。「白波の海を見下ろす」鶏の姿は哲学者の趣があって面白い。


ブロックをリュージュのごとくつばくらめ   石巻市流留/大槻洋子

【評】ツバメの高速の低空飛行を、氷上を滑走するそりに例えた。ブロックは歩道に描かれた線だろう。子育て中のツバメが全力で餌の虫を追っているのだ。


大地踏む赤子の脚に春の雨   石巻市小船越/芳賀正利

安らけき雨喜びの大地かな   石巻市丸井戸/水上孝子

清明や獣めく幹天へ天へ   石巻市開北/ゆき

北上の雪解け水の音静か   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

松の花咲くと知りたる桂島   多賀城市八幡/佐藤久嘉

復興園新緑の丘時流る   石巻市湊/斎田流雲

囀れば命ここぞと告ぐるやう   東松島市矢本/田舎里美

山肌に萌黄色なすキジの声   石巻市桃生町/西條和江

さざれ石囲む芽吹きの小庭かな   石巻市二子/小松道男

紙ひかうきの製図切り取るこどもの日   石巻市中里/川下光子

里つばめ村に小さき公民館   松島町磯崎/佐々木清司


林道にこもれび揺れて春深し   石巻市向陽町/大渡清

囀を乗せて不動の木の高し   石巻市小船越/堀込光子

百千鳥競いて集う杉木立   石巻市元倉/小山英智

風吹けば種は自由に夏木立   石巻市桃生町/佐藤俊幸

春宵のぽつかりと空く座の一つ   石巻市桃生町/西條弘子

茎若布佃煮となるホロホロと   石巻市渡波/阿部太子

葉桜の緑広がり空に溶け   石巻市流留/和泉すみ子

桜色消えて山並若葉萌ゆ   石巻市須江/遠藤由美子

葉桜やとんがりタワー妻護る   石巻市新館/高橋豊

沢蟹やよくぞ息つく水温む   石巻市駅前北通り/小野正雄

春風が我の背を押す土手の道   石巻市水押/阿部磨


川柳(5/24掲載)

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【水戸 一志 選】


磐越道まかり通るは無責任   石巻市蛇田/喜寿郎

【評】高校生の部活遠征バスが事故を起こし、一人亡くなった。輸送を依頼した学校側と、引き受けたバス会社の言い分が全く違う。許せないのは、双方が生徒(乗客)の身の安全を人任せにしていたこと。数日前も事故った運転手を含め、無責任のきわみ。


覇気のない臣が女帝に跪く   東松島市矢本/畑山真弓

デジタル化トライする度脳疲労   石巻市蛇田/佐藤久子

投稿し周りはホット家クール   東松島市小野/櫻井光樹

枯渇ダム底に往事の営為見る   石巻市広渕/きよし

気の早い冷やし中華がぞくぞくと   石巻市丸井戸/佐藤さくら

服を脱ぎさあ来い暑く長い夏   石巻市中島/門間みえ子

私には調理定年ないのかな   東松島市赤井/くどうさきこ


短歌(5/17掲載)

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【斉藤 梢 選】


息子(こ)の齢止まりて早も六年目朝の挨拶今なお涙   石巻市南中里/中山くに子

【評】母親にとって、子に先立たれることほど辛いことはないと思う。この一首の「止まりて」が長く心に留まる。他の表現でもいいのだが「逝く」「命が果てる」「死」「亡くなる」という言葉をあえて使わずに「齢止まりて」とした作者の胸中を察する。おそらく、生きていたならば今年は○○歳というように、子の齢を数えて毎日を暮らしているのだろう。「今なお涙」のこの7音は、想像もできないほどの悲しみを包んでいる結句。心情を表すためには多くの言葉が必要ではないことを、この作品から学んだ。


枯れたかと見える花木が芽吹きおり諦め不要を我に教える   石巻市鹿又/門間典彦

【評】植物の生きている姿は、命そのものの有り様を私たちに無言で示してくれる。枯れてしまったように見える花木に見つけた「芽吹き」。冷静に詠んでいるけれど、作者は感動したに違いない。外見だけで判断せずに、花木に心を寄せて接することを教えてくれる歌は、作者の謙虚さによって成る。この「芽吹き」が、作者のこの春を生きゆく力となるのだとも思う。


折目なき古本買へば鉛筆の吾に似た字の書き込みひとつ   石巻市流留/大槻洋子

【評】数ある本の中から、作者が選んで求めた一冊。折目はないけれど、確かに誰かが読んだという証の「書き込みひとつ」。同じ本を読むという心温まる出合い。紙をめくることの豊かさを再認識できる歌。


待合室思考時間はたっぷりと三十一(みそひと)文字(もじ)が駆け巡るのみ   石巻市蛇田/菅野勇

【評】診察を待つ間に頭の中を文字が駆け巡る。けれども結びは「のみ」。この「のみ」がリアル。言葉を探し選びつつ一首にしたいと試みる道程が大切。


今朝見れば土に割れ目の幾筋かいよよ芽出しかじゃがいもの畑   石巻市羽黒町/松村千枝子

盛夏待つ白砂青松白南風の蘇り乞う野蒜のあの夏   東松島市矢本/門馬善道

過去呼べば幼の浜と魚取り妻との今日も明日(あした)は過去に   石巻市駅前北通り/津田調作

九条の言霊が好き鳩が好き震災を経て平穏が好き   多賀城市八幡/佐藤久嘉

世の中との関わり捨てた青虫の悟りのねむり冬を生き抜く   石巻市桃生町/佐藤俊幸

さくらさくら複数形の花たちの翔ぶように散るひとひらの君   石巻市あゆみ野/日野信吾

受けとめし病なれども日々の中もどかしさに泣き悔しさつのる   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

眠る田を起こせば土の黒々と卯月へ皐月へ脈打ち始む   東松島市矢本/田舎里美

訃報欄同期の名あれば愕然と学びし時の思いに浸たる   石巻市不動町/新沼勝夫

妹の遠くにありて半世紀涙声聞く電話のむこう   石巻市流留/和泉すみ子

思い知る花の命のはかなさよ桜の花びら路傍に散って   東松島市矢本/畑中勝治

池の鯉水中からの花見なり庭の桜も花びら贈る   東松島市赤井/茄子川保弘

喧嘩して君と久しく会話なく耐え切れずしてごめんねと詫びる   石巻市門脇/中沢定子

福寿草役目を終えて夢心地黄金を畳み次の春まで   石巻市二子/小松道男


川柳(5/17掲載)

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【水戸 一志 選】


今ほしい自由平和の鐘の音   石巻市伊原津/福原伸行

【評】ロシアのウクライナ侵攻は4年たってまだ終息しない。イスラエル軍の空爆でパレスチナのガザ地区は壊滅した。そしてアメリカ対イラクの消耗戦。戦争慣れとは言えないが、戦争報道疲れは否定できない。今ほしい鐘の音。日本国内への警鐘にも。


石コロでつまずくなんてお年かな   東松島市大塚/北條京子

老いの坂バリアフリーは付いてない   石巻市二子/近藤孝悦

クレマチス手をとり合って伸びあがる   石巻市鹿又/門間恵右

おすそ分け春の山の香天ぷらに   東松島市大塚/石垣久子

ことごとく思い出せない推し女優   石巻市蛇田/喜寿郎

助っ人さん打てぬ楽天ただの人   石巻市大街道東/岩出幹夫

公約に有効期限どうでしょう   東松島市矢本/畑山講也


コラム: 歳月、人を待たず

 中学1年の頃、英語の先生が黒板に大きく書いた次の言葉を覚えています。

    Time and tide wait for no man.

 tide とは「月と太陽の引力によって引き起こされる海水の満ち引き」。つまり「潮」のこと。「 time and tide 」で「時」を表します。先生の書いた言葉は、「年月は人の都合に関係なく、刻々と過ぎてゆき、とどまることはない」といった意味ですが、先生はこの諺(ことわざ)を通じて、「時間を大切に」ということを生徒の僕たちに伝えたかったのでしょう。

 「時」は待ってくれない。この事実は年を取るたびに事実として迫ってきており、特に、ここ数年は、日々実感する次第です。

 時に関する英語の諺のもう一つは、

    First come first served.

 「最初に来た者が最初に食物を供せられる」といったことですが、「早い者勝ち」の意味でよく用いられる諺ですね。「人より先に行動を起こせば、他人を抑えて自分が有利になる」「先んずれば人を制し、遅れれば人に制せらる」ということです。

 これについては僕はちょっと困惑気味です。競争に明け暮れるこの世の中にあって「先んずれば」ということが、果たしてあるべきことなのかと、疑問を抱くからです。そう考える僕は、今の世には馴染まない存在なのかも...。「甘い」と言われるかもしれませんが。

 こうした英語の諺を通じて、いろいろと考える私です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)


俳句(5/10掲載)

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【石母田 星人 選】


病む妻に治りの兆し山笑ふ   石巻市新館/高橋豊

【評】「治りの兆し」を感じて少し安心した作者。窓の外を見ると、山々が芽吹きの色に染まっていた。回復への期待と、明るい春が一気にやって来た。


こひのぼり重さなき影およぎをり   東松島市あおい/大江和子

【評】子どもの健やかなる成長を願うこいのぼり。この句、青空を背景に泳ぐ姿ではなく、大地に映った影を描写したところに独自性が見える。中七の「重さなき」からは、何にも縛られない元気な姿が浮かぶ。


老ゆる街うごかぬ日々の飛燕かな   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】「老ゆる街うごかぬ日々の」は作者の心象。その静止した空間を切り裂いて飛ぶツバメが印象的。


三陸の海みて暮らす佛の坐   石巻市蛇田/石の森市朗

薄き陽や覇者のごときに仏の座   東松島市矢本/田舎里美

手のひらに命の重さ落椿   石巻市門脇/佐々木一夫

種牛の像に黒黒春日かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

春の星余韻を連れて歩きけり   石巻市二子/小松道男

啄木忌暫し里山仰ぎ見る   石巻市元倉/小山英智

風光る海越え届く旅葉書   松島町磯崎/佐々木清司

放棄畑万にも及ぶ草若葉   石巻市桃生町/佐藤俊幸

震災と日和の山や花明かり   石巻市湊/斎田流雲

風強き大河上空燕飛ぶ   石巻市小船越/芳賀正利

石段の孤島海猫とびはじむ   石巻市流留/大槻洋子

道端に小さな澱み花筏   石巻市流留/和泉すみ子

野辺送る山路や落花とめどなく   石巻市桃生町/西條弘子

海中にひじき漂ふ浦の昼   石巻市中里/川下光子

春愁や爪弾くボサノバ サウダージ   東松島市赤井/志田正次

春愁や細かき文字の契約書   石巻市小船越/堀込光子

不意と出て妻は庭先草むしり   石巻市広渕/鹿野勝幸

通院日木蓮の白際立ちて   東松島市矢本/菅原京子

春風を自転車に積み買物に   石巻市駅前北通り/津田調作

ルンルンとデイの身支度猫の恋   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

静けさにどっぷりつかる春の朝   塩釜市新浜町/佐々木夏子

太陽に誘われフワーッとしゃぼん玉   石巻市渡波町/小林照子


川柳(5/10掲載)

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【水戸 一志 選】


塞がれて原油の価値が世に知れる   石巻市水押/阿部磨

【評】ホルムズ海峡を塞ぐ。ならばと軍艦で囲む。どっちに転んでも、世界中に石油不足の被害が及ぶ。格調高い時事吟である。この争いに比べ、日本の童謡「とおりゃんせ」は優しい。歌詞の最後は「こわいながらも、とおりゃんせとおりゃんせ」だから。


雨もっと鎮火に力を山の神   石巻市垂水町/かとれあ

頼まれて「君が代」歌い矢面に   東松島市赤井/志田正次

りくりゅうは園遊会の華になる   石巻市広渕/きよし

米イラン回転木馬相乗りや   石巻市水押/小山信吾

一仕事診察前の順番取り   石巻市蛇田/大山美耶紀

店頭に格下げされた米並ぶ   東松島市赤井/佐々木スヅ子

使い捨て今の時代は使い切り   石巻市湊/小野寺徳寿


短歌(5/3掲載)

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【斉藤 梢 選】


七回忌過ぎての春に母偲び何処ぞに連れて花見に行かむ   東松島市矢本/川崎淑子

【評】大切な人を亡くして年月が経つほどに、おぼろげになる記憶と、いよいよ鮮明になる記憶がある。作者にとっては、遠き日に、母とした花見は懐かしくて恋しい。「七回忌」が過ぎてのこの春、心の中ではいつも一緒にいる母と花見に行こうかと思う。この悲しいけれど温かい、切ないけれど優しい心情は、たぶん人工知能(AI)には詠めないのではと。桜を描写した歌はたくさんあるが、花を見ることで自身の情感が心の奥から引き出される歌も多い。生きているからこそ出合える桜。毎年一首だけでも詠みたいと願う。


ガーベラの花びらちぎり占って花、花、花と心のせんたく   石巻市西山町/藤田笑子

【評】作者がしているのは<花占い>。どうしても迷いが心に付きまとう時、どちらかに決めかねる時、花にその選択を託す。少女の頃の恋占いはもう、杳(とお)くて淡い。「花、花、花と」の表現が映像を見ているようでリアルだ。もちろん、願いを込めてちぎってゆくのだから「せんたく」は「選択」だろうが「洗濯」としても読める。無心のひとときなのかもしれない。


母縫うたお守り我の身に付けて越えた荒海 月日幾年   石巻市水押/阿部磨

【評】母の手縫いのお守りがあったからこそ、荒海を幾度も越えることができたという真実が伝わる。過去を振り返りつつ、母の気持ちが今も作者の心に深く沁みわたるから覚えている「身に付けて」の感触。


四月初旬夏のきざしのあると思う今年も四季がおびやかさるるか   石巻市南中里/中山くに子

【評】四月の初旬なのに、もう「夏のきざし」を感じる作者。日本の四季が「おびやかさるるか」と詠まずにはいられない。「今年も」の「も」に同感する。


晴れの日に草のスキマにつくしんぼここで生きるぞ覚悟が見える   石巻市桃生町/佐藤俊幸

春風に心委ねてのんびりとゴールわからぬ楽しみもあり   東松島市矢本/畑山真弓

もう一度かがやいてみたいあおあおと水菜茹でつつ老いの戯言   石巻市あゆみ野/日野信吾

こぼれ種ここで生きると決めたのか今年もふえて山すみれ咲く   石巻市流留/大槻洋子

工場の煙は真上に立ち昇り霞む港に汽笛の木霊   東松島市赤井/茄子川保弘

似たくない超えたいけれどどうしても父の轍にまたもや嵌る   多賀城市八幡/佐藤久嘉

散歩道菜花、タンポポみな黄色更には黄蝶 春のマジック   石巻市鹿又/門間典彦

満開に風もなしやの庭桜小鳥と見入るもも色の朝   石巻市湊東/三條順子

強い風帽子飛ばされ大あわて春は何でも今年一番   東松島市矢本/畑中勝治

病む友のメールとぎれて一か月今届けたい桜便りを   石巻市流留/和泉すみ子

病院でやさしく手を添え支えらるやっぱり老婆としぶしぶ自覚   東松島市赤井/佐々木スヅ子

「新」の字が眩しく映える卯月かな老いも敗けじと心新たに   石巻市不動町/新沼勝夫

晴れの日に玄関開ければ鶯の声高らかに新期スタート   石巻市須江/遠藤由美子

ここかしこ小川のせせらぎ音ませど春ちょい待ちの蔵王連峰   石巻市わかば/千葉広弥


川柳(5/3掲載)

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【水戸 一志 選】


子は育ちゆうゆう泳ぐこいのぼり   石巻市新栄/堀内ひろ子

【評】五月の節句のシンボルといえば鯉のぼり。近頃はめっきり数を減らしており、通りがかりによその家で泳いでいる姿に出合うと、つい足が止まる。屋根より高いと見上げたわが家の子たちは、皆大きくなってしまった。懐かしい光景が脳裏に浮かぶ。


ヘルメットきつく締め付け踏むペダル   石巻市蛇田/鈴木醉蝶

訳ありとえくぼの告げる林檎買う   東松島市矢本/田舎里美

ネコかぶり家で怪獣黄色帽   石巻市須江/阿母礼

みな離れトランプひとりだけの影   東松島市赤井/片岡シュウジー

伸びすぎたタラの芽見つめ来春か   石巻市須江/田代文男

電話切るさびしくさせたのは桜   石巻市あゆみ野/日野信吾

熊恐い老いの連休持て余し   石巻市不動町/新沼勝夫


コラム: 夏は来ぬ

 今頃の季節になると、よく口ずさむのが「夏は来ぬ」です。

卯の花の、匂う垣根に
時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ
... 

 この童謡はこの季節の定番とも言えるもの。特に最後の「夏は来ぬ...」(英語では Summer has come. )は私たちにはなじみ深いものです。

 5月から6月に開花する「卯の花」は新緑の中でも、ひときわ目立ちます。旧暦の4月を指す「卯月」(新暦では5月に相当)は、この花の名が由来になっています。ちなみに豆腐の搾りかす「おから」を「ウノハナ」呼ぶのは、この白い小花の咲いている姿と似ているからです。

 「夏は来ぬ」は1896(明治29)年に佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲で発表されました。文部省唱歌です。

 「夏は来ぬ」を「夏はこぬ」と読んだ人がいるとか...。「なかなか夏は来ない」( Summer does not come. )と勘違いした人もいたようです。佐佐木信綱は高明な国文学者で、このような文語表現になったのです。

 垣根には白い「卯の花」(ウツギの花)が咲き誇っている。そこへ、夏を告げる鳥「ほととぎす」が、早くもやって来て鳴いている...

 「夏は来ぬ」というフレーズは、「夏がやって来た」という喜びと実感を何度も繰り返していると考えられます。

 1940年ごろ、NHKラジオの歌謡番組で繰り返し放送されましたが、第2次世界大戦後に国定音楽教科書に掲載されたのは1番と5番のみでした。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)