俳句(2/4掲載)

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【石母田星人 選】


水鳥の一羽一羽の淑気かな   石巻市桃生町/西條弘子

【評】水鳥も冬の季語だが、この句の季語は淑気。「一羽一羽の」で鳥に動きをつけた。飛び立ってゆく姿だろう。年が改まって辺りに漂う空気は清々しい。きのうと変わらぬ飛翔なのだが何とも晴れやかだ。


寒蜆祖父の大きな漆の椀   石巻市恵み野/森吉子

【評】いい俳句は物が語ってくれる。この大きな漆椀は、たくましかった祖父の人柄をも教えてくれる。


冬の芽の産声となる鐘の音   石巻市相野谷/山崎正子

【評】冬の芽は、寒さに耐えられるよう硬い鱗片や密生した毛に覆われている。その中では確実に葉芽や花芽が膨らんでいる。鐘の音が春のほころびを促す。


万物の地球に生きて年新た   石巻市小船越/芳賀正利

青空の青飲み込んで寒の入り   石巻市駅前北通り/津田調作

半熟の朝日生みだす冬の海   石巻市門脇/佐々木一夫

大寒の波かぶりつく防波堤   多賀城市八幡/佐藤久嘉

冬の夜半死の彷徨の謎思ふ   石巻市駅前北通り/小野正雄

松過ぎて刻む時計の確かなり   石巻市丸井戸/水上孝子

寒明けや庭木に雀どつと来て   石巻市蛇田/石の森市朗

風花や煉瓦倉庫の異国めく   石巻市中里/川下光子

泊船のマスト奏でる虎落笛   石巻市中里/佐藤いさを

マスクなきフードコートを声渡る   松島町磯崎/佐々木清司

伸び伸びと土手一面の春の花   東松島市矢本/雫石昭一

着ぶくれて日和大橋駆け抜ける   石巻市吉野町/伊藤春夫

寒晴れの機影まっすぐ北へ北へ   石巻市流留/大槻洋子

地は震え被災の能登に寒の雨   石巻市小船越/堀込光子

ひしゃげたる老舗の文字文字なほ凍つる   石巻市開北/ゆき

被災地に重機の轍冬の雨   東松島市あおい/大江和子

被災地に思いを馳せて小正月   石巻市元倉/小山英智

広き背にお日様隠し山眠る   石巻市新館/高橋豊

受験子のそっと合掌仏壇に   石巻市広渕/鹿野勝幸

古里のおでん談議や訛とぶ   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

風呂吹をはふはふはふと百面相   石巻市向陽町/成田恵津美

初景色夕陽抱きて西の山   東松島市矢本/奥田和衛