俳句(6/15掲載)

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【石母田 星人 選】


輪唱で大河をわたる鯉のぼり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】実際に川の中を泳がされたりワイヤロープで吊るされたりと、近頃の鯉のぼりは大忙し。群れ泳ぐさまを捉えた「輪唱で」の表現は独自性があり好感。


からころとさくらをめでてまた歩む   石巻市小船越/芳賀正利

【評】上五の「からころと」は省略の効いたうまい表現で、多くのことを教えてくれる。下駄を鳴らしてご近所を巡る朝の散歩なのだ。満開の桜と存分に語り合った後は、きっと別の花に会いに行くのだろう。


息を入れ鳴らすや余花のサクソホン   東松島市赤井/志田正次

【評】若葉の中に咲き残る桜と、多彩な音を出せるサクソホンの取り合わせが新鮮。心地のいい空間だ。


五月鯉太平洋を見て泳ぐ   石巻市蛇田/石の森市朗

春海の際すれすれに仙石線   石巻市渡波町/小林照子

毛越寺の遣り水くねる花あやめ   石巻市中里/佐藤いさを

うぶすなの郷包み込む新樹かな   石巻市新館/高橋豊

放課後の飛び出してゆく夏帽子   松島町磯崎/佐々木清司

朗報のひとつ届いて麦青む   東松島市矢本/菅原京子

卯の花や金平糖の匂ひあり   石巻市流留/和泉すみ子

満ち潮の音なきうねり梅雨近し   石巻市流留/大槻洋子

歳月を遠く深めて昭和の日   石巻市門脇/佐々木一夫

傾斜地の重心もどす花辛夷   石巻市開北/ゆき

夏草や抜かれる為に丈伸ばし   石巻市向陽町/成田恵津美

亡父のロイド眼鏡と初鰹   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

初ガツオ藁焼き薫る暖簾越し   石巻市湊/斎田流雲

惜しみなく笑い転げて暑気払い   石巻市桃生町/佐藤俊幸

子の巣立ちつばめ銀座の界隈に   東松島市矢本/田舎里美

親鳥の巣立ち促す声頻り   石巻市元倉/小山英智

人あまたつばめせはしく道の駅   石巻市広渕/鹿野勝幸

燕飛ぶ低空飛行明日は雨   石巻市桃生町/西條和江

移り行く世など知るかと梅雨に入る   石巻市渡波/阿部太子

花散りて追うて咲きたる花蘇芳   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

旅の途の女駅長風薫る   東松島市あおい/下山慶子

薫風をうけて遠出の道の駅   東松島市矢本/菅原信之


川柳(6/15掲載)

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【水戸 一志 選】


米不足今年の作に夢をかけ   石巻市鹿又/毛利みゑ

【評】国を挙げての米を巡る大騒ぎ。悪者もいる、ヒーローもいる-という構図になりかけている。実は川柳は、こうした大合唱の時の落ち着いたソロが光る。生産者も消費者も、今年の新米が救世主になってほしいと願う。ハッとするほどの説得力。


想定外麦飯がまた食卓に   石巻市新館/高橋豊

スッキリと羊も毛刈り衣替え   石巻市西山町/藤田笑子

まだ九十食い気洒落っ気孫負かす   石巻市日和が丘/千葉レイ

妻八十路化粧で少し若返る   東松島市矢本/奥田和衛

白鵬に協会の壁高かった   東松島市矢本/田舎里美

ここはどこ外人だらけ観光地   石巻市蛇田/大山美耶紀

せわしなくへのへのもへじ描くホタル   東松島市赤井/片岡シュウジー


コラム: トランプ大統領

 トランプ大統領がアメリカの最高学府ハーバード大学に対して行った、補助金削減や留学生の受け入れ阻止などの措置が物議を醸しているようです。「あの大学でも?」と思われた方も多いのではないでしょうか。

 ハーバード大学におけるユダヤ人の割合は一般的には約20~30%程度と考えられています。これは、大学が伝統的にユダヤ教を信仰する学生を多く受け入れており、その割合が高いことが背景にあります。

 米国東海岸のユダヤ人コミュニティーからの学生が多いこと、また、大学の歴史と伝統がユダヤ教と結びついていることも、ユダヤ人の割合が高い理由の一つです。

 トランプ氏は1946年6月14日にニューヨークで生まれました。父親の不動産業を継いで実業家となり、さまざまな分野に進出し、「不動産王」という評価を築きました。その後、人気テレビ番組の司会も務め、「ユーアーファイアード!(クビだ!)」という決めぜりふで、多くの国民に知られるようになりました。

 大統領だった時の4年間の実績を強調することで、"岩盤支持層"と呼ばれる従来からの熱狂的な支持者に加え、バイデン・ハリス政権に不満を持つ人たちの支持を取り込むことに成功しました。

 これからの世界はアメリカを中心に回っていくようですね。いや、アメリカと中国を軸に回っていく、そんな気がします。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)


短歌(6/8掲載)

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【斉藤 梢 選】


朝散歩ひきよせられて藤の下 肌まで染まるうす紫に   石巻市南中里/中山くに子

【評】藤の花はとても魅力的。その花房が風に揺れて、その風そのものが花の芳香のように感じられて趣がある。作者は、朝の散歩の途中「ひきよせられて」藤の花に近づく。この時の心情表現がとても自然で、花房の美しさを伝えている。日々の暮らしの中での花とのこのような一期一会は、かけがえのないものだろう。季節を知って咲く花に、私達は時として生きる力をいただく。下の句の「肌まで染まる」という感じ方が良い。「美しい」という言葉を使わずに、藤の花の姿を詠んでいる一首。「うす紫」に心も染まったのでは。


雨の音は言の葉よりも雄弁で耳をすませばああ初夏のうた   石巻市あゆみ野/日野信吾

【評】人間が発する言葉よりも、雨の音のほうが雄弁であると思う感性を持ち得ている作者。四季の移り変わりを実感できたら、それだけでも心は豊かだ。感覚や感情を言葉で表現する時に、本当にその言葉が的確なのだろうかと思うことがある。雨の音が「初夏のうた」に聞こえる瞬間、心の中の何かがまた新しくなるのかもしれない。「初夏のうた」の音階を想像する。


子らの飢餓絶望の瞳(め)のニュース後は大食い番組すぐテレビ消す   東松島市赤井/佐々木スヅ子

【評】「すぐテレビ消す」は憤りの行為。飢えに苦しむ子らの「絶望の瞳のニュース」に心が痛む。「すぐ」という言葉に、作者のいたたまれない心情が表れている。この現状について考えたいと思う。


気付かずに素手のままなる畑仕事心地よきなり黒き手を見る   石巻市羽黒町/松村千枝子

【評】長い冬が過ぎ、ようやく畑仕事ができる季節になった。そのよろこびが一首に満ちる。「黒き手を見る」という表現が優れている。土と交歓する春。


雪解けの水を迎える水芭蕉郭公の声白樺揺する   東松島市赤井/茄子川保弘

太陽が背中ぽかぽか暖めて庭の手入れもひときわ楽し   石巻市西山町/藤田笑子

苦しみを解かれし人とほんのりとぬくいポテサラにいやされる吾   石巻市流留/大槻洋子

米騒動未解決なり水田(みずた)には早苗植えらる悩ましき春   東松島市矢本/川崎淑子

偶然ではないはず今日の幸せは時間をかけて蒔いた種かも   東松島市矢本/畑中勝治

ヤドカリの抜け殻ひとつ野蒜浜公営住宅いくつか建ちて   多賀城市八幡/佐藤久嘉

決まりごと守らぬ輩多くいてゴミ当番の憂鬱な朝   東松島市赤井/志田正次

初夏の風に揺られ鈴蘭花をつけ小さな幸のプレゼンターに   石巻市不動町/新沼勝夫

介護ロボ強い味方と言われても高嶺の花のカタログばかり   石巻市桃生町/佐藤俊幸

どんな人何を考え生きてるのセルフアナリシスを鳶に依頼する   石巻市蛇田/櫻井節子

五月空晴れて嬉しや孫家族曽孫の笑顔置いて行きたり   石巻市駅前北通り/津田調作

国敗れ戦中、戦後を話す今たらちねの母すでに百歳   東松島市矢本/門馬善道

このごろの歌は暗くて悲しくて立ち直りたくふんばるわが日々   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

青空の航跡北へのびてゆく思い出残るライラックの地へ   東松島市矢本/門間淳子


川柳(6/8掲載)

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【水戸 一志 選】


忘れても思い出しても老いは老い   石巻市渡波町/小林照子

【評】老いを受け入れるのはそう簡単ではない。昨日と比べて何も変わらず、やることはやっている。時折、力の衰えや失念を自覚し「やっぱり年はごまかせない」と観念する。一句のリズムのよさに救われるが、老いは人ごとではないとつくづく感じる。


八十路だよ趣味を増やして何処へ行く   東松島市大曲/定川太郎

訃報欄自分の歳と見比べる   石巻市広渕/きよし

サギ電話かぜで声出ずゴメンナサイ   石巻市向陽町/大渡清

お粗末なだじゃれ一言命取り   石巻市水押/小山信吾

暖簾みてふらり寄りたしコップ酒   石巻市二子/小松道男

日に三度七種のくすり胃がさわぐ   石巻市蛇田/鈴木醉蝶

巴御前令和の武者で野馬追に   石巻市蛇田/菅野勇


俳句(6/1掲載)

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【石母田 星人 選】


初蝶や畝に歓喜を播くやうに   東松島市矢本/田舎里美

【評】今年初めての蝶が畝立ての済んだ畑を舞う。光源のようなその姿に「歓喜」の印象を見いだした。


春耕のうねの筋肉黒びかり   石巻市開北/ゆき

【評】「筋肉黒びかり」の比喩表現で、畝の様子が鮮明に浮かんでくる。この畝は耕運機が造ったものでなく、自ら鍬を握った成果なのだろう。手のひらにはまだ熱が残る。その感触が絶妙な比喩につながった。


遠くより子らの歓声春御輿   石巻市渡波/阿部太子

【評】子どもみこしが近づいて来る。道の先に姿が見えた途端、祭りばやしより早く子らの声が届いた。「遠くより」には景の奥行きとともに期待感も乗る。


ここからは鳥のまほろば夏岬   松島町磯崎/佐々木清司

落椿山中の春ゆるやかに   石巻市小船越/芳賀正利

春日傘小脇に持てば陽の重み   石巻市新館/高橋豊

花吹雪輓馬の息の荒さかな   石巻市蛇田/石の森市朗

瑕疵のなき汀をえぐる皐月波   石巻市中里/佐藤いさを

黒豹の居場所違へて春の闇   石巻市丸井戸/水上孝子

丹念に洗ふ苗箱雲雀鳴く   石巻市桃生町/西條弘子

にょっきりと水没林のシロヤナギ   東松島市赤井/志田正次

マーカーの登山略図や春の宵   石巻市流留/大槻洋子

鯉のぼりあるだけ吊しダムの前   石巻市広渕/鹿野勝幸

蕎麦茶屋の奥に席とる藤の花   石巻市中里/川下光子

スマッシュの音の響きや若葉風   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

つつじ咲く庭に真赤な彩を撒き   石巻市駅前北通り/津田調作

懐かしのエンジン聞ゆ田植え時   石巻市桃生町/佐藤俊幸

風吹きて花との会話いとまなし   東松島市矢本/菅原京子

みどりの日おにぎりくはへ海を見る   石巻市門脇/佐々木一夫

黄水仙色の褪せたる売地札   石巻市渡波町/小林照子

母の日や母の齢越え遺影見る   東松島市あおい/大江和子

老い二人黙し語らず新茶汲む   石巻市元倉/小山英智

御馳走にパンチを効かす山椒の芽   石巻市蛇田/櫻井節子

ひょっこりと姉の来そうな春の午後   東松島市あおい/下山慶子

公園の貴女に微笑む八重桜   女川町旭が丘/阿部重夫


川柳(6/1掲載)

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【水戸 一志 選】


大臣はウケをねらって墓穴掘る   石巻市山下町/ヒロシ

【評】「米不足」「農水大臣」「我が家にはもらったコメが売るほどある」。これを結んだら、ウケねらいの失言でしたで済むはずがない。即刻、ではなかったが退場処分になった。閣僚の舌禍事件は売るほどある。口は災いの元。古いことわざが常に新しい。


沿道に背中押されて初マラソン   石巻市山下町/ランラン

薫風を背負い投げする早苗たち   石巻市須江/市川つね子

新ジャガが鍋でゴロゴロ運動会   石巻市西山町/藤田笑子

田植え終え茶飲み話はコメ話   東松島市大塩/小野よし

イーグルス行ったり来たり5割ライン   石巻市大街道東/岩出幹夫

太陽の塔風雪耐えて重文に   石巻市不動町/新沼勝夫

四病院一つ過疎地にもってきて   石巻市あゆみ野/日野信吾


短歌(5/25掲載)

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【斉藤 梢 選】


手の平に種はころげてはしゃぎおり発芽よろしく声掛け下ろす   石巻市桃生町/佐藤俊幸

【評】種を蒔くことは、春のよろこびの一つだろう。作者は手の平に種をのせて、その小さな命に「発芽よろしく」と話しかける。農耕を詠む歌が少なくなっている現代において、このような純朴な<農の歌>は貴重だと思う。一粒の種の大切さを知る作者だからこそ、種もまた春を待っていたかのように「ころげてはしゃぎおり」と、表現できたのでは。蒔く、植えると詠まずに「下ろす」としたところも優れている。この種が発芽した時の様子を詠む一首にも出合いたい。


わたくしの息する空間奪われる五月わかばの伸びる勢い   石巻市あゆみ野/日野信吾

【評】五月の若葉の勢いを、どう表現したらいいのだろう。青葉になる前の若葉が、空という空間を埋めてゆく日々。木は季節をちゃんと知っていて、懸命に春を謳う。作者は「わたくしの息する空間奪われる」という自覚で「伸びる勢い」を表現する。若葉の群れに圧倒されて息苦しくなりながら、その生命力を真摯に感じ取っているのだろう。五月の樹木へのオマージュでもあり、作者ならではの心象詠でもある一首。


見はるかす空を映せる水張田(みはりだ)は春たけなわのパッチワークなす   東松島市矢本/田舎里美

【評】「見はるかす」田に水が張られていて、その水に空が映っていることに気付く作者。いくつもの田のそれぞれに春を感じ得たことで生まれた「パッチワークなす」。結句のこの捉え方が独自でたのしい。


小雨ふる木下(こした)に咲くは二輪草しずくの玉を見せ合うように   東松島市矢本/川崎淑子

【評】二輪の花が寄り添うように咲く「二輪草」。小雨に濡れてひっそりと咲いている姿に、心を寄せて詠む。「見せ合うように」という感受に、優しさがある。


雨風に堪えて咲き増す桜あり老いの輝き写す如くに   石巻市駅前北通り/津田調作

雨上がりばらの新芽に露宿り棘赤々と命みなぎる   石巻市門脇/佐々木一夫

もえ残る夕日みつめて病室で今は静かにあしたを待とう   石巻市流留/和泉すみ子

いたわられ逆転したる我となり子のあとにつきファミレスを出る   石巻市流留/大槻洋子

若者の力あふるる歌の声ラジオより跳び朝が始まる   石巻市開北/ゆき

イヌフグリ地面いっぱい咲きており桜ひらひら紫の海へ   東松島市矢本/畑中勝治

ひと時の午睡の夢に亡き友がクラブ携え我を誘えり   石巻市蛇田/菅野勇

不機嫌な夫の言葉にきずつくも楽しきことを模索する日々   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

風孕むこいのぼりこそうらやまし病後の我を風通りすぐ   東松島市矢本/門馬善道

そよ風にさくら花びらちらちらと散り敷くうえを人の踏みゆく   石巻市駅前北通り/庄司邦生

バブル時の高価なスーツ百円の値をつけられてしょんぼり売られる   東松島市赤井/佐々木スヅ子

束の間の宴の後に雨続き桜も散るや山霞むなり   東松島市赤井/茄子川保弘

そよそよとシロツメ草が風に揺れあった見つけた四つ葉のクローバー   石巻市西山町/藤田笑子

天気よし散歩コースを変えてみるつくしいっぱい田んぼの小道に   石巻市高木/鶴岡敏子


川柳(5/25掲載)

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【水戸 一志 選】


固定資産税ツバメのために払ってる   東松島市あおい/添田潤

【評】「軒下をお借りします」と、ツバメの子育てが始まった。毎年のことながら、我が家のどこが気に入っているのか、まあ、悪い気はしない。まるでツバメのために建てた家とくすぐる固定資産税。糞(ふん)の始末に協力しつつ、ヒナの巣立ちまで優しく見守る。


熊が泣く昔の山に戻りたい   石巻市向陽町/大渡清

年を経てこんなに伸びた妻の角   石巻市二子/小松道男

担ぎ手は軽トラなのね子どもゼロ   女川町浦宿浜/阿部光栄

運動会中止の空をにらむ孫   石巻市新栄/堀内ひろ子

サヤエンドウちゃっかり掴むトマトの手   東松島市赤井/片岡シュウジー

ミヤデンで通じる人がまだいたよ   仙台市太白区/金野正郎

それぞれの正義をいえば春寒し   石巻市流留/大槻洋子


俳句(5/18掲載)

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【石母田 星人 選】


花筏オール浮かしてボート行く   石巻市新館/高橋豊

【評】前方の水面には桜の花びらが浮かんでいる。発見したコックスの指示で、オールを水中から出して一休み。ボートは花びらの塊の横を静かに通り過ぎてゆく。映像が浮かんでくるような気持ちのいい光景。今夏の孫兵衛船のレースはきっとこのチームが勝つ。


山桜空を圧して咲きにけり   石巻市小船越/芳賀正利

【評】山桜の特徴は花と同時に生える赤い葉。野性味を帯びたこの色彩が「空を圧する」原動力となる。


初夏や畑の野菜に日のしづく   東松島市矢本/奥田和衛

【評】昨夜の雨か朝露か。畑の野菜に光の粒を見た作者。初夏の清々しい陽光を「しづく」と感受した。


静けさに湧く雲のあり空海忌   石巻市中里/佐藤いさを

古希過ぎて八十八夜の野を駆ける   石巻市湊/斎田流雲

飽きもせず飽きさせもせず植木市   石巻市桃生町/佐藤俊幸

囀に絡まるごときしじまかな   石巻市駅前北通り/小野正雄

五月来る一年生に面構へ   石巻市桃生町/西條弘子

入学か定期船から手を振る子   多賀城市八幡/佐藤久嘉

足止めの渡り廊下やつばめくる   石巻市流留/大槻洋子

人あまたつばめせはしく道の駅   石巻市広渕/鹿野勝幸

海色に染まりて夢中潮干狩   石巻市門脇/佐々木一夫

健気なる寒芍薬のふかき白   石巻市丸井戸/水上孝子

生きること少しは楽し木の芽和え   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

余韻まだそこはかとなく桜かな   石巻市向陽町/成田恵津美

わが街の自慢のさくら散るも美し   石巻市蛇田/石の森市朗

葉桜の祭りのあとのざわめきよ   石巻市流留/和泉すみ子

再入院の卒寿さげくるさくらもち   石巻市開北/ゆき

雲眺め風に吹かれて春過ぐる   石巻市渡波/阿部太子

桜咲き新聞部てふ青春よ   石巻市渡波町/小林照子

弟を荼毘に付す日や花の雲   石巻市小船越/堀込光子

山鳩や声くぐもりて春の朝   女川町旭が丘/阿部重夫

春耕や肥料一台購入し   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

春の海潮の流れに夕日浴び   石巻市桃生町/西條和江

温暖化うつきの夏日めづらしや   石巻市三ツ股/上品夢好