俳句(1/21掲載)

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【石母田星人 選】


寒き影うつす碑はアラスカを指す   石巻市流留/大槻洋子

【評】偉人・フランク安田。『アラスカ物語』には晩年の彼が郷愁にふける場面がある。故郷の北上川を見たかったろうにかなわなかった。上五「寒き影」はアラスカの夜空を彩るオーロラにつながっている。


お帰りとジャンボ門松葦の里   石巻市中里/川下光子

【評】石巻市北上町の新北上大橋近くに設置された門松だろう。どっしりと貫禄のあるその風貌からは、確かに「お帰り」の大きな声が聞こえてきそうだ。


すさまじき地震の映像冴ゆるなり   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

【評】元日に発生した能登半島地震。拡大してゆく被害の報道に、東日本大震災の記憶がよみがえる。


船に網にお神酒を注ぎ漁始   石巻市中里/佐藤いさを

初夢の蔵に積まれし米俵   東松島市矢本/雫石昭一

初日の出日和山から太平洋   石巻市吉野町/伊藤春夫

茶の花の垣根を越えて朝日かな   石巻市小船越/芳賀正利

使はざる古井に供ふ餅ふたつ   石巻市桃生町/西條弘子

春を待つ狛犬おほき口あけて   石巻市蛇田/石の森市朗

白鳥三羽星の匂ひの瀬を渉る   石巻市相野谷/山崎正子

法灯に千年の黙冬木立   松島町磯崎/佐々木清司

成人の日眉くっきりと君まぶし   石巻市流留/和泉すみ子

柚子の香に湯気色づきて昇りゆき   石巻市門脇/佐々木一夫

優しさの案配つつむ牡蠣料理   石巻市丸井戸/水上孝子

慟哭の異国遥に冬の空   石巻市駅前北通り/小野正雄

師走の海不明者さがす十二年   石巻市広渕/鹿野勝幸

金華鯖水揚げならず年暮れる   石巻市駅前北通り/津田調作

米二合炊き上がる朝年の暮   石巻市新館/高橋豊

パスワード失念の果て雪合戦   石巻市桃生町/佐藤俊幸

門柱に南天たわわ子を迎へ   石巻市水押/阿部磨

木守柿の朱の翼もて飛翔せり   石巻市開北/ゆき

冬帽子母の手編みの形見かな   石巻市元倉/小山英智

定川の流れにまかす枯すすき   東松島市矢本/奥田和衛

小春日や夫の旅立ち見送りて   東松島市大塩/木村はるみ

年の瀬や猫縁側で爪を研ぐ   石巻市中里/須藤清雄