投稿より 「美しい暦」

 小学校4年生の時です。石巻市内の同じ学校に義理の叔父が勤務していました。女性担任と犬猿の仲で、その矛先が私に向きました。1年間いじめに遭いました。クラスの同級生と遊ぶことも言葉を交わすことも禁じられました。

 今なら、父母が黙っていませんが、いじめが問題視されていない時代でした。先生は絶対でした。休み時間に居場所がなく図書室で過ごしました。蔵書はほとんど読破しました。

 翌年の担任の男の先生はつづり方に熱心で日記を毎日提出しました。私は水を得た魚のように日記に前年の様子を書きました。先生はいじめの事実を知り「人を恨むな。苦しかったことは年月が癒やしてくれる。いつか思い出となる」と言われました。

 毎朝、黒板に小説の一節をローマ字で書いてあり、これを訳しておくのが朝自習でした。そうすると、その小説が気になりその小説を読むわけです。そんな風に先生には本を読む楽しさ、書く楽しさを教わりました。作文指導もして下さり、今も書く楽しみをもつことができるのは先生のおかげです。誕生日に石坂洋次郎の仙台の女学校を舞台にした小説「美しい暦」を頂きました。私は夢中になって彼の全作品を読みました。

 卒業式の日、先生の使われていた岩波国語辞典を記念に頂きました。式を終えて校庭に出ると「蛍の光」が聞こえました。涙が止めどもなく流れて止まりませんでした。小学校を卒業して五十数年。先生からいただいた「美しい暦」は、表題のように美しい人生を歩むように、という思いで下さったのではないかと勝手に解釈しています。懐かしい先生は鬼籍に入られました。思えば遠い昔の私の初恋だったかもしれません。

(高橋としみ 68歳 団体職員 石巻市真野)

<読者の投稿、随時掲載>

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短歌(3/24掲載)

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【斉藤 梢 選】


ひしゃげたる軒に老舗の文字焦げて寒暁の空ただに広ごる   石巻市開北/ゆき

【評】おそらく能登半島地震の被災地を報道映像で見て詠んだのだろう。東日本大震災で被災した時のことが思い出されて、それゆえに「ひしゃげたる軒」と書く作者の心は痛む。13年前の3月11日の夜には星が美しかった。1月1日の地震による火災で老舗の文字が焦げて、すっかり変わってしまった景。それでも夜は明けて新しい朝が来る。関東大震災で被災した与謝野晶子は「空にのみ規律のこりて日の沈み廃墟の上に月上りきぬ」と詠んだ。作者のいたたまれない心情が「ただに」に込められている。


この路地の一番乗りは新聞だ雪を蹴散らし世界が届く   東松島市矢本/畑中勝治

【評】降り積もった雪の道にタイヤの跡をつけて、雪を蹴散らして新聞配達のバイクが来る。「一番乗り」という表現が生き生きとしている。毎日規則正しく新聞が届けられることに感謝をして新聞をひらく作者は、記事を読みながら世界を知り世界と繋(つな)がる。新聞が届いて、それを手にして、作者の一日が始まるのだろう。「世界が届く」に、作者の生き方をも感じる。


手を合わせ一針毎に願い込め風化させまじ還り雛かな   東松島市矢本/高平但

【評】東日本大震災の行方不明者を忘れないという思いで作られている「還り雛」。13年経(た)った今も行方不明者の捜索は続けられている。作者もまた、願いつつ「還り雛」に心を寄せてこの歌を詠んだ。


風花のしまきて沖を遠くして見えては消えるすなどりの舟   石巻市中里/佐藤いさを

【評】描写がゆきとどいている一首。「沖を遠くして」の捉え方が優れている。墨絵の世界を思わせる冬の海の光景。作者には舟を長く見ている時間がある。


ロシアにもウクライナにもガザにまで我が子うばわれ悲しむ母が   石巻市あゆみ野/日野信吾

あの日から十三年が「もう」か「まだ」人それぞれの傷の重さが   石巻市向陽町/成田恵津美

ヒヤシンス球根増えて友増えて何色咲くやら冬の陽だまり   石巻市西山町/藤田笑子

セーターにもならぬ残りの毛糸編む何にしようか十センチ角   石巻市羽黒町/松村千枝子

冬ごもり解けて芽出しの水仙よ吾も待ちいる春の温もり   石巻市駅前北通り/津田調作

我よりもずっと高所の柱傷孫と言う名の宝の成長   石巻市蛇田/菅野勇

どか雪も昨夜の雨になだめられ土手の緑も背のび待つ日々   石巻市二子/北條孝子

断捨離の気持ちわずかに立ち止まる物に染みこむ心捨てがたし   石巻市桃生町/佐藤俊幸

目の前を案内するがにチチと行く調べてみればハクセキレイと   石巻市南中里/中山くに子

廃屋の跡地に立ちて我は今日過日の風に思いめぐらす   石巻市湊東/三條順子

字も声も小さくなりいる日々の中病の進行ひしひしと感ず   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

玉ねぎの皮をむきつつ涙すに何で泣くのと曽孫問いかける   石巻市飯野/川崎千代子

面会の姉は車椅子でやってくる「会いたかった」と元気な声で   石巻市丸井戸/高橋栄子

目に留まる芽ぶく水仙庭先に時節の到来告げるが如く   石巻市わかば/千葉広弥

川柳(3/24掲載)

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【水戸一志 選】


非正規と非婚少子化手をつなぎ   石巻市あゆみ野/日野信吾

【評】非正規雇用の悲鳴が日本中を覆っている。低賃金と待遇差別、長時間労働が当たり前になった結果、若者が自分たちの将来に幸せなシーンを想像できないという。結婚できない、そもそも望まない。人口逆ピラミッドの将来に警鐘を鳴らす一句。


東京も雪が降ったと子のメール   石巻市新栄/堀内ひろ子

ささやかな会話がつくる良き老後   石巻市流留/和泉すみ子

初飛行ブルー機まずはハート画き   東松島市矢本/奥田和衛

裏金に心ばかりのペナルティー   東松島市赤井/片岡シュウジー

法律をつくる人たち守らない   石巻市須江/田代文男

種買ってあと任せたと妻は消え   石巻市桃生町/佐藤俊幸

USAののしり合いの民主主義   石巻市向陽町/佐藤功

2023年度石巻かほく「川柳」 高橋豊さん、初の最優秀賞

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 2023年度の「石巻かほく」川柳の最優秀賞が石巻市新館の高橋豊さん(70)、優秀賞は東松島市赤井の片岡シュウジーさん(81)、石巻市あゆみ野の日野信吾さん(76)に決まった。高橋さんは初の最優秀賞。選者の水戸一志さんが選考した。

<選者・水戸氏から>

 年間成績は入選句の得点(佳作1点、◎2点)の累計に従った。

 最優秀賞の高橋豊さんは当欄投句3年目。にわかに頭角を現した印象だが、入選を重ねることによって面白さを知ったのか、ほとんど毎週、途切れずに作品が届いた。魅力は句に個性がある点。岸田総理の答弁の軽さを突いた「◎経済経済経済いと軽し」は誰も真似できない表現。「蕨採り下から上へ目を凝らす」からは、姿が見えるような面白さが伝わる。

 優秀賞の片岡シュウジーさんは最優秀、優秀、優秀と3年連続の入賞。「科学値で拭いても残る風評値」など、鋭い切り込みを得意とする。強引なアレンジの没句が多いのもこの人らしい。

 同じく優秀賞の日野信吾さん。「◎いい人になろうなろうと落し蓋」は、年間を通じて最も印象に残る一句だった。

 阿部磨さん、岩出幹夫さん、後藤新喜さん、菅原れい子さん、藤田笑子さんたちの頑張りも評価したい。

◇受賞者の声/最優秀賞・高橋豊さん
20240324-002.jpg 受賞はとてもうれしく思います。病が落ち着き、元気になったと紙面でお知らせできるのもうれしい。
 川柳は作陶仲間の投句を見て、3年前に始めました。以来、独学です。週に5句は詠んでいます。俳句もたしなんでいます。
 ネタ探しは主に新聞ですが、簡単ではありません。昔から本好きで小説、旅行記、法律関係などを読んできました。好奇心は旺盛な方だと思います。
 若い時、既に学生運動は下火になっていましたが、政治には敏感な世代でした。学生時代は、金権政治などに憤慨しました。東京の新聞社でアルバイトを経験し、見聞を広めました。
 石巻市水沼の小さな農家の出身です。元々、権力への反抗心、反骨心が強くあります。川柳は権力を嗤(わら)うのが神髄ですよね。一庶民として、少しでも「お上」を一刺ししたいと思っています。

コラム:音楽から学ぶ

 青春時代、何度も観たミュージカル映画があります。「サウンド・オブ・ミュージック」です。「音楽の調べ」とでも訳しましょうか。1965年に公開されたロバート・ワイズ監督、ジュリー・アンドリュース主演の20世紀フォックス映画。

 数多くの歌のうち特に魅了されるのはオープニングのシーンで主人公 Maria が歌う曲です。キーワードは hill 。「丘は音楽で満ちている...」

 そのあと修道院長 Patricia Neway が厳かに歌います。「全ての山に登りなさい」。 mountain がキーワードに。

 歌の素晴らしさは、ちょっと置いておいて、 hill と mountain について考察してみましょう。

 丘は hill 、山は mountain 、そう記憶してきましたが、両者の違いについて曖昧なままでした。hill を調べてみると... mountain より低く、英国では通例約600メートル以下の山をいう。英語が生まれた英国は言語の面でも貴重です。

 日和山 ... Hiyori Mountain ? Hiyoriyama Hills が適訳かと思います。色々調べてみましたが英訳は見つかりません。思うのですが、日和山は独立した山ではなく、筆者が住んでいる南鰐山(みなみわにやま)にも連なる「丘陵地帯」の一角をなすものです。考えてみれば鰐山という地名は不思議です。鰐が住んでいたのでしょうか?

 ジュリー・アンドリュースの伸びやかな歌声が聞こえてきます。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

 私はマグロやカツオを追って世界中を巡る遠洋漁船員でした。若いときに妻と一緒にいられる時間は限られました。一人娘の育て方を相談する相手がいなくて寂しい思いをさせました。

 妻きい子とは、共に20歳の時、仙台市の広瀬川花火見物で知り合いました。昭和28年8月。友だちとはぐれた妻を六郷の自宅まで外灯のない暗い道を徒歩で2時間かけて送りました。翌日、西公園で初デート、映画鑑賞、食事と楽しい時間が瞬く間に過ぎました。

 この日、結婚の話をしました。私は翌日、石巻港を出港するサンマ漁船に乗ることになっていました。「4年待ってください」。指切りで別れました。

 4年後、帰国し、きい子に会いに行きました。「必ず来ると信じて待っていました」と言ってくれました。たくさんの縁談を断ったそうです。約束した日からちょうど4年目の昭和32年8月20日、結婚しました。

 新婚生活を7日間だけ味わった後、静岡県の焼津港からマグロ船に乗り込みました。29歳まで南太平洋やインド洋などで漁を続けました。仕事が忙しく、焼津に帰港後、上野から夜行列車で帰り、朝着いたその日の夕方に焼津に向かったこともあります。

 40歳の時です。風疹にかかって自宅療養し、回復して仕事に出ようとしたら、妻に「また行くなら離婚する」と迫られました。「この19年で家にいたのは2年2カ月だけ。私の寂しさを分かってくれる?」。私は船乗りを辞めることを決めました。以降は仙台市の食品製造工場で働きました。

 妻は昨年1月、病気で亡くなりました。互いに若いときの写真を大切に持っていました。写真に「ありがとう」と言うと、泣き顔を思い出します。

(佐々木光男 90歳 仙台市若林区下飯田)

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2023年度石巻かほく「短歌」 日野信吾さん、初の最優秀賞

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 2023年度の「石巻かほく」短歌の最優秀賞が石巻市あゆみ野の日野信吾さん(76)、優秀賞は東松島市矢本の高平但さん(70)、石巻市流留の大槻洋子さん(76)に決まった。日野さんは初の最優秀賞。選者の斉藤梢さんが選考した。

<選者・斉藤氏から>

 最優秀賞は、日野信吾さんの10月22日掲載の作品<あかあかと秋の夕日のしずむころ土手ゆく人の影うつくしき>。しみじみと味わいたい一首。作者が感じた美しさを、読者も共有しようとして想像することは、歌を読むよろこびの一つだろう。短歌という定型があるからこそ、表現できた「うつくしき」。日常の暮らしの中には、すくい上げて詠むべきことがまだまだ多くあることに、気づかせてくれる作品。韻律もよく、魅力的な抒情歌。

 優秀賞は、高平但さんの2月26日の<夢の中だけでもいいから逢いたくて「震災前行き」列車を待ちぬ>。3月11日が近づくと、上句におさめられている願いはさらに切実なものとなる。震災前の<あの時>に戻りたくて待つ列車。言葉にし難い悲しみが、まっすぐに伝わる。

 同じく優秀賞は、大槻洋子さんの<深掘りは自分をこわしそうだから明日は歩こう明るい外を>。詠むことは、心を調えることにもなる。自分を見つめ過ぎる手前で、作者の思いは「外」へと向く。「明日」とは、未来のこと。心の葛藤を的確に表現して、自身をも励ます一首。

◇受賞者の声/最優秀賞・日野信吾さん
20240317-001.jpg 短歌の投稿を始めて3年。受賞は予想もしていませんでした。ただただびっくりしました。
 題材は新聞からヒントを得ます。地域や景色、親兄弟のことなどを詠みます。
 南郷町(現美里町)の生まれ。生家は貧しく、中学卒業後働きましたが、父母の愛は今も感じます。忘れ得ません。6人いたきょうだいは2人になりました。心象風景に残るのは南郷の一面の水田です。
 12月に第1席に選んでくれた<生き抜かんただ生き抜かん我が胸に赫々燃える朝日昇りぬ>。大きな心の支えを失った直後の歌だっただけに、斉藤梢先生に自分の心を分かってもらってすごくうれしかった。
 何回も推敲(すいこう)を重ねないと、なかなか思うように定型に収まりません。俳句も川柳も詠みますが、短歌は情景を見ながら、心を詠む文芸。自分と向き合わないと詠めないものです。

俳句(3/17掲載)

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【石母田星人 選】


眉を上げ若き語り部三月忌   石巻市小船越/堀込光子

【評】話のポイントを強調しようと眉を上げる若い語り部。大震災当時、この人は何歳だったのだろう。語り部をするということは、つらかった記憶と何度も向き合うということだ。真剣な生き方に頭が下がる。


草堂に詩人のベッド春の雪   松島町磯崎/佐々木清司

【評】ビル街にある静寂の空間、晩翠草堂。ここで土井晩翠が晩年を過ごした。中にはベッドが残されている。詩のように降る春の雪に魅了されている作者。


手鏡の裏も表も春駆ける   石巻市渡波町/小林照子

【評】<人も見ぬ春や鏡の裏の梅>が浮かぶがこの句は鏡裏の片隅の春でなく、らんまんの春を詠った。


束の間の忘れ霜置く祈念塔   石巻市中里/佐藤いさを

三月の八十四人忘れまじ   石巻市蛇田/石の森市朗

みちのくの復興俯瞰揚ひばり   東松島市あおい/大江和子

表現に悩みつつ踏む落葉かな   石巻市駅前北通り/小野正雄

中三の無言を掬ふ葛湯かな   石巻市開北/ゆき

春を舞ふ鮎川浜の七福神   石巻市桃生町/西條弘子

泡沫(うたかた)の儚さふふむ春の雪   石巻市丸井戸/水上孝子

一浜や一戸一戸が寒に耐え   多賀城市八幡/佐藤久嘉

淡き香の窓の風受く風信子   石巻市小船越/芳賀正利

春浅し夕日沁みゐる百度石   石巻市相野谷/山崎正子

梅咲くや古き土蔵は海鼠壁   石巻市吉野町/伊藤春夫

亀鳴くや言葉発して喉がかれ   石巻市桃生町/佐藤俊幸

豆撒きや自分の足に一掴み   石巻市新館/高橋豊

寒凪や大海原の休息日   石巻市門脇/佐々木一夫

賑やかに国境越えて鳥帰る   石巻市広渕/鹿野勝幸

春炬燵齢重ねてひと眠り   石巻市元倉/小山英智

動線の短くなりぬ雪催   石巻市渡波/阿部太子

ゆるやかな線路の先に春や待つ   石巻市流留/和泉すみ子

春寒や履き古したる母の靴   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

菜の花や貴方探して雲を追ふ   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

蕗味噌の余所の味知り世間知る   石巻市恵み野/森吉子

雪の白さざん花の赤窓越しに   石巻市駅前北通り/津田調作

川柳(3/17掲載)

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【水戸一志 選】


裏金の三カ月分返してね   石巻市新館/高橋豊

【評】江戸時代の川柳集「柳多留」にはパッと見ただけでは意味が分からない句がとても多い。しかし、時事の皮肉になれた江戸っ子にはすぐピンときた。今国会は開幕から裏金問題ばかり。戦争、災害、物価など、重要課題を放置した三カ月の空白を返せ。


サクラサクはやくこいこい孫メール   石巻市美園/ひらやん

大谷さん三刀流で幸せに   石巻市蛇田/菅野勇

お地蔵さん小さな幸せ見守って   東松島市大塩/小野よし

ヨチヨチの川柳教室懐かしい   石巻市向陽町/佐藤功

八十路坂医者と薬を杖に生き   東松島市小松/畠山信雄

鰤大根圧力鍋の間欠泉   石巻市水押/阿部磨

金庫から札束消えてさがさない   石巻市渡波/阿部芳明

投稿より 「主人の言葉」

 1月末の朝、仕事に行こうと玄関に立ったとき、電話が鳴りました。主人の入院先の病院からです。前日、訪れたばかりでした。

 「汗をかいたので下着の準備をして来てください」。慌てて仕事の休みを取り、病院に向かいました。病室に着くと、ベッドがカーテンで囲まれ、主人は酸素ボンベを付けて荒い息をしている状態でした。

 これは大変なことになってしまっている、と思いました。登校した2人の娘を迎えに行くように弟にお願いしました。中学1年生と小学5年生でした。

 3人で主人の顔をのぞきました。「お前たちを天国から見守っているからな」。最期の言葉でした。

 もしも、自分が病院に行く時間が遅れたら。もしも、娘たちの到着が遅れたら。主人の死に目に会えなかったかもしれません。

 46年前のことです。

 主人が亡くなってからは、義母を含めた4人の生活になりました。いろんな出来事を思い出します。一生懸命働きました。娘たちも成長し、就職することができました。義母は、長女が初めて子どもを産んだ年に亡くなりました。

 今は孫が5人。皆、社会に出て一生懸命働いています。私も好きな卓球を続けています。この年齢でも声を掛けていただき、大会に参加することもあります。卓球仲間から「頑張っている広田さんが目標」と言っていただけることが励みになります。ありがたいと思いながら自分を奮い立たせる毎日です。

 体調は課題も出てきています。主人が天国で見守ってくれているから、できるところまで行こうと心に誓っています。

(広田俊子 82歳 主婦 石巻市日和が丘)

【読者の投稿 随時掲載】

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